shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Best Of Sade

2009-03-17 | Rock & Pops (80's)
 私が本格的にジャズを聴き始めたのは90年代半ばからだが、それ以前にジャズという音楽に対して持っていたイメージとしては「ちょっと敷居が高い」「お年寄り向け」「歌のないインスト中心」「ポップスのような親しみやすさがない」「ロックのような迫力に欠ける」「でも何となくオシャレ」というもので、概してポジティヴなものではなかったが、最後の「オシャレなサウンド」には密かに憧れを抱いていた。全米チャートをひたすら追いかけていた私とジャズっぽいサウンドの接点はほぼ皆無だったといっていい。
 時は85年の5月、マドンナやブルース・スプリングスティーン、フィル・コリンズ、ワムといったポップ・アーティスト達の寡占状態だった全米チャートに突然シャーデーという女性ヴォーカル(後で知ったことだがシャーデーというのはリード・ヴォーカルであるシャーデー・アデューを含めたバンドの総称らしい)の③「スムーズ・オペレイター」が彗星のように登場、あれよあれよという間に5位にまで上がって来たのだ。洗練されたサックス・ソロといい、女性ヴォーカルの醸し出すジャジーな雰囲気といい、その神秘的なサウンドはとっても新鮮で、まさに私がジャズという音楽に対して抱いていた“オシャレ”なイメージそのものだった。ビデオ・クリップで初めて見た彼女はまさに“クール・ビューティー”そのもので、彼女を取り巻く神秘性にますます拍車をかけていた。因みにこの曲のタイトル、日本人にとっては「スムーズなオペレーター」という言葉の響きには何の違和感も無くむしろカッコ良く聞こえるが、英語で “Smooth Operator” というのは実は「女たらし」の意味で、つまりこれは「アイツはスケコマシ~♪」という歌なのだ。そういう目でビデオ・クリップを見ると余計に面白さが増すかもしれない。
 ビデオ・クリップといえばここにアップしたYouTubeの“フル・ヴァージョン”は8分近い長さだが、これはアルバム・ヴァージョンの音源に後半部をリミックスして引き伸ばしただけのようだ(←同期させて実験してみました...笑)。②「ハング・オン・トゥ・ユア・ラヴ」はベースの刻むタイトなリズムに乗ったシャーデーのハスキーなヴォーカルが楽しめるキラー・チューン。クラブやラウンジで大ウケしそうな音作りだ。⑤「ザ・スウィーテスト・タブー」や⑨「パラダイス」も基本的には②③の流れを汲むシャーデー・サウンドで、そこにはジャズ、ソウル、ファンクといった様々な要素が散りばめられている。
 スロー・テンポな⑧「ラヴ・イズ・ストロンガー・ザン・プライド」では彼女の包み込むようなヴォーカルとエキゾチックな演奏が渾然一体となって聴く者を恍惚の世界へと誘う。⑩「ナッシング・キャン・カム・ビトゥイーン・アス」は洗練された都会的なサウンドが楽しめる隠れ名曲。決して期待を裏切らないエレガントなシャーデー節も健在だ。⑬「キス・オブ・ライフ」は彼女の囁くようなヴォーカルが生音によって生み出される音数の少ないクールなサウンドと巧くマッチしており実に快適な空間を演出している。
 シャーデーのサウンドには今聴いてもまったく古臭さを感じさせない、時間の風化を寄せ付けない“ちから”が漲っている。これはシャーデー不変のクールでオシャレなサウンドが一杯詰まった宝石箱のようなアルバムだ。

Smooth Operator


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