shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Sultans Of Swing / Dire Straits

2009-03-06 | Rock & Pops (80's)
 ダイアー・ストレイツは流行に関係なくそのオリジナリティー溢れる音楽のクオリティーだけで勝負できる数少ないグループだった。彼らがデビューした70年代末期というのはイギリスでニュー・ウェイヴ、つまりパンク・ロックが台頭する一方で、アメリカでは相も変わらずビッグ・ネームが幅を利かせており、パンクはヘタでウルサイだけやしアメリカで流行ってる曲はどれも似たり寄ったりでそろそろ飽きてきたなぁ...と思っていた私のような人間にとって彼らの登場はまさにドンピシャのタイミングだった。
 確か79年の春頃だったと思うが、ラジオで初めて①「悲しきサルタン」を聴いた時の衝撃は凄まじく、指で弾くストラトキャスターの独特の音色とボブ・ディランをクールにしたようなマーク・ノップラーのヴォーカル(友人のplicnoさんは「酔っ払いのボヤキみたいな歌い方」と仰ってた...ウマイこと言いますね!)の存在感はまさにワン・アンド・オンリーで、1度聴いたら忘れられない強烈なインパクトがあった。そのどこかルーツ・ロック的な音作りはアメリカで主流だったAOR とは激しく一線を画し、あらゆる点で新鮮な響きを持って迫ってきた。右手の親指、人差し指、中指の3本の指を駆使する彼独自のフィンガー・ピッキング・スタイルから生み出されるギターの乾いた音が耳に心地良く、私はすっかりそのサウンドに夢中になった。
 ②「レィディ・ライター」は①の三軒隣に住んでいるようなノリノリの曲だが、この威勢良く駆け抜けていくような必殺のテンポ設定こそダイアー・ストレイツの専売特許、疾走せずして何のダイアー・ストレイツか、と言いたい。こんな曲をあと10曲でも20曲でも作ってくれい!④「トンネル・オブ・ラヴ」はマークのギターが冴え渡る8分を超えるドラマティックな大作で、初期のスプリングスティーン的な薫りも湛えつつ、渋~いロックを聴かせてくれる。シングル発売のみでオリジナル・アルバム未収録の⑥「トゥイスティング・バイ・ザ・プール」はそれまでの彼らからは想像できないような軽快なロカビリーで、こういうシンプルなロックンロールがバンドの本質とはかけ離れていることは百も承知だが私は大好きだ。この手の3コード・ロックンロールとしては他に「オン・エヴリィ・ストリート」収録の「ザ・バグ」があり、そっちも超オススメだ。
 全世界で2,000万枚以上を売り上げたというモンスター・アルバム「ブラザーズ・イン・アームズ」からのファースト・シングル⑨「マネー・フォー・ナッシング」はCGを駆使したビデオ・クリップが折りからのMTVブームに乗って大ヒットしたが、MTVを辛らつに皮肉った歌がMTVでヘビロテになってヒットするというのも考えてみれば面白い。コーラス参加のスティングの歌声や曲間のユーモラスなマークの合いの手「ウァ ウァ♪」もこの曲にぴったりハマッているし、ギター・リフが生み出すうねるようなグルーヴも絶品だ。
 シンプルなブルース・ロック⑩「ブラザーズ・イン・アームズ」、軽快で楽しさ溢れる⑪「ウォーク・オブ・ライフ」、淡々とつぶやく様なヴォーカルがクセになる⑫「コーリング・エルヴィス」、⑨の流れを汲む曲想で更に贅肉を削ぎ落としたような⑬「ヘヴィー・フュエル」、後半の盛り上がりが快感を呼ぶ⑭「オン・エヴリィ・ストリート」と、もう名曲名演のアメアラレである。ライブ音源の⑮「ユア・レイテスト・トリック」は哀愁のギター・メロディーが心に突き刺さる名演で、マイケル・ブレッカーのテナーもめっちゃ渋い!ノリが良くて渋くてカッコ良いダイアー・ストレイツ... これこそまさに“大人のロック”の最高峰だと思う。

Dire Straits - Sultans of swing [Live Aid -85 Full version HQ!]