shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

人の気も知らないで / 沢 知美

2010-03-24 | 昭和歌謡
 今日はちょっとコアでディープな歌謡曲番外地へとご案内... 60年代終わりから70年代初めにかけてファッションモデル、女優、そして歌手として活躍した沢知美である。彼女を知ったのはごく最近で、例によって YouTube サーフィンしていて偶然見つけたのが “60s昭和お色気キューティ ポップ やさぐれ ビート歌謡” という物凄いタイトル(笑)が付けられた10曲入りメドレーのクリップだった。その歌声といい、醸し出す雰囲気といい、めちゃくちゃ私の好みだったので “コレは絶対欲しいっ!!!” と思ったのだが、不思議なことにどこにも歌手の名前が書かれていない(>_<) 仕方なく “歌詞を聴き取って題名を想像しアマゾンの曲名検索にかける” という荒技を敢行し、ラッキーにも突きとめたのがこの「人の気も知らないで」だった。
 届いた CD でまず目を引くのがその美麗ジャケットだ。グリーンをバックに同じグリーンのドレスからスラリと伸びた腕の線が実に美しい。いわゆるひとつの腕美人である。もちろん顔もスタイルも抜群で、まるで50年代アメリカの女性ヴォーカル・アルバム・ジャケットを想わせる素晴らしさだ(≧▽≦) LPはヤフオクでも滅多に出てこない激レア盤らしいが、コレは何としてもLPサイズで手に入れたいジャケット名盤だ。
 とまぁこう書いてしまうとただのお色気歌謡のように聞こえるかもしれないが、聴いてビックリ、その内容は聴き応え十分で、何よりも歌が上手いのだ。 “女優の余技” というレベルを遥かに超えた、バリバリのヴォーカル・アルバムなんである。もちろんお色気はアルバム全体に横溢しているが、決して過剰にならず、そのサジ加減が絶妙なのだ。これって一見簡単そうで中々難しいことだと思う。
 この CD はオリジナル・フォーマットの全12曲にボートラとしてシングル8曲を加えた超お買い得盤で、アルバム曲の方は一言で言えば “大人の歌謡曲路線” のムーディーなナンバーがメインになっており、モロ歌謡曲といった感じのバックの演奏と、彼女の上品なお色気を感じさせるヴォーカルの対比が面白い。何と言ってもアルバムの副題が「沢知美とあなたの夜」なのだから推して知るべしだ。そんな中、特に私が気に入ったトラックは②「つめ」、④「すてきなあなた」、⑩「ウナ・セラ・ディ東京」、⑫「あいつ」といったナンバーで、バタ臭さを微塵も感じさせない洗練された音作りが彼女のアンニュイなヴォーカルと絶妙に溶け合い、都会的なサウンドとして屹立している。特にティナ・ルイスを彷彿とさせるほのかな色気がたまらない②やアンドリュース・シスターズで有名なスタンダードをユル~くボッサ化した④なんかもう絶品だ。
 ボートラの方はバラエティーに富んだナンバーが並んでいるが、まずは何と言っても⑳「ブルー・モーニング・ブルース」である。今回このアルバムを知るきっかけとなったサビの “ブルー モーニング ブルース~♪” というラインが耳に残るキャッチーな旋律を持ったナンバーだ。次から次へとテンポよく場面が切り替わっていく映像を見ているかのような、一気呵成にたたみかけるメロディー展開がたまらない。
 突き離したような歌い方が曲想と見事なマッチングを見せる⑰「私はかもめ」や、流れるようなメロディー展開でTVドラマのテーマに使うとぴったりハマりそうな⑲「夏の女」なんか結構エエ感じの歌謡ポップスに仕上がっている。又、⑭「アンブレラのブルース」では西田佐知子、⑱「罪ある女」ではいしだあゆみそっくりの歌い方に大爆笑。よぅ特徴つかんでるなぁ...(^.^) イメージとしてはフェロモン歌謡でも、歌唱のベースがしっかりしているからこその芸当だろう。昭和歌謡ファンはコレを聴いてイスから転げ落ちて下さいな(^.^)
 ⑯「モーニング・ブルース」はタイトルだけではピンとこなかったが、このメロディーは知ってるぞ。ちあきさんが 3rd アルバム「愛はさりげなく ~ヒット・ポップスをうたう~」でカヴァーしていた曲ではないか!何たる偶然(゜o゜) 早速聴き比べてみたが、ちああきさんの歌唱は完璧といえる素晴らしさで、他のカヴァーと同じくご自身のオリジナル曲のように響く。しかし沢知美の歌声も絶妙なやさぐれ具合で、彼女にしか出せない味わいがたまらない。
 歌良し、曲良し、ジャケット良しと3拍子揃ったこのアルバム、知名度は低いかもしれないが、大人のムードの美人女性ヴォーカルを好むご貴兄にイチ押しの溺愛盤だ。

ブルー・モーニング・ブルース


素敵なあなた
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