午後、佐伯区からの帰りにバスに乗っていたら、
私の数席前に座っていた中年女性が、
どうやら背中が痒い様子で、さかんに手を後ろにまわして
もぞもぞと難儀なさっているのが見えた。
私の、どうでもいい特技のひとつに、
『背中じゅうどこでも自分の手で掻ける』
というのがあって(全く人様のためには役立たない特技だ)、
私は自分の背中だったら届かない場所がないので、
自在に存分に自分で掻けるのだが、
目の前の女性は、どうも、そういう特技は持たない人らしかった。
彼女はしばらく、もそもそ、もぞもぞと動き続けた挙げ句、
おもむろに、持っていた日傘を振り上げると、
後ろクビの襟のところから、服の中に日傘の先を突っ込んで、
ごしごし、ごしごし、と掻き始めた(O_O)。
まさに、日傘を孫の手の代わりに使用した訳だ。
もしもし。バスの中ですよ奥さん。
彼女はしばらく日傘で背中を掻いたあと、
得心したのか、傘を元通り抜いて、静かになり、やがて、
JR西広島駅前で、何事もなかったようにバスを降りて行った。
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