shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

森山加代子・しんぐるこれくしょん

2010-03-21 | 昭和歌謡
 ベンチャーズ歌謡は昨日で一区切り付いたのだが、昭和ガールズ歌謡は止まらない(笑) キュートでビートが効いていてお色気もばっちり... CD のシリーズ名にもなっている “歌謡曲番外地” 路線の女性シンガー達が醸し出す濃厚な薫りがたまらない。今日取り上げる森山加代子もそんな愛聴シンガーの一人である。
 彼女は60年代初めにカヴァー・ポップスでヒットを連発して一世を風靡した人で、言うなればミコちゃんと同じ路線の “ヒット・キット・パレード” シンガーだった。やがてカヴァー・ポップスのブームが去ると低迷期に入ってしまうが、1970年に東芝からコロムビアへ移籍して心機一転、起死回生の一発として①「白い蝶のサンバ」をリリース、一度聴いたら忘れられないようなキャッチーな歌詞とメロディーを持ったこの曲は3週連続№1の大ヒット、見事なカムバックを果たしたのだ。特にのっけから舌っ足らずな早口口調で “あなたに抱かれて私は蝶になるぅ~♪” と一気にたたみかける展開はインパクト抜群で、当時小学生だった私も、歌詞の意味も分からずに(←当たり前やん!)この曲をよく口ずさんでいたものだ。そういえば以前 plinco さんにこの曲の替え歌 “あなたに抱かれて私はママになるぅ~♪” というのを聞かされてコーヒー吹いたのを思い出した。まぁそれだけ世間に深く浸透した国民的ヒット曲だったということだろう。そんな懐かしさも手伝って去年買ったのがこの「森山加代子・しんぐるこれくしょん」で、コロムビア時代の全音源に他レーベルの4曲をも含めた、復帰後のパーフェクト・コレクションなんである。
 Disc-1 では①「白い蝶のサンバ」がもちろん素晴らしいが、それにも増して私が気に入っているトラックが⑧「火遊びのサンバ」、コレである。作曲したのは奥村チヨちゃんの “恋シリーズ3部作” でその才能を遺憾なく発揮した鬼才、鈴木邦彦。この人は他にも黛ジュンの「恋のハレルヤ」やゴールデン・カップスの「長い髪の少女」など、聴く者の心の琴線を震わせまくるメロディーを書く人で、昭和歌謡のエッセンスを濃縮還元したような哀愁舞い散る旋律といい、ローゼンバーグ・トリオを彷彿とさせるようなジプシー・メロを奏でるギターといい、ツボを心得た絶妙なストリングス・アレンジといい、もうこれ以上の名演があったら教えを乞いたいぐらいのキラー・チューンだ。私はこの1曲だけでもこの CD を買う価値があると思っている。
 それ以外では彼女の甘ったるい声質が曲想と見事にマッチしたコロムビアでの2nd シングル②「ふりむいてみても」やそのB面に収められたムーディーな⑦「あなたに酔いしれる」、かよチャン節炸裂の④「花喰う蟲(←コレで“むし”と読むらしい...)のサンバ」や⑪「誘惑してね」、彼女なりに昭和歌謡を咀嚼した⑭「悲しみは女にだけ」なんかが気に入っている。又⑮「月影のナポリ」、⑯「悲しきインディアン」、⑰「じんじろげ」、⑱「ジョニー・エンジェル」、⑲「月影のキューバ」、⑳「メロンの気持ち」など、東芝時代のヒット曲をセルフ・カヴァーしたトラックも楽しい。特にコミカルで意味不明な歌詞が面白いナンセンス・ソングの傑作⑰は一聴の価値アリだ。
 Disc-2 はコロムビア時代後期のシングル3枚分、当時のヒット曲のカヴァー、そしてコロムビア離脱後のシングル2枚分の音源が収められている。この頃になると声質や歌唱法が「白い蝶のサンバ」の頃とは少し変わってきており、③「恋の魔法使い」なんか低い声で力強い歌声を聴かせる彼女に驚かされる。低音の魅力で迫るかよチャンもエエですなぁ(^.^) 欧陽菲菲のカヴァー⑱「雨のエアポート」でもややかすれ気味のハスキーな歌声が魅力的に響くし、失速寸前のスロー・テンポで歌う吉田拓郎のカヴァー⑧「旅の宿」はピアノのオブリガートやむせび泣くサックスなども相まってジャジーなムード横溢の超愛聴トラックだ。
 このようなレア音源が1枚のCDにまとめられて簡単に手に入るようになったのだから昭和歌謡ファンとしてはありがたい限りなのだが、欲を言えば60年代の東芝イヤーズに未CD化音源が一杯あるし、名盤「ヒット・キット・パレード」も廃盤になって久しい。レコード会社は下らない J-Pops をせっせと出す暇があったらこの手の名盤をしっかりと復刻し、廃盤にならないようにしてほしいものだ。

白い蝶のサンバ


火遊びのサンバ


じんじろげ     森山加代子 1995

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2 コメント

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カヨちゃん (いぼ・たらを)
2010-03-22 08:14:56
「火遊びのサンバ」、初めて聴かせていただきました。
良いですね~♪ 仰る通りの名演です!
決して唄い上げることなく、鼻にかかったウィスパーな歌唱に、あごのホクロがエッチな雰囲気を醸し出していますね。

カヨちゃんは、(私も小学生以来)聴く機会が少なかったのですが、ご紹介いただいて改めていくつか聴いてみました。
カヨちゃんの唄は、独特なコブシがありますね。
60’の『東芝』はアメリカン・カバー・ポップスの殿堂だったと思いますが、声質・コブシのせいか、
アメリカン・ポップスよりも「パイのパイのパイ」「じんじろげ」のような和モノ調か、「月影のナポリ」「メロンの気持ち」のようなラテン調の方が良かったです。

そう云う意味では、『コロムビア』に移籍してサンバ路線に行ったのは(勝手に)納得です。

素敵な曲をありがとうございました。
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おっしゃる通り! (shiotch7)
2010-03-22 16:12:09
いぼ・たらをさん、こんにちは♪
「火遊びのサンバ」、気に入っていただけて何よりです。
音の趣味だけでなくホクロ・フェチなところも似てるみたいですね(笑)

かよチャンの路線変更に関しては
私もいぼさんと全く同じ考えです。
歌手はただ歌が上手いだけでなく、
自分の個性を活かせるような楽曲を見つけることが
何よりも重要ということですね。
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