shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ナツメロ / 小泉今日子

2009-03-24 | 昭和歌謡
 キャンディーズが普通の女の子に戻り、太田裕美がテクノ歌謡へと路線変更してしまった80年代のJ-Popsは、MTV効果もあって百花繚乱の第2期黄金時代を迎えていた洋楽に比べると、もはや私にとって心して聴くに値しないモノとなっていた。その後数年間にわたって100%洋楽中心の生活を送っていた私にキョンキョンを教えてくれたのは当時の同僚で親友でもあるミヤピーだった。彼は私のような音楽ジャンキーとは違い、バランスの取れた人生を送っている常識人だが、そんな彼が好きだったキョンキョンの曲を一緒に聴く機会があり、私もすっかり気に入ってしまった。早速ベスト盤CDを買ってきて聴いてみるとこれがまぁ名曲のオンパレード(゜o゜) 初期の頃はどーってことない普通のJ-Popsだったものが「迷宮のアンドローラ」「ヤマトナデシコ七変化」「スターダスト・メモリー」の3連発あたりから楽曲のクオリティーが格段に向上、80年代のJ-Popsが忘れてしまった昭和歌謡直系のメロディアスな展開が心地良く、「なんてったってアイドル」の底抜けの楽しさや「夜明けのMEW」に潜む哀愁が私を他のキョンキョン盤探しへと駆り立てた。イラストのジャケットに惹かれて買った「Ballad Classics」の中の「スターダスト・メモリー(スロー・ヴァージョン)」は意表を突いたアレンジが絶品だったし、「Best Of Kyong King」の中の「木枯らしに抱かれて(コーラス・ヴァージョン)」なんかもう鳥肌モノで、その深いバラッド性は単なるJ-Popsにしておくのがもったいないほど圧倒的に、超越的に、芸術的に素晴らしかった。そして88年、驚異の全編カヴァー・アルバム「ナツメロ」がリリースされた。“カヴァーは選曲が命”“カヴァーはオリジナルの単なる模倣に終わっては意味がない”というのが私の持論なのだが、このアルバムは何よりもまずその選曲で私を驚かせた。ライナーによるとキョンキョン自身の思い出・思い入れの集大成とのことだが、それにしても思わず唸ってしまうようなラインナップだ。フィンガー5の①「学園天国」やピンクレディーの②「SOS」なんかはまだ誰でも思いつきそうなメジャーな曲だが、レイジーの④「赤頭巾ちゃん御用心」、アニメの挿入歌⑫「アクビ娘」、ずうとるびの⑬「みかん色の恋」となると話は別。このようなマイナーな隠れ名曲を発掘してきて本アルバムで取り上げたセンスの良さはもう凄いとしか言いようがない。キョンキョンのセルフ・プロデュースということなので、彼女自身もかなりの音楽マニアなのだろう。3曲ともオリジナルの良さを殺さずにキョンキョンらしさを上手く活かした楽しいヴァージョンに仕上がっており、聴く者を古き良き昭和の時代へと誘うキラー・チューンだ。③「お出かけコンセプト」、⑦「恋はベンチシート」とジューシィ・フルーツの曲が2曲取り上げられているのも目を引く。テクノ・ニュー・ウェイヴと言われながらも実は正統派ポップ・バンドだったジューシィ・フルーツは私も大好きで高校時代結構ハマッて聴いていたのだが、多分キョンキョンも大ファンだったのだろう。更に⑦のエンディングではデーモン小暮閣下が登場、キョンキョンとの「ベンチシートの車に買い換えてぇ~」「ダメだ!」「ねぇ~」「しょーがない、買ってやるか...」「やさしい悪魔(^.^)」という掛け合いに続いて間髪を要れずにキャンディーズの⑧「やさしい悪魔」になだれ込むベタな展開が大好きだ(^o^)丿 これ以外にもキャロルやツイストの曲をやっていたりとか、「木綿のハンカチーフ」風のイントロで始まる「SOS」のアレンジとか、とにかく選曲・演奏・アレンジの細部にまで気を配って昭和の雰囲気を再現したこのアルバム、よっちゃんこと野村義男をはじめとする製作陣の音楽愛に溢れたキョンキョンの最高傑作だ。

アクビ娘(Sound)-小泉今日子

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