米国の軍事情報紙[Defense Industry Daily Mar 08, 2018]によれば、「米国国防安全協力局(DSCA=Defense Security Cooperation Agency)は、日本が要求中のMk 15 ファランクス CIWSの改修キット24基分、価格4,500万ドル(約50億円弱)の売却を承認」、と報じた。これは現在日本の海上自衛隊艦艇が装備しているファランクスBlock 1またはBlock1B Baseline 1システムを、最新のBaseline 2に変更するための装備品、予備部品、マニュアル、ソフトウエア、その他必要な支援など全てを含んでいる。メーカのレイセオン社は、同社のタスコン(Tuscon, Arizona)工場でキットの準備を始める。
最近の中ロ両国の超音速対艦ミサイルの性能向上に対処するため、米国などの海軍艦艇の対空防御システムの性能向上が一層求められるようになってきた。米海軍当局によれば、今後の艦載の対空防御システムは3層構成とするのが望ましいとされる。
すなわち、50 kmから18 kmの高層域をシー・スパロー(RIM-7 SSM=Sea Sparrow)対空ミサイルまたは発展型シー・スパロー(RIM-162 ESSM=Evolved Sea Sparrow)が受け持つ、18 kmから1.8 kmの中層域はファランクス改良型のシーラム(SeaRAM)が担当、その内側/最も自艦に近接した低層域をファランクスCIWSで防御すると云う仕組みである。
低層域対空防御を担当するファランクス [CIWS=close-in weapons system] (シューズ)は、「Mk 15」と呼ばれ米海軍が1980年にゼネラル・ダイナミックス社ポモナ(Pomona)部門の協力で開発したシステムで、その後レイセオン社が引き継ぎ今日に至っている。現在米英両国や日本など16カ国の海軍と沿岸警備隊の艦艇に使われている。2007年2月までに約900基のファランクス・システムが製造され、これに使う機関砲弾は300万発以上が生産された。
ファランクスは、高速で飛来する対艦(対地)ミサイル(ASM)、航空機、無人機、対艦砲弾などを探知、ターミナル段階(terminal phase)で迎撃・破壊するレーダー誘導の機関砲システムである。ファランクスは、探索、検知、脅威度判定、敵データ解析、追跡、射撃、破壊、射撃停止、の一連の動作に必要な装備を一体化した、自己完結型のシステムである。搭載する艦側の支援なしで、自動的に任務を遂行できる。ただし電力の供給は艦側から受ける。
最新型Block 1Bの場合、システム全体の重量は6.2 ton、高さ4.7 m、銃身の上下可動範囲・俯角/仰角は-25度/+85度、左右可動範囲は150度ずつ、機関砲可動速度は116度/秒。有効射程は秘密だが1.8 kmと言われ、最大射程は3.5 km程度と見られる。
類似のシステムとして、中国の[Type 739 CIWS]、ロシアの[AK-630]、オランダの[Goalkeeper]、イタリアの[DARDO]などがあるが、いずれも搭載艦側からの支援が必要であり、作動装備一体化の点でファランクスCIWSが優っている。艦載用として開発、改良されてきたが、最近米陸軍では陸上配備型を開発、配備するようになった。
@ぼちぼち、最新のBaseline 2に切り替わっていると思われます。