shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Best Of The Doobies / Doobie Brothers

2009-03-12 | Rock & Pops (70's)
 ドゥービー・ブラザーズで最初に買ったのがこの初期ベスト盤「ベスト・オブ・ザ・ドゥービーズ」である。これは私にとって幸いだった。というのはこの後、バンドのサウンドがガラリと変化し、まったく別物のバンドへと変貌してしまったからだ。もしあと2・3年ズレていたら私は見向きもしなかっただろう。
 元々彼らはベイ・エリアのサンノゼで70年に結成されたブルースやカントリーをルーツとする典型的なアメリカン・ロック・バンドで、72年に出されたセカンド・アルバム「トゥールーズ・ストリート」からシングル・カットされた④「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」が大ヒットし一気にブレイクした。トム・ジョンストンとパット・シモンズの爽快なツイン・ギターにシンプルなコーラス・ワークが絡んでいく快感がたまらない、初期ドゥービーズの魅力を凝縮したような名曲だ。他にもハイスピードで疾走する感じが圧巻な⑥「ロッキン・ダウン・ザ・ハイウェイ」やグルーヴィーな⑦「ジーザス・イズ・オールライト」など、彼らのサウンドを特徴づける音楽スタイルが一聴瞭然な名盤だ。
 完全に自らのアイデンティティーを確立した彼らが波に乗って73年にリリースしたサード・アルバム「キャプテン・アンド・ミー」にはドゥービーズの名を不動のものとした2曲が入っていた。①「チャイナ・グローヴ」と②「ロング・トレイン・ラニング」である。この2曲、どちらもその独特のギター・カッティングが生み出すファンキーなグルーヴが絶品で、私なんかイントロを聴いただけでアドレナリンが逆流し、ロックな衝動がこみ上げてくる。①のドライヴ感なんか凄まじいモノがあるし、②の間奏で聴けるハーモニカもめちゃくちゃカッコイイ。B'zの「バッド・コミュニケーション 000-18」のアーシーな演奏は間違いなくこの曲に触発されたものだと思う。とにかくどちらもアメリカン・ロックの歴史に残る屈指の名曲名演だ。
 75年には土の薫り溢れるアコースティック・ギターとアカペラ・コーラスがユニークな⑤「ブラック・ウォーター」が初の全米№1となり、続いてアルバム「スタンピード」を発表、ジェフ・バクスターの加入でトリプル・リード・ギターとなり更にパワーアップしたドゥービー・サウンドが炸裂する。特に⑩「テイク・ミー・イン・ユア・アームズ」はギター・カッティングからコーラス・ハーモニーに至るまで前期ドゥービーズの集大成的なノリノリのサウンドで、その勢いに満ちた躍動感は圧巻だ。これがあのホランド=ドジャー=ホランドの作品だと知った時はビックリしたが、リズム・パターンに注意して聴いてみるとナルホドと納得できる。
 だが私の心酔したドゥービーズはここまで。その後バンドはトム・ジョンストンの病気療養中に加入したマイケル・マクドナルド色を強め、パワフルでドライヴ感溢れる前期サウンドからメロウでオシャレなAOR的後期サウンドに変わってしまう。特に79年の「ミニット・バイ・ミニット」とそこからシングル・カットされて全米№1(しかもグラミー賞受賞ときたもんだ!)になった「ホワット・ア・フール・ビリーヴズ」なんてもう最悪で、マイケル・マクドナルドのふわふわした彷徨ヴォーカルといい、覇気の無いフュージョンちっくな腰抜けサウンドといい、何でこんな毒にも薬にもならへん味気ない音楽が売れるのかまったく理解出来なかった(>_<) このベスト盤をお持ちの方はマイケル色の強い③⑧だけが周りから浮いているのがよくお分かりいただけると思う。
 ドゥービー・ブラザーズ、その前期後期のサウンドのどちらを好むかでその人の音楽観までわかってしまうという、まるでリトマス試験紙のようなバンドである。

The Doobie Brothers Long Train Runnin' / Live at Budokan '93