太陽系には無数の小惑星がありますが、その中でも地球の近くを通過する「地球近傍小惑星」 (注1) は現在までに3万個以上発見されています。
注1…公転軌道が一定の条件を満たした天体は「地球近傍天体 (NEO: Near Earth Object)」と呼ばれます。「地球近傍小惑星 (NEA: Near Earth Asteroid)」は、地球近傍天体の中で小惑星に分類される天体を指します。地球近傍天体の99%以上は小惑星です (残りは彗星) 。
地球近傍小惑星に分類される小惑星の一部は地球のとても近くを通過しますが、その観測は困難です。サイズの大きな小惑星は地球から離れていても見つかりやすい一方で、サイズの小さな小惑星は地球にかなり接近しなければ望遠鏡で観測できるほどの明るさにはなりません。ところが、地球に近づくと見た目の移動速度も急激に変化するため、複数の観測記録を1つの小惑星としてつなげることも難しくなります。そのため、既に地球への最接近を終えて遠ざかるタイミングで初めて見つかることも珍しくはありませんし、未発見の地球近傍小惑星も無数に存在すると考えられています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/5d/3fb5748601531b50df11613c8b5d4e59.png)
地球に対する2023 BUの軌道 (赤色) は、最接近時には静止衛星軌道 (緑色) の内側に入っている。
そういった背景状況の下で、小惑星「2023 BU」の観測事例は記録的なものとなりました。1つはその接近距離です。協定世界時2023年1月27日0時29分 (日本時間同日9時29分) 、2023 BUは最小距離9967kmまで地球に接近しました。この数値は地球の中心からの距離であるため、実際には南アフリカの南端付近の上空、高度3589kmを通過したと予測されています。
この接近距離は月の公転軌道 (約38万km) はもちろん、静止軌道 (高度約3万6000km) の10分の1という記録的な値です。静止軌道の内側に入るような小惑星は珍しく、2023 BUは地球へ衝突せずに通過していったものの中では、史上4番目に接近距離の近い小惑星です (注2) 。
注2…小惑星としての登録を受けていない流星や火球は含みません。
もう1つ記録的だった点は、2023 BUが地球へ接近する前に十分な観測期間があったことです。推定直径3.5mから8.5mという大きさは、地球最接近時でも見逃す可能性が高いほどの小さなサイズです。しかし幸運なことに、2023 BUは最接近の約5日前、協定世界時2023年1月21日23時53分にゲナディ・ボリソフ氏によって発見されました。初観測の約15時間後には小惑星電子回報に掲載され、多数の天文台が2023 BUの観測を行いました。この観測体制は、最接近後に見えなくなるほど暗くなる1月31日まで続きました。最接近前の約5日間、全体で約9日間という観測期間は、小さな小惑星では異例の長さです。
地球に接近する前の2023 BUは、公転周期358.9日、軌道離心率 (注4) 0.063、軌道傾斜角2.35度という地球に似た公転軌道を周回しており、最接近の約4時間後には近日点 (最も太陽との距離が小さくなる公転軌道の点) を通過しました。しかし、あまりにも地球に接近した2023 BUの軌道は地球の重力によって変更され、公転周期425.4日、軌道離心率0.111、軌道傾斜角3.75度になりました。公転軌道に基づいた地球近傍小惑星の分類に照らすと、2023 BUはアテン群からアポロ群に変更されたことになります。
注4…簡単に言えば、円がどれくらい楕円かを表す値。0が歪みのない真円であり、値が1に近づくほど楕円になる。
現在の小惑星観測体制は、1990年代に起きたシューメーカー・レヴィ第9彗星の木星への衝突や、中生代白亜紀末に起きた恐竜などの大量絶滅の原因が天体衝突だと判明したことを受けて下地が構築され、年々増強されています。そのため、今回の2023 BUのような観測記録は今後もますます増えていくものと予測されます。
@地球近傍天体はこれまでに3万個を超える数が見つかっており、そのうち「潜在的に危険な天体」――地球の公転軌道から約750万km以内に近づく軌道をもち、なおかつ絶対等級が22よりも明るく直径140m以上と推定される、すなわち地球に衝突した際に大惨事を招く危険性がある天体――は約2300個とされる。さらにそのうち、今後100年間に地球に衝突する可能性が無視できない天体は約17個とされています。
注1…公転軌道が一定の条件を満たした天体は「地球近傍天体 (NEO: Near Earth Object)」と呼ばれます。「地球近傍小惑星 (NEA: Near Earth Asteroid)」は、地球近傍天体の中で小惑星に分類される天体を指します。地球近傍天体の99%以上は小惑星です (残りは彗星) 。
地球近傍小惑星に分類される小惑星の一部は地球のとても近くを通過しますが、その観測は困難です。サイズの大きな小惑星は地球から離れていても見つかりやすい一方で、サイズの小さな小惑星は地球にかなり接近しなければ望遠鏡で観測できるほどの明るさにはなりません。ところが、地球に近づくと見た目の移動速度も急激に変化するため、複数の観測記録を1つの小惑星としてつなげることも難しくなります。そのため、既に地球への最接近を終えて遠ざかるタイミングで初めて見つかることも珍しくはありませんし、未発見の地球近傍小惑星も無数に存在すると考えられています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/5d/3fb5748601531b50df11613c8b5d4e59.png)
地球に対する2023 BUの軌道 (赤色) は、最接近時には静止衛星軌道 (緑色) の内側に入っている。
そういった背景状況の下で、小惑星「2023 BU」の観測事例は記録的なものとなりました。1つはその接近距離です。協定世界時2023年1月27日0時29分 (日本時間同日9時29分) 、2023 BUは最小距離9967kmまで地球に接近しました。この数値は地球の中心からの距離であるため、実際には南アフリカの南端付近の上空、高度3589kmを通過したと予測されています。
この接近距離は月の公転軌道 (約38万km) はもちろん、静止軌道 (高度約3万6000km) の10分の1という記録的な値です。静止軌道の内側に入るような小惑星は珍しく、2023 BUは地球へ衝突せずに通過していったものの中では、史上4番目に接近距離の近い小惑星です (注2) 。
注2…小惑星としての登録を受けていない流星や火球は含みません。
もう1つ記録的だった点は、2023 BUが地球へ接近する前に十分な観測期間があったことです。推定直径3.5mから8.5mという大きさは、地球最接近時でも見逃す可能性が高いほどの小さなサイズです。しかし幸運なことに、2023 BUは最接近の約5日前、協定世界時2023年1月21日23時53分にゲナディ・ボリソフ氏によって発見されました。初観測の約15時間後には小惑星電子回報に掲載され、多数の天文台が2023 BUの観測を行いました。この観測体制は、最接近後に見えなくなるほど暗くなる1月31日まで続きました。最接近前の約5日間、全体で約9日間という観測期間は、小さな小惑星では異例の長さです。
地球に接近する前の2023 BUは、公転周期358.9日、軌道離心率 (注4) 0.063、軌道傾斜角2.35度という地球に似た公転軌道を周回しており、最接近の約4時間後には近日点 (最も太陽との距離が小さくなる公転軌道の点) を通過しました。しかし、あまりにも地球に接近した2023 BUの軌道は地球の重力によって変更され、公転周期425.4日、軌道離心率0.111、軌道傾斜角3.75度になりました。公転軌道に基づいた地球近傍小惑星の分類に照らすと、2023 BUはアテン群からアポロ群に変更されたことになります。
注4…簡単に言えば、円がどれくらい楕円かを表す値。0が歪みのない真円であり、値が1に近づくほど楕円になる。
現在の小惑星観測体制は、1990年代に起きたシューメーカー・レヴィ第9彗星の木星への衝突や、中生代白亜紀末に起きた恐竜などの大量絶滅の原因が天体衝突だと判明したことを受けて下地が構築され、年々増強されています。そのため、今回の2023 BUのような観測記録は今後もますます増えていくものと予測されます。
@地球近傍天体はこれまでに3万個を超える数が見つかっており、そのうち「潜在的に危険な天体」――地球の公転軌道から約750万km以内に近づく軌道をもち、なおかつ絶対等級が22よりも明るく直径140m以上と推定される、すなわち地球に衝突した際に大惨事を招く危険性がある天体――は約2300個とされる。さらにそのうち、今後100年間に地球に衝突する可能性が無視できない天体は約17個とされています。