同報告書は毎年一度、発表され、議会に送られるが、総括として中国がなお「高度の外国製兵器の取得、防衛関連科学技術への急速度の投資、軍隊の組織的、戦略的な改革などによって地域制圧の軍事能力や核、宇宙、サイバー戦争の軍事技術を発展させ、アジア地域の軍事バランスを変えて、アジア太平洋地域をも越える影響を発揮している」と警告している。
具体的には、米国本土にも届く戦略核戦力で中国が2006年以来、CSS4、DF31などの大陸間弾道ミサイル(ICBM)計約20基を新配備したほか、射程のやや短いCSS3を約20基、1隻に弾道ミサイル(SLBM)を12基搭載した「夏」級潜水艦を新配備するなど、世界でも唯一、戦略核ミサイルの増強を進めていることを指摘。また、西太平洋地域で水上艦、潜水艦、航空機を増強し、対艦攻撃ミサイルや魚雷の強化で地域制圧の能力を高め、潜在敵の側の航空母艦までを抑止する能力をつけ始め、東シナ海での尖閣諸島をめぐる日本との領土紛争への対処能力をも高めたことなどを強調した。
報告書によると、中国は台湾への攻撃、攻略の能力を依然として高め、台湾海峡沿いの福建省などでは台湾に届く短距離弾道ミサイルの増強を継続。2008年9月の時点で合計1150基にも達して、いまなお毎年約100基のペースで新配備を続けている。
報告書は台湾の政権が変わり、独立を直接には目指さない国民党が政権を握って、中国との政治的な緊張が和らいだのに増強がなお続いている点に懸念を示し、「中国が台湾の独立を阻止するために攻略の軍事能力をつけることは理解できるが、現在の増強は台湾をはるかに越えた有事までをも想定しているようにみえる」と指摘した。
一方で、中国海軍が航空母艦を保有する意思を公的に表明し、旧ソ連から購入した旧式空母を活用し自国製の建造を目指す方針を進めていることを伝えている。パイロット50人が空母艦載機の操縦訓練を受け始めたことも記している。
また、報告書は中国の人民解放軍の兵器装備や戦略作戦などがほとんど秘密にされ、透明性に欠ける点を批判的に取り上げ、国際情勢を不安定にする主要因だと断じている。中国政府が公式に発表する国防費は08年度分は約600億ドルで前年より17・6%の増加だが、外国からの兵器購入や航空宇宙での戦争準備などの経費はそこには含まれず、実際は1050億~1500億ドルにも達すると米側はみている。
@営利追求しか頭にない経済界の主導によって人的交流なども含め、なんの危機意識も持たない親中政策が推し進められているが、片手で握手しながらもう片方の手には戦略核が握られている事を決して忘れてはならない。莫大な国防費を毎年惜しみなくつぎ込み、事ある毎に内政干渉を繰り返すシナは友好国たりえない。北の弾道ミサイル発射に関して米国防長官ゲーツは、国務省と違って「アメリカが標的でなければ迎撃せず」などと軽くかわしているが、我々が訴えてきた通り、いざとなれば日米同盟国の絆なんてまったく意味をなさない。ソマリアの海賊対策と同じような意識を対中戦略の中軸として確立し、尖閣諸島を早期実効支配し、シナに付け入る隙を与えない独自の国防体制の強化を急ぐ事だ。
(写真は、シナ最新鋭潜水艦「晋」型弾道ミサイル搭載原子力潜水艦)