shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Irresistibilmente / Sylvie Vartan

2010-03-03 | European Pops
 私は本格的に音楽に目覚めた時からずっと洋楽を中心に聴いてきた。しかし外国の歌を聴く時に一番のネックになるのが言葉の壁である。ビートルズやカーペンターズで鍛えられたせいか英語の歌はまだすんなり心に入ってくるが、英語以外の歌は何を唄っているのかサッパリ分からない。だから大好きなギャルやバルタン、オーラの歌もタイトルの読み方どころかその区別さえつかない、まさにお手上げ状態だ。
 それに比べ、ヨーロッパの人たちには2~3ヶ国語を話せるバイリンガルやトリリンガルが珍しくない。当然私の大好きなフレンチ、イタリアンの歌姫たちも様々なバイリンガル録音を遺しており、 “フレンチ、イタリアン好き” でなおかつ “ちょっと変わったもの好き” の私はそういう盤を eBay で見つけてきてはガンガン買い漁ったものだった。フランス・ギャル「夢シャン」のドイツ語盤やイタリア語盤、チンクエッティ「雨」のスペイン語盤や「悲しき天使」のフランス語盤など、結構珍盤が多い。そういえばギャルがイタリア語で歌う「雨」もあったなぁ。同じシンガーが同じ曲を歌っても言語が変わるだけで雰囲気も微妙に違っていて結構楽しめるのだ。とまぁこのように大抵はシングル盤として単発でリリースされることが多いのだが、中にはLP1枚まるごと他国語盤という珍しいレコードもあった。それが今日ご紹介するシルヴィ・バルタンのイタリア語ヴァージョン集「イレジスティビルメンテ」である。
 このレコードは日本はおろか本国フランスでも出ておらず、1975年にイタリアのみでリリースされた稀少盤で、オークションにも滅多に出てこない。そもそもこの盤の存在自体あまり知られていないようだ。私はたまたまモーツァルトの交響曲をモチーフに書かれた「哀しみのシンフォニー(Caro Mozart)」という彼女のヒット曲をベスト盤CDで聴いてめちゃくちゃ気に入り、ぜひコレをオリジナル盤のアナログ・サウンドで聴いてみたい(←何やかんや言うても、ヴォーカルを一番自然な音で聴くにはアナログLPに限ると思います...)と思って彼女のディスコグラフィーを調べ、そこで初めてフランス・オリジ盤には入っていないことを知り、このイタリア盤に辿り着いたという次第。早速eBayで検索してみたが、そんなモノが出ているワケがない。しかしそんなことで怯んでいてはイエイエ・マニアの名がすたる。既にフランス・ギャル「Zozoi」のeBay Franceで味をしめていた私は今度は eBay Italia を検索してみた... あった... しかも49ユーロだ。コレってめっちゃオイシイやん... もらった!!! 結局誰も来ず、無競争でこの激レア盤を手に入れることが出来た。因みにさっきeBay Italia を覗いてみたら 150ユーロだった。何かめっちゃ得した気分だ(^.^)
 収録曲は全12曲、RCA Italia の若草色のレーベルが新鮮だ。フランス語もイタリア語も何を言うてんのか全然わからない点は同じだなのが、イタリア語で吹き込まれたA-①「あなたのとりこ」はやはりフランス語ヴァージョンが耳にこびりついているので、言葉の響きやリズムへの乗り方など何となく変な感じがしてしまう。オケも違うので余計に違和感を感じるのかもしれないが、珍盤好きの私としてはコレはコレで味があって面白い。A-③「ズン・ズン・ズン」はノリの良いマーチ調の曲で、1968年にイタリアでミーナとオーラの、フランスではダリダとシルヴィのヴァージョンがヒットした。それにしても凄い顔ぶれの競作である。この曲の旋律に歌い手を刺激するような何かが潜んでいるのだろうか?
 B-①「ブォナセーラ・ブォナセーラ」はイタリア語で “コンバンワ” という意味で、シルヴィの表現力豊かなヴォーカルとダイナミックなストリングス・アレンジが絶妙にマッチしてイタリア人顔負けのネアカなカンツォーネになっている。B-③「哀しみのシンフォニー」はモーツァルトの交響曲をアダプトして見事なポップスに仕立て上げた発想が素晴らしい。クラシックが苦手な私でもコレには唸ってしまった。シルヴィの憂いを帯びた歌声がこの旋律が持つ哀愁をこれ以上ないぐらいに引き出しており、ハッキリ言ってめちゃくちゃ気に入っている1曲だ(^o^)丿 尚、この曲は発表当時フランスを除く各国で発売されたということだが、何でやろ?フランス人はモーツァルト嫌いなんかな?
 他の曲も基本的にはイタリアンな明るいポップスになっており、B-②「ラ・ジオベントゥ」やB-⑤「クアンド・ソリディ・トゥ」なんか結構耳にこびりつく印象的なフレーズの波状攻撃が楽しいし、ドラマチックなA-④「ベイビー・カポネ」やシルヴィ版 “ハニー・パイ” みたいなA-⑤「デュ・ミヌティ・ディ・フェリチタ」なんかまさに変幻自在のヴォーカルで、彼女のシンガーとしての魅力が堪能できるトラックだ。このアルバムはいつものフレンチ・シルヴィではないが、70年代前半の彼女の歌い手としての充実ぶりがビンビン伝わってくる好盤だと思う。

シルヴィ・バルタン Irresistibilmente Italian


シルヴィ・バルタンのケッサク空耳


SYLVIE VARTAN-Caro Mozart(1971)
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