中国の海洋進出をけん制する、新たな動きがあった。アメリカとフィリピンが、新たに軍事協定を結んだ。28日午後、日本から始まったアジア4カ国歴訪の最後の訪問国、フィリピンへ到着した、アメリカのオバマ大統領。アメリカとフィリピンは、今回、アメリカ軍のフィリピン駐留に道を開く、新たな軍事協定を結んだ。かつての冷戦時代、アメリカは、アジア太平洋地域における最大の軍事拠点として、もともと植民地だったフィリピンに、クラーク空軍基地など、複数の基地を置いていた。ところが、1991年、ピナトゥボ火山が噴火し、ふもとにあったクラーク空軍基地が使用不能となったことや、フィリピンで大規模な反米運動が発生したことなどから、アメリカ軍は、1992年、フィリピンから完全に撤退した。
今回、新たに締結した軍事協定により、フィリピン軍基地の共同使用などが可能となり、アメリカ軍は、この地で再び、その存在感を示すことになる。その背景には、フィリピンを囲む緊迫の海、南シナ海の今があった。そもそも南シナ海とは、日本のはるか南西に位置する海域。豊かな漁場であるほか、石油や天然ガスなど、豊富な天然資源がある可能性が指摘されている。その南部に浮かぶ南沙諸島については、現在、フィリピンをはじめ、中国やベトナムなど6つの国と地域が、それぞれ「われわれのものだ」と、領有権を主張している。近年は特に、中国が軍事力にものを言わせ、実効支配を強めていることから、さながら「アジアの火薬庫」の様相を呈している。
また、南シナ海の中ほど「スカボロー礁」を中心とする中沙諸島についても、各国や地域が領有権を主張。特に、中国とフィリピンとの間で、激しい領有権争いが続いている。FNNは、2014年1月、中沙諸島スカボロー礁の海域で、フィリピンの漁船に警告を行う、中国の海洋監視船をとらえた映像を入手した。白い船が、フィリピンの漁船に近づいてくると、海面の一部が真っ白になった。中国の船が、放水活動を行った瞬間だった。
東海大学海洋学部の山田吉彦教授は「中国の古いタイプの海洋警備船だと思います。船体に赤い線が引かれているのが特徴です。放水でも警告に従わない場合には、威嚇射撃ということになります。そして次には、船体への射撃ということになってきます」と話した。沖縄県の尖閣諸島をめぐり、中国と緊張関係が続く日本にとっても、決して無視できない事態となっている。
取材班は、この映像を撮影した人物に会いに、フィリピン・ルソン島にある小さな漁村を訪ねた。
この村は、土地を持たない貧しい人が多く、8割の世帯が漁業で生計を立てている。映像を撮影したドゥマナットさんは、妻と子ども3人の5人暮らし。毎月3万円ほどで家族を養うドゥマナットさんにとって、漁は、生きていくための大事な糧だと話す。
ドゥマナットさんは「中国の船は、わたしたちの船に衝突するほど近づいてきました。放水は、6分間続きました」と語った。
ドゥマナットさんが中国船と遭遇したスカボロー礁周辺は、水産資源が豊かな漁場。
もともとフィリピンが実効支配していたが、2012年7月、中国はこの環礁を含む海域を、「海南省三沙市」とすることを一方的に宣言した。
2013年11月、FNNの取材班が、スカボロー礁に近づいた時にも、中国の監視船が近づいてきて、「ここは中国管轄の海域だ。すぐに退去しろ」と警告すると、30分ほど取材船を追いかけたあと、離れていった。今後の漁について、ドゥマナットさんは「(今後もスカボロー礁へ行く?)状況次第だが、行かなければならない」と話した。こうした中国による南シナ海進出の動きは、アメリカ軍がフィリピンから撤退したあとに出てきたもの。今回、アメリカとフィリピンが新しい軍事協定を結んだことは、海洋進出を強引に進める中国を、けん制する狙いがあるとみられる。東海大学海洋学部の山田吉彦教授は「アジア全体として、中国を交渉のテーブルに引きずり出すような形で、海の秩序づくりを進めていくと思う」と話した。
@日本では映像としてなかなか見られない、フィリピンの小さな漁船相手に傍若無人な攻撃を行うシナ海警の映像です。
調子こいているシナには、必ず一矢報いてやりましょう。