shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Long Cold Winter / Cinderella

2009-03-23 | Hard Rock
 シンデレラはデビュー当時“ボン・ジョヴィの弟分”的なハードロック・バンドとして紹介された。全米だけで300万枚を売り上げたファースト・アルバム「ナイト・ソングス」は当時のハードロック系の新人バンドとしては異例の大成功と言えたが、ボン・ジョヴィのような時代性を反映した音作りでもなく、むしろ70年代の古き良きロックンロールを今日風に解釈した演奏が中心だったこのアルバムが大ヒットした背景には、まずファースト・シングル「シェイク・ミー」のビデオ・クリップのインパクトの大きさが挙げられる。バンド名と誰もが知ってる「シンデレラ」のストーリーをドッキングさせるという手法が大当たりしてMTVでのヘヴィー・ローテーションへとつながり、そこにボン・ジョヴィとのカップリング・ツアーの成功という追い風が吹いたというわけだ。
 デビュー・アルバムが大成功を収めると無意識のうちに冒険より守りの姿勢に入ってしまうアーティストが多いが、彼らは違った。プレッシャーに押しつぶされることなく、より自分たちのルーツに忠実なサウンド、つまりシブシブのブルース・ロック満載のセカンド・アルバム「ロング・コールド・ウインター」を作り上げたのだ。前作に近いハードでヘヴィーなサウンドを予想していた私はこの盤を初めて聴いた時、そのあまりにも渋くてカッコ良いサウンドにぶっ飛んでしまった。リード・ヴォーカルのトム・キーファーの搾り出すような唱法はエアロスミスのスティーヴン・タイラーに今は亡きブルースの女王ジャニス・ジョップリンが憑依したかのような凄まじさで、コテコテのブルースから古い感じのロックンロールまで、いたずらに時代に迎合するのではなく、自らのルーツに忠実でありながらその上で自己を表現するという作風を貫いたこのアルバムはシンデレラというバンドの、とりわけトム・キーファーという男の気骨を激しく描写していた。メロディーで何か心の内にあるものを表現したいと思った時、感情移入の美しさと哀しさを内包するブルース・ロックという音楽に行き着くのは彼らにとって自然な成り行きだったのだろう。
 ①「バッド・シームストレス・ブルース~フォーリン・アパート」でいきなりデルタ・ブルースの泥臭いサウンドが炸裂し、聴く者の度肝を抜く。ドブロ・ギターのイントロから一気にバンド・サウンドへと雪崩れ込むあたりは鳥肌モノだ。抑え気味のプロデュースでよりライブ感に溢れる音作りがメロディーをよりハッキリと前面に押し出している。②「ジプシー・ロード」は「シェイク・ミー」のリズム・メロディーに更に磨きをかけたようなノリノリのロックンロール。トムお得意のギター回しが目に浮かぶようだ。③「ドント・ノウ・ホワット・ユー・ゴット」はロッカーのバラッドかくあるべしと言えるナンバーで、トムのエモーショナルなヴォーカルに涙ちょちょぎれる。ブルージーな魂の叫びが圧巻だ。④「ラスト・マイル」は躍動感溢れるキャッチーなロックンロールで、サビの部分のコーラス・ワークの巧さにも唸ってしまう。⑤「セカンド・ウインド」はバンドが一体となって疾走する感じがたまらないヘヴィーなロックンロールだが、エンディングがややまとめ切れなかった感もある。
 ⑥「ロング・コールド・ウインター」はとても前作と同じ人間が書いたとは思えないコテコテのブルースで、まるでベテランのブルース・バンドの演奏を聴いているかのような錯覚に陥ってしまう。ハッキリ言ってコレ、大好きです(^o^)丿 ⑧「カミング・ホーム」は土の匂いのするカントリー調のナンバーで、長くて寒い冬が終わり春の訪れを予感させるようなのどかな雰囲気を醸し出している。⑩「テイク・ミー・バック」はシンプルでノリの良い軽快なロックンロール。こうやって見てみるとロックンロールとブルースが実にバランスよく配置されているのがわかる。シンデレラというバンド名からは想像もつかないような骨太でラウドなブルース・ロックが聴けるこのアルバム、88年度私的№1といえる超愛聴盤だ。

ベスト ヒット USA 1989 Star Of The Week Cinderella 【The Last Mile】
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