6日午後2時半公演を、宝塚バウホールで観た。
月組『バーボンストリート・ブルース』、B班の公演。
同じ演目をA班B班と二種類のキャストで上演するという、
『競わせる』意図がはっきり打ち出された公演だったが、
前半の上演期間を宛てられていたA班は全く見る機会がなく、
我が家はCS未加入のため情報もないので、
残念だが比較において何かコメントすることはできない。
とりあえず、B班単独の観劇感想のみ。
B班の主演は北翔海莉(ほくしょう・かいり)。
私は2002年に月組『ガイズ・アンド・ドールズ』を観たときから
北翔海莉には毎回、注目するようになった。
彼女は、声が良い。スタイルも良い。
それに、自分が客席からどう見えるかを視野に入れるという、
『見せる』意識を持っている点がなかなかいいと思う。
その良さは今回のジェフ役でもよく活かされていて、
彼女の表現は後ろの観客まで意識したものになっていたし、
ソロナンバーも全く危なげなく聴かせてくれ、
また、立ち回りの動きや迫力もなかなか立派だったと思う。
やんちゃでももっと天真爛漫な役のほうが似合っていたのでは、
と思うので、今回の不良少年役はどうかなと思う面もあったが、
特に破綻もなく、安心して観ていられたのはとても良かった。
ただ、強いて言えば「巧すぎる」のが彼女の場合、
これからはかえって足かせになるかな、とも感じた。
宝塚では、宝塚歌劇でしか許されないような独特のムードや、
男役だからこその強烈な魅力が前面に出るのがトップなのだ。
「音程表現が正確である」とか「芝居巧者である」等の技術点は、
あっても良いがそれが最大のウリになってはいけないのではないか。
歌・ダンス・芝居のうち、どれかひとつだけ得意で他は苦手、
というのならいいが、北翔海莉は全部、楽々とこなしてしまうのが、
私にはなんとも言い様のない不安材料に見えてしまった。
芝居は正塚晴彦先生の脚本で、もし宝塚初見間もない時期だったら、
「宝塚にこんなのもあったのか!お洒落!!」
と物凄く感動したかもしれないが、私はもう、正塚作品は見すぎた。
ので、『前にも、どっかであったな~~~~・・・』
というエピソードがあちこちで目について、少々だれてしまった。
しかし、深刻な中にも唐突な笑いがあったり、
登場人物の誰もが決して「悪役」でなく限りなく人間的である点など、
正塚芝居らしいリアリティがあって、後味が良かったのも本当だ。
主演以外では私はなんといっても、嘉月絵理の見事さに敬服した。
彼女は今回、主人公の少年を導く刑事役と、マフィアのボスと、
ヒロイン(夢咲ねね)が尊敬する建築家、の三役を務めている。
このいずれもが物凄く魅力的で、演じ分けの妙が見事なのと、
もうひとつ、出番を待って舞台脇にいるときの腰掛けた姿まで、
嘉月は一分の隙もない最高級の男役だったのだ。感涙ものだった
(演出として、舞台両脇に椅子やカウンター席がしつらえてあって、
出番待ちのキャストはそこに座っているという仕組み)。
嘉月絵理には若手の頃から、綺麗な男役だな、歌も歌えるんだな、
等々となんとなく注目していたものだったが、
2000年の月組公演『LUNA~月の伝言』のドクトル役が、
私の中での決定打になった。
こういう、磨き抜かれた男役にこれからも活躍の場がありますよう、
そしてそれに相応しい高い評価が(劇団からも観客からも)
惜しみなく与えられますように。
青樹泉は大活躍だったし、事実、綺麗で、存在感もあったが、
今回の役だったら、もっとハメを外しても良かったかもしれない。
それとも、彼女なりに意図するところがあって、
「ワルだけど実は真面目な良いヒト」が見えるように演じたのかな?
天野ほたるは実に良い雰囲気だった。女優!だった(^_^;。
夢咲ねねも好演だったと思う。正塚芝居の悪女でない女性は、
なかなか演じにくいキャラが多いと思うのだが、
登場シーンから印象的に見せてくれて、私はとても気に入った。
あと、チョイ役だが姫咲ひなののオモロい笑顔に惹かれてしまった。
最後のほうの看護師役など、本当にちょっとだけの出番なのだが、
あの可愛い目つき(^_^;、個性的な「にぱっ」とした笑顔にウケた。
以上、私には珍しく、和央ようかに全然関係ない若手芝居を観たが、
久々で、なかなか楽しかった。
こういうものを、もっと日常的に観られるようになると良いのだが(^_^;。
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