shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

潮風のメロディ / 南沙織

2010-03-08 | 昭和歌謡
 私がリアルタイムで体験した歌謡アイドルは76年から78年ぐらいまでで、キャンディーズで言えば「春一番」~「微笑がえし」、山口百恵なら「イミテイション・ゴールド」~「絶体絶命」あたりまでが一番思い出深いのだが、それ以前の世代、つまりアイドル黎明期の歌手になると自分が小学生だったこともあって余程強いインパクトがないと印象に残っていない。私は山本リンダのイケイケ系ソングが一番好きだったが、それ以外では “左利き” で一世を風靡した麻丘めぐみ、裏声を使ったモノマネが楽しかった天地真理やアグネス・チャン、曲が覚えやすかった小柳ルミ子ぐらいしか記憶にない。今日取り上げる南沙織は1971年のデビューということで、天地真理、小柳ルミ子と並んで3人娘と呼ばれていたらしいが、残念ながらアイドルとしてもヒット曲としてもほとんど記憶にないというのが正直なところだった。
 そんなシンシアを本格的に知るきっかけになったのが5年ほど前のこと、フランス・ギャルの「夢シャン」が好きになり、この曲の入っている盤は全部買うぞ宣言をして世界中のありとあらゆる「夢シャン」を発掘していてこのアルバムにブチ当たった。曲目を見るとカヴァー・ポップスのオンパレードだ。ジャケットも可愛い。3人娘の中でも断トツの可愛さではないか。早速ヤフオクでゲット、1,000円だった。
 この2nd アルバム「潮風のメロディ」は、何とデビュー・アルバム「17才」の2ヶ月後(!)にリリースされたもので、シングル①「潮風のメロディ」とそのB面④「なぜかしら」以外はすべてカヴァー、しかもその2曲とも前アルバム「17才」に既に収録済みというから驚きだ。大胆不敵というか、商魂たくましいというか、ファンに二度買いさせて涼しい顔の日本のレコード会社らしいやり方だ。まぁテキトーにでっち上げたような無味乾燥な埋め草オリジナル曲よりも古今東西の名曲をシンシアの瑞々しい歌声で聴けるので、私のようなカヴァー・ヴァージョン・ハンターにとってはありがたいことなのだが...(^.^)
 ①「潮風のメロディ」は文字通り爽やかな風を感じさせるようなナンバーで、シンシアの清潔感溢れる歌声が耳に心地良い。私の少し上の世代の方なら甘酸っぱい思い出が蘇ってきて胸キュンしてしまうのではないだろうか?楽曲としても実によく出来ていて、特に転調サビの “一人で歩く港~♪” のラインが最高にキマッている!!! 筒美メロディーの真髄ここに極まれり、と言いたい1曲だ。メリー・ホプキンの②「悲しき天使」(Those Were The Days)は彼女の伸びやかな歌声によって実に瑞々しい印象を与えるヴァージョンになっている。少しテンポが速すぎて原曲が持っていた独特の哀愁が感じられないのが玉にキズか。欧陽菲菲(←この人も大好き!)の③「雨の御堂筋」はベンチャーズ歌謡の中でも「京都の恋」と一、二を争う大傑作で、その哀愁舞い散るメロディーが好きで好きでたまらない。そんなスーパーウルトラ愛聴曲をシンシアの歌声で聴ける喜びを何と表現しよう? A面では①と並んで好きなトラックだ。
 前後左右をカヴァー曲に挟まれてポツンと居心地が悪そうな④「なぜかしら」はいかにもアイドル歌謡のB面らしいイキそうでイカない展開の曲。曲としては平板だがアレンジはかなり工夫されていて聴き易い。ビージーズの⑤「小さな恋のメロディ」(Melody Fair)はゆったりした曲調が彼女に合っているのか、気合いの入ったヴォーカルを聴かせてくれる。一人追っかけ二重唱も懸命さが伝わってきて思わず “もっとリラックスしてエエねんで~(^.^)” と肩を抱きたくなってしまう(笑) ②と同じく原曲よりもかなり速いテンポで歌われるジリオラ・チンクエッティの⑥「雨」は彼女自身がこの曲を好きなのか、あるいはたまたま曲想と彼女の歌唱スタイルが合っていたのか、実に溌剌と歌っている。特にBメロからの流れるような展開が素晴らしい。
 ディオンヌ・ワーウィックの⑦「小さな願い」(I Say A Little Prayer)ではアップテンポで水を得た魚のようにバカラック・メロディを歌うシンシアの清々しい歌声が楽しめる。ヘレン・シャピロの⑧「悲しき片想い」(You Don’t Know)は若さ溢れる熱唱だし、ドリス・デイの⑨「先生のお気に入り」(Teacher’s Pet)はこのアルバム中一番唯一の50'sヒットソングながら、ハジケるような軽快なノリでめちゃくちゃキュートなナンバーに仕上がっている。コレ、結構な掘り出し物かも...(^o^)丿
 ダイアナ・ロス & ザ・スプリームズの⑩「ラヴ・チャイルド」は歌いこなすのは中々難しいナンバーだと思うが、高速で一気にたたみかけるように歌うパートなんか、かなり善戦している。フランス・ギャルの⑪「夢みるシャンソン人形」は浅田美代子や小林麻美など、当時の新人歌手がこぞってカヴァーしていた女性アイドル御用達の名曲だが、シンシアの堂々たる歌いっぷりも聴き応え十分だ。シーカーズの⑫「ジョージー・ガール」はちょっとバックコーラスがクドイが、寄り添っていたコーラスが離れて彼女の独唱になるパートが聴き所。この歌声、めちゃくちゃ萌えまっせ(^o^)丿 それにしても私の好きな曲ばかり歌ってくれるのが何よりも嬉しい。デビューして2ヶ月足らずということで、まだ歌の表現力とか吸引力とかいう次元には達していないが、洋楽ポップスのカヴァーに取り組む17才のシンシアの初々しい歌声が楽しめる、70'sアイドル・ファンにとってはたまらない1枚だと思う。

潮風のメロディ


雨の御堂筋
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