shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ベンチャーズ・ヒットを歌う! / 小山ルミ

2010-03-20 | 昭和歌謡
 ベンチャーズつながりで70年代初めのガールズ歌謡を最近よく聴いているが、そんなお気に入りシンガーの一人が小山ルミである。残念ながらリアルタイムではまったく記憶になく、彼女の存在を知ったのは数年前にビートルズ・カヴァーを集めている時に遭遇した「ビートルズを歌う」だった。その時は、 “ただ歌ってみました” という感じでカヴァーの仕方が何となく中途半端で、何よりもビートルズの曲自体が英語のリズムで完璧に仕上げられているので日本語では座りが悪かったのだろうが、彼女に関してはそれっきりになっていた。その後ネットで “小山ルミ” という名前を何度か目にし、 “カルト歌謡の女王” と言われていることを知り、濃厚な昭和歌謡の中でも最後の秘境と言われる “カルト歌謡” に興味津津だった私は “もう1枚買ってみて、それでダメなら小山ルミは諦めよう” とアマゾンを検索、どうせなら知ってる曲の多いヤツがエエわいと思って選んだのがこの「ベンチャーズ・ヒットを歌う!」だった。
 届いた CD は実にしっかりした作りの紙ジャケで、アトランティックのオリジナル盤LPを想わせるソリッドな感触が嬉しい。製造販売はウルトラ・ヴァイヴという聞いたことのない会社だが、エエ仕事しとるなぁ...(^.^) で、肝心の内容だが、コレは買って大正解(^o^)丿 ビートルズの時とは違い、ベンチャーズはインスト・バンド。比較対象は渚ゆう子、欧陽菲菲、奥村チヨらが歌う日本語詞の歌である。これなら何とか同じ土俵で勝負できるし、山内賢 & 和泉雅子なら楽勝だ(笑) しかも「10番街の殺人」や「ウォーク・ドント・ラン」といった純粋なインスト曲も千家和也氏の日本語詞で歌っているのが興味を引く。
 まずは何と言ってもアルバム冒頭を飾る彼女の代名詞とも言うべき①「二つのギター」、コレである。ロシア民謡の専売特許とも言える哀愁舞い散るイントロから昭和歌謡のエッセンスを濃縮還元したようなテーマ部へと突入、ディープな旋律のアメアラレ攻撃が圧巻で、 “オ~ンナはいつもぉ~ オ~トコで決まる~♪” の高揚感が凄まじい!!! キュートな外見とは裏腹の芯のしっかりしたヴォーカルにタジタジだ。B面1曲目に置かれた⑦「さすらいのギター」も彼女の代表曲の一つで、こーやって聴いてみると歌は上手いし、ロック・スピリット溢れるベンチャーズのヴァージョン(オリジナルはフィンランドのザ・サウンズ)を見事なビート歌謡に仕上げている。尚、原題の Manchurian Beat とは「満州のビート」という意味で、20世紀初めにロシア人が作曲したメロディーが元になっているという。①と共に以前私がパルナスで指摘した “哀愁のロシア民謡最強伝説” (←最強って...カオルちゃんじゃあるまいし...)の一翼を担うナンバーだ。
 歯切れの良いギター・カッティングが印象的なイントロから始まる②「雨の御堂筋」は歌もアレンジも文句ナシ。欧陽菲菲に次ぐこの曲の名唱だろう。渚ゆう子のカヴァー③「京都慕情」、⑥「京都の恋」にはビックリ(゜o゜) まるで彼女が憑依したかのようにしっとりと歌い上げているのは見事という他ない。山内賢 & 和泉雅子の⑤「二人の銀座」、⑪「東京ナイト」では声色を微妙に変えてデュエットを再現、ただのカワイコチャン・シンガーとは激しく一線を画す表現力だ。彼女の盤が中古LP市場でウン万円で取引されているのはもちろん稀少性もあるが、それ以上に内容が優れているからなのだろう。⑪の歌詞 “モノレール、エアポート~♪” や “東京タワー、高速道路~♪” がいかにも60年代という感じで微笑ましい。⑫「北国の青い空」では何とチヨちゃんのヴィブラート唱法をしっかりとコピーし、曲を自分のものとしてしっかりと歌い上げている。実力がなければとても出来ない芸当だ。
 ベンチャーズのインスト・ナンバー⑧「10番街の殺人」(←0分45秒で炸裂する “あ~あぁ♪” には萌えてしまう...)と⑩「ウォーク・ドント・ラン」には歌詞を付けて歌っているが、これがまたメロディーとピッタリ合っていて、めちゃくちゃサマになっている。新たなベンチャーズ歌謡誕生の瞬間だ。一方、④「霧のめぐり逢い」や⑨「異国の人」はイマイチ彼女の歌唱スタイルに合っていないようで、印象が薄い。
 彼女のアルバムはCDで「ビートルズを歌う」、「ロックンロール・ミュージック」、そしてこの「ベンチャーズ・ヒットを歌う!」の3枚しか持っていないのだが、その中では断トツの素晴らしさを誇るこのアルバム、ベンチャーズ・ファン、そしてカルト歌謡ファンにとって必聴と言える1枚だ。

Rumi Koyama-- 小山ルミ -- 二つのギター Two Guitars


小山ルミ さすらいのギター


10番街の殺人
コメント (8)