shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Van Halen I

2009-03-16 | Hard Rock
 フォリナーのヒット曲に「衝撃のファースト・タイム」というのがあるが、ヴァン・ヘイレンのデビュー盤は当時高校生だった私にとってまさに「衝撃のファースト・アルバム」だった。とにかくそれまでリアルタイムで聴いてきたハードロック・ギターの概念を根底から覆すようなスリリングなプレイに完全KOされたのだ。味・クセ・ニュアンスといった個人的魅力で聴かせる他のギタリストたちとは違い、エディー・ヴァン・ヘイレンのギターというのはフレーズに情緒を絡ませないので、よくある「泣きのギター」に慣れた耳にはとりわけ衝撃的だった。その乾いた音色はまるでギターだけがそこで鳴っているかのような錯覚を覚えるほどで、まるでロック・ギターの究極奥義、無より転じて生を拾う“無想転生”の如き凄まじさ。しかも超高速でガンガン弾きまくりながらも一つ一つのフレーズがメロディアスでちゃーんと曲の一部になっており、他に類を見ないリフやバッキングで卓越したメロディー・センスを見せつけている。特にこのファースト・アルバムでは天才ギタリスト、エディーのキャリアの中でも最もギラギラしたアグレッシヴなプレイが聴けるのが嬉しい。
 バンド全体として見ても、どちらかというとあまり音域の広くないデイヴ・リー・ロスのヴォーカルもサウンドの中にピッタリとハマッているし、強烈なグルーヴを生み出すアレックスとマイケルのリズム隊も磐石で、若さゆえの勢いのある演奏が一発録りに近い臨場感のあるサウンドで音盤の中に封じ込められている。このアルバムはどうしても話題がエディーの神業プレイに集中してしまうが、私は楽曲の良さも重要なポイントだと思う。心に残るメロディーがあったからこそ、彼らのライブ感溢れるワイルドなプレイが活きてくるのだ。
 アルバムでは何といっても②③④⑤が曲間をほとんど空けずに圧倒的スピードで駆け抜けていくあたりが一番のハイライト。インパクト絶大なインスト・ナンバー②「エラプション」は闇を切り裂くような鋭いギター・サウンドが鳥肌モノで、右手でタッピングするいわゆるライトハンド奏法が全開だ。③「ユー・リアリー・ガット・ミー」はイントロを聴いただけで全身に電気が走り、ロックな衝動がマグマのように押し寄せる。ギターの歪み具合がこれまた最高で、キンクスのオリジナル・ヴァージョンが消し飛ぶカッコ良さだ。④「エイント・トーキン・バウト・ラヴ」はライブで大盛り上がりする曲で、イントロのギターの尖った音がたまらない。まさに絵に描いたようなハード・ロックの名曲だ。⑤「アイム・ザ・ワン」は超ハイスピード・リフを駆使して圧倒的な疾走感を生み出し、野放図にエディーがはしゃぎまくる疾風怒濤の展開が圧巻だ。
 89年のトーン・ロックの大ヒット「ワイルド・シング」の元ネタになった⑥「ジェイミーズ・クライン」に続く⑦「アトミック・パンク」はどうやって弾いてるのか想像もつかないようなスリリングなイントロからカッコ良いリフの波状攻撃で一気に駆け抜けるスピード感がたまらない(≧▽≦) ⑩「アイス・クリーム・マン」は前半の渋いアコギからエレキにスイッチして後半かっ飛ばす演出がかっちょ良く、デビュー盤にして早くも大物の風格が漂っている。
 他のヴァン・ヘイレン盤とは違い、何故かブリティッシュ・ロック特有の翳りが感じられるところもこの盤の魅力を大いに高めており、リリースから30年たった今でも色褪せないアメリカン・ロックの歴史的大名盤だ。

Eddie Van Halen - Eruption