shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

いしだあゆみリサイタル

2009-03-15 | 昭和歌謡
 私はあゆの大ファンである。ただしあゆはあゆでも平成のあゆではない。私が好きなのは昭和のあゆ、いしだあゆみである。そもそも昭和歌謡を語る上で「いしだあゆみのブルーライト・ヨコハマ」は絶対に外せない屈指の名曲であり、その哀愁舞い散るメロディーは多くの日本人の心を捉え、老若男女を問わず誰もが口ずさむ“国民的流行歌”になった。ファースト・フード感覚で気軽に音楽を聴ける今と違い、レコードがまだ貴重品だった69年という時代に100万枚を売り上げたというのだから、その凄さがわかろうというものだ。
 そんな彼女の一番の魅力は“あゆみ節”と呼ばれるゆる~いヴォーカルにあり、聴く者をゆったりした気分にさせてくれる。昨年私が本格的に昭和歌謡にハマッた頃、友人の901さんとの「ザ・ピーナッツのボサノバ」を巡るやりとりは以前お話ししたが、その時「ザ・ピーナッツ以外にも昭和歌謡でボサノバやってた歌手いてへんかなぁ...」という話題になり、その時いみじくも「いしだあゆみなんかボサノバやってそうな気がするなぁ... あのゆるい歌い方は絶対にボッサに向いてるでぇ(^o^)丿」と仰ったのを聞いてネット検索で調べてみると、何と本当にあったのだ。改めて901さんの慧眼には平伏するしかない。アルバム・タイトルは「いしだあゆみリサイタル ~My First Recital~」で、バックを務めるのは原信夫とシャープス&フラッツ、ゲストは何とあのジャッキー吉川とブルー・コメッツだ。曲目を見るとカヴァー曲が数多く取り上げられており、「男と女」や「黒いオルフェ」、それに何と西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」までやっているのだ... これは聴きたい!何としても聴きたい!! 天地が逆になっても聴きたい!!! しかし未CD化なのでヤフオクでLPを狙うしかない。彼女のような人気歌手のLPは状態の良い盤を探すのが至難の業で、3度目のトライでようやくピカピカ盤を手に入れた。
 真っ先に針を落としたのはA面の④「男と女」で、そこから⑤「黒いオルフェ」、⑥「白い恋人たち」、⑦「いそしぎ」、⑧「シェルブールの雨傘」へとボッサ・アレンジを施されたカヴァー曲が続く。癒し効果抜群の彼女のしっとりした歌声はボッサの名曲たちとピッタリ合っていて、こちらの期待通りのアンニュイな雰囲気を醸し出している。特に「黒いオルフェ」なんかもう絶妙な脱力ぐあいで、例のイザベル・オーブレのフレンチ・ボッサに迫る名演だと思うし、「いそしぎ」での消え入るようなヴォーカルで儚さを見事に表現しているところも特筆モノだ。すっかりフレンチ・ボッサ気分に浸ったところでA面アタマの①「ブルーライト・ヨコハマ」や②「明日より永遠に」、③「涙の中を歩いてる」といった彼女のヒット曲を聴く。歌謡曲というジャンルは今やもう消滅したに等しいが、改めて聴いてみると実によく出来た曲が多い。この素晴らしさが分かる日本人に生まれて本当によかったなぁと思う。
 B面最初の2曲①「スカボロー・フェア」と②「アクエリアス」はブル・コメとの共演で、①では最初のうちこそ大人しくスローで歌っているものの曲のテンポが速くなる1分20秒あたりからノッてきてそのまま間髪入れず②へとなだれ込む。哀愁舞い散るフルートをバックにスインギーに歌うあゆのカッコ良さ!佐川満男とのデュエット③「或る日突然」に続いて④「アカシアの雨がやむとき」のイントロが流れてくるだけで万感胸に迫るモノがあるが、あゆの歌声はもう背筋がゾクゾクするほど素晴らしい。筒美メロディーを凝縮したようなGS歌謡のキラー・チューン⑥「太陽は泣いている」、少し愁いを帯びたあゆみ節が炸裂する⑦「喧嘩のあとでくちづけを」、典型的な歌謡曲⑧「今日からあなたと」と、コンサートの後半部を怒涛のオリジナル攻撃で盛り上げるという流れも単純明快だ。
 ファースト・ライブの緊張感やアット・ホームな雰囲気がよく伝わってくるこのアルバム、キュートなジャケットも含めて私の愛蔵する1枚だ。

Ishida Ayumi - bluelight yokohama