shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ASIA

2009-03-04 | Rock & Pops (80's)
 エイジアは 70年代に活躍したブリティッシュ・プログレ・バンドのメンバーたちが80年代に入って結成したスーパーグループである。ただ、一口にプログレといってもバンドによってコンセプトや方向性はそれぞれ異なっていたので、元キング・クリムゾンのジョン・ウェットン、元EL&Pのカール・パーマー、元イエスのスティーヴ・ハウの3人に元バグルズのジェフリー・ダウンズが加わって一体どんなサウンドが生まれるのか、期待半分不安半分で新曲が聴ける日を今か今かと待っていた。
 そして82年の春のある日、それは突然やってきた。デビュー・アルバム「エイジア 詠時感 ~時へのロマン~」からのファースト・シングル①「ヒート・オブ・ザ・モーメント」である。血湧き肉躍るようなギターのイントロはまるで混沌とした70年代の終焉とキャッチーなメロディーの復権を掲げた80年代の始まりを高らかに宣言しているかのようだった。カール・パーマーの刻むエネルギッシュかつ正確無比なビートは前途洋々たる未来へとつながる開放感を醸し出し、ジョン・ウェットンの爽やかで説得力溢れるヴォーカルが胸に突き刺さった。ダウンズ=ウェットンの作品ということで、バグルズの「ラジオスターの悲劇」っぽいメロディー・ラインが現れるのはご愛嬌、とにかくこれぞ80'sロック!という感じがたまらない名曲だ。
 この曲は大反響を呼び全米チャートの4位にまで昇りつめるのだが、日本では賛否両論が渦巻いた。私のようなポップス・ファンはその新しいサウンドを諸手を揚げて歓迎したが、一方で頭の堅いうるさ型のプログレ・ファンはやれ堕落しただのコマーシャリズムに魂を売っただのと言いたい放題(>_<) ほんなら聞くけど、変拍子がそんなにエライんか?曲が長けりゃそれでエエんか?ポップで悪いか!ジョン・ウェットンは「70年代にやっていたような長い曲を今もやっていたら僕らはオールド・ファッションというレッテルを貼られてしまう。今やっている方法なら80年代の波に入るチャンスがあると思った。」と言っている。波に “入る” どころか波を “作って” しまったエイジアだが、要するにそういうことである。
 アルバム全体を聴いて感じたのは音楽的なイニシアチブを握っているのは意外にもジェフリー・ダウンズではないかということ。メイン・コンポーザーである彼が音楽監督のような立場にいて、高度なテクニックを誇るウェットン、パーマー、ハウという3人のプログレ職人のエゴを巧く交通整理しながら陰のまとめ役に徹しているように思えるのだ。セカンド・シングル②「オンリー・タイム・ウィル・テル」はイントロの荘厳なキーボードの音色だけでゾクゾクさせられるプログレ・ポップ。③「ソウル・サヴァイヴァー」は変拍子を用いるなどしてプログレの残り香がそこはかとなく漂うが、高度なテクニックを駆使して実に聴きやすく仕上げている。これこそエイジアの真骨頂!といえる名演だ。北斗琉拳のカイオウが出てきそうなイントロから一気に駆け抜ける⑤「タイム・アゲイン」はアルバム中最もスリリングな展開を見せる曲で、緊張感溢れるコーラス・ハーモニーもハウのドラマティックなギター・ソロもめちゃくちゃカッコイイ!同じく全員がハイ・テンションで突っ走る⑥「ワイルデスト・ドリームズ」は何といっても熱気溢れるドラム・ソロとアグレッシヴなキーボードに圧倒される。
 キャッチーなサビのメロディーが耳について離れない⑧「カッティング・イット・ファイン」は3分20秒以降のスローな後半部はイマイチ好きになれないが、アップ・テンポで緊張感溢れる前半部の展開は⑤と並ぶこのアルバムのハイライト(≧▽≦) これこそロックだ!と思わず叫びたくなるような疾風怒濤の展開がたまらない。
 難しいことを誰にでも分かるように易しく表現することこそ至難の業なのだ。私は1枚丸ごと超高品質ポップ・ロックといえるこのアルバムが大好きだ。もう一度言おう... ポップで悪いか!

Asia- Heat Of The Moment