shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

京都フェロモン菩薩 / 渚ゆう子

2010-03-16 | 昭和歌謡
 今まで何度か書いてきたベンチャーズ CD ハンティング・ツアーだが、大漁でホクホクの中、1枚だけ迷った挙句買うのをやめ、後になって激しく後悔した盤がある。「ベンチャーズ歌謡大全」という CD で、ベンチャーズが書いた昭和歌謡の名曲の数々をレーベルの枠を超えてオリジナル音源で収録しており、それが何と日本橋の Disc JJ に1,100円で出ていたのだ。今となっては勿体ないことをしたと思うが、当時はまだ本家ベンチャーズの音源で手一杯だったのと、唯一聴いたことがあった山内賢&和泉雅子の「二人の銀座」のトホホな歌声が頭をよぎってついつい腰が引けてしまったのだ。あの時アレを買っておけばもっと早くベンチャーズ歌謡の素晴らしさを知ることが出来ていたと思うと悔しくてたまらない。やはり “迷ったら買え!” というコレクターの鉄則は絶対だ。
 結局、ベンチャーズ歌謡に入門したのはそれからかなり経ってから、たまたま YouTube でベンチャーズを見ていてその関連動画に渚ゆう子の「京都の恋」を見つけ、クリックしたのがキッカケだった。何コレ、めっちゃエエやん(≧▽≦) エレキ・シタールの音色がたまらないベンチャーズのオリジナル・ヴァージョンとは又違った味わいがあって、見事な昭和歌謡に昇華されている。感激した私は続いて「京都慕情」もクリック、これまた素晴らしい歌声とアレンジで、どこをどう聴いても京都の街並みが瞼の裏に浮かんできそうな名唱だ。オリジナル・ヴァージョンを遥かに凌駕するその素晴らしさに感激した私は、とりあえず彼女の CD を1枚買ってみることにした。
 早速アマゾンで検索してみるとベスト盤ぽいのが数枚ズラズラと出てきたが、どれもこれもジャケットがイマイチだ。 LP ならもちろんのことだが、たとえ絵柄が小さい CD であっても、女性シンガーはジャケットにも拘りたい。ということで目に留まったのが「京都の恋」という盤で、五重の塔をバックに彼女の美しい写真がフィーチャーされていたが、先の2曲以外は全く知らない曲ばかりで、その曲名にも “ちょっと違う感” が漂っていたのでパス。更に見ていくとそれとそっくりなデザインのイラストが描かれたジャケットの盤を見つけた。アルバム・タイトルは何と「京都フェロモン菩薩」!!! フェロモン菩薩ってアンタ、凄いタイトルやん(^.^) 曲目を見ると京都ゆかりの曲ばかりが並んでおり、しかも「京都慕情」と「京都の恋」の2曲ともベンチャーズ・ヴァージョンまで収録し、後者に至ってはライヴ・ヴァージョンも入れると3テイクが収められていることになる。このような発想のコンピが大好きな私は早速買いを決めた。
 届いた CD には “みうらじゅん責任選曲・編集” とある。ジャケットのイラストもこの人らしいが、選曲とその配列が実に見事で、効果音①(21)とベンチャーズ②⑳で彼女の17曲を挟むという構成もよく考えられている。60分弱の CD 1枚がトータル・アルバムの如く一気通聴でき、まるで “京都組曲” と言っていいような雅な雰囲気を醸し出しているのだ。レコード会社のディレクターが選曲したと思しき他のベスト盤と激しく一線を画す素晴らしいコンピレーション盤である。
 全21トラック中、上記の2曲のオリジやライヴ・ヴァージョンを除く13曲の中にも聴きどころは多い。私が特に気に入ったのはチェリッシュ(←懐かしい!)のカヴァー⑭「なのにあなたは京都へゆくの」で、品格滴り落ちる曲想と彼女の透明感溢れる歌声がベストのマッチングを見せるキラー・チューンだ。情景が目に浮かぶような見事な表現力に言葉を失う⑤「京都・北山・杉木立」、懐かしいメロディーを慈しむように歌う⑧「女ひとり」、「京都の恋」を裏返しにしたような哀愁漂う⑨「京のにわか雨」、コテコテのムード歌謡がたまらない⑫「京都・神戸・銀座」と、昭和の濃い音が一杯詰まっている。
 ベンチャーズ歌謡を代表する屈指の名曲「京都の恋」と「京都慕情」の2曲を目当てに買ったこの CD だったが、予想を遥かに上回る素晴らしい選曲・編集で、心に沁みいる名曲を一杯再発見することができた。この頃の昭和歌謡の音源は宝の山なはずだから、他のレコード会社もみうらじゅん氏のような “音楽のわかってる” 人にプロデュースを依頼してお宝コンピ盤をどんどんリリースしていってほしいものだ。

京都の恋(Kyoto Doll)・・・ザ・ベンチャーズ (The Ventures)


渚ゆう子 京都の恋 1970


渚ゆう子 京都慕情

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