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shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

涙の太陽 ~ザ・エミー・ジャクソン・アルバム~

2010-03-25 | 昭和歌謡
 これまで何度か書いてきたように私は「涙の太陽」コレクターである。スプートニクスに始まり、安西マリア、田中美奈子、山本リンダ、三東ルシア、青山ミチ、寺内タケシ、サンディー&ザ・サンセッツ、エド山口と東京ベンチャーズ、Mi-Ke、渚ようこ、愛内里菜、メロン記念日に至るまで、この曲が入っているCDは片っ端から買ってきたが、やはりオリジナルに勝るものはない。このCDは彼女唯一のLP「涙の太陽 ~ザ・エミー・ジャクソン・アルバム~」(←彼女のアナログ・オリジナルLPは現物はおろか、ヤフオクでもこれまで1度もお目にかかったことはないのだが、ホンマに存在するんかいな?)の12曲にシングル4枚分の音源を追加して復刻したもので、これ1枚でエミー・ジャクソンが60年代に残した全音源を聴けるという超お徳用盤である。
 ライナーによると、彼女はイギリス人を祖父に持つ日系2世で、本名はエミー・イートン(←ジャクソンという芸名は多分彼女のアイドルだったワンダ・ジャクソンから取ったものかもしれない...)。修道院付属学校在学中にその英語力を買われて(←日本語の字は全く読めなかったというし、⑲を聴いたら喋りもカタコトっぽい...)湯川れい子さんのDJ番組のアシスタントに抜擢され、その歌の上手さに目を付けた湯川さんがコロムビア洋楽部のディレクターに紹介し、デビューすることになったという。デビュー前には「涙の太陽」を作曲した中島安敏による猛レッスン(毎回発声練習前に腹筋50回(!)やらされたらしい...)でコッテリ絞られたというが、今にして思えば彼女のあのパンチのあるダイナミックなヴォーカルはこのレッスンの賜物だろう。
 全20曲聴いて思ったのは、楽曲のベースになっているのは「アメリカン・グラフィティ」路線の甘酸っぱいヒット・ポップスで、それらを1965年当時日本を席巻していたベンチャーズ・ブームの影響大なエレキ・サウンドで武装強化したようなサウンドになっているということ。その典型が和製ポップス第1号と言われる①「涙の太陽」だろう。テケテケ・ギターが唸りを上げ、スマッシュメンという架空のグループ(←フィリピン人らしい...)が怪しいコーラスで盛り上げる。エエなぁ、この何でもアリのおおらかさ(^.^) この曲は色々集めたが、やっぱりコレが一番好きだ。
 それ以外で気に入ったのは②「プリテンド」。ナット・キング・コールやブレンダ・リーの名唱で有名なナンバーだが、ここでは意表を突いたロカビリー仕立てが実に新鮮で、何度聴いてもウキウキした気分にしてくれる。⑮「涙のゴーゴー」も面白い曲で、サム・ザ・シャム&ザ・ファラオズの「ウリー・ブリー」を想わせる怪しげなイントロから寺内タケシみたいなギターが爆裂、オルガンと組んず解れつしながら怒涛のようなバニーズ・サウンド(?)へとなだれ込む様は圧巻だ。バニーズ・サウンドと言えば⑨「涙がいっぱい」なんかもうパロディーかいなと思うぐらいギター・フレーズや全体の音作りが寺内タケシしていて実に楽しい。テケテケ・エレキ・サウンドで武装したアメリカン・ポップスという趣きの⑥「涙のハート」もそうだが、この徹底ぶりを私は買いたい。3分間ポップスの要諦はその楽しさにあり、という王道を行くサウンド・プロダクションだ。
 テケテケ系以外では④「涙のチャペル」がエエ感じ。元々はサントラ盤「アメリカン・グラフィティ」に入っていたソニー・ティル&オリオールズがオリジナルだが、私はこの曲を聞くとエルヴィスのヴァージョンを思い出す。ややテンポを上げてエミー・ジャクソン・スタイルで歌ったのが大正解で、ノリノリの楽しいナンバーに仕上がっている。⑭「ママがサンタにキッスした」では大排気量のアメ車のような余裕のヴォーカルが楽しめるし、⑲「天使のいたずら」ではこのアルバム中で唯一の日本語詞が楽しめる。様々な楽曲のオイシイとこ取りみたいな⑰「恋のエンジェル・フィッシュ」はクセになる1曲。どこかで聴いたことがあるけどそれがどーしても思い出せない、みたいなフラグメンツが現れては消え、消えては現れる。実に巧妙な作りのナンバーだが、ブクブクブク...という泡音の効果音には笑ってしまう。
 とにかくあれこれ難しいことを考えずに楽しんじゃった方が勝ち、みたいなノリのこのエミー・ジャクソン盤を私はこよなく愛しているのだが、今では既に廃盤になっているようで、 “オンデマンド CD ” という名称で受注生産 CD-R として販売されているらしい。アマゾンではオリジCDに8,000円のプレミアが付いていた。60'sファン、昭和歌謡ファンにとっては何とも住みにくい世の中になったものだ(>_<)

涙のゴーゴー・・・エミー・ジャクソン


恋のエンジェル・フィッシュ・・・エミー・ジャクソン

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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正調・洋楽 (いぼ・たらを)
2010-03-27 06:49:56
「恋のエンジェル・フィッシュ」・・初めて聴きましたが、まか不思議な雰囲気の曲ですね。
天然ものでは無く、日本の片田舎の喫茶店にあるちょっと澱んだ水槽のエンジェル・フィッシュのようです。

先の「洋楽の皮を被った邦楽」は名言ですが・・笑
クリップを見て気付いたのですが、シングルは「(米)CBSコロムビア」のレーベルで出しているのですね。
これはもうトコトン、洋楽として世に送ったのでは無いでしょうか。

※ついでに他を調べますと・・
 ブルー・コメッツのAll英語デビュー作「BLUE EYES」(青い瞳)もCBS。
 黛ジュンは、東芝では無くcapitolでした。

これらは和製でも、“洋楽”のカテゴリだったんですね~~♪
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和製洋楽 (shiotch7)
2010-03-27 17:34:36
>日本の片田舎の喫茶店にあるちょっと澱んだ水槽のエンジェル・フィッシュ

めっちゃ上手いこと言わはりますねぇ~
曲のイメージにピッタリ合いますわ。

>洋楽として世に送ったのでは無いでしょうか
それまでのカヴァー・ポップスの常識を打破し、
既製の歌謡曲との差別化を図るために
洋楽の意匠を借りて違いを強調しようとしたらしいです。
色々考えてたんですね~
でも “和製の” 洋楽って言葉、何か矛盾してますね(笑)
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