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ランシモ

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ぼっけえきょうてえ、読書

2008-05-15 20:29:41 | 本と雑誌

著者は岩井志麻子さん

岩井さんは岡山県出身、この文庫本には「ぼっけえ、きょうてえ」「密告箱」「あまぞわい」「依って件の如し」の短編4作が収録されている。

すべて、出身の岡山県の言い伝えが絡んでいて、時代背景を戦前あたりにおいている。

岡山の山奥だったり瀬戸内海だったりする設定が、くらーく貧しい人々が感じている暗部に抱いている恐怖を、うまく書き込んでいる。

暗部は文字ドウリ暗がりであったり、見てはいけない約束事、心の闇であったりするのだが、、、。

すばらしく面白い恐怖小説があるものです!日本の女流作家バンザイですね。

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「ぼっけえ、きょうてえ」は岡山弁ですごくこわいの意。女郎を語り部として、彼女自身の貧しいがための怖い半生を書いている。最後に彼女の姉と言うのが判明するが、それは彼女の頭髪の中にいて、つまり頭の左側に腫れ物のように、もうひとつの人面蒼だった。目も鼻も口もあるから双子と言って言いかわからないが、それが頭の左側に別の生き物のように生きていた。

昔々江戸時代頃には、いろんな奇形があり、おそらく近親相姦が多かったから、文献には数多くの例が書かれている。

 

「密告箱」は明治まで、日本でもしばし流行ったコレラのお話し。コレラにおびえる村人達なのだが、本当に怖いのは優しい言葉をいっけん話す身近な人、という落ちでした。

主人公の男は村役場に勤めるが、コレラ対策のため、村を一軒一軒まわる因果な役目。密告箱はコレラにかかっていそうな人を密告できるように匿名の箱です。その密告箱を開けるのが主人公の役目。当時コレラは今の癌以上に恐ろしく、死確実な恐怖の伝染病でした。

狭い村社会で嫌な仕事を任されているが、人の思いは今も昔も変わらず男女の中と言うのができてくる。つい村はずれの巫女さんとねんごろになり、彼には妻がいたが気がつかないようす。しかし、、、良くできた妻は気がつかないふりをしていたが、いつの頃からか気がついた。それは、家族に出す食事は良ーーく火が通ったものしか出さなかったが、主人公の彼には「暑いから冷ご飯にしておきましたと、、、」。コレラが蔓延している地域では、食べ物は良く火を通したもの、熱湯で煮沸した用具で食べるのが安全でしょう、口径伝染病なんだから。

コレラの出た家の下流の川で魚を取っている、妻をついに主人公は目撃する、、、コレラ菌腹いっぱいのあの魚は誰に食わせるのか、、、。

思わず私は、今年の年初めに、富ヶ谷であった夫バラバラ殺人事件を思い浮かべました。会社では有能な会社員、家に戻ると暴力を奮う男、妻の言い分と夫側の言い分はあるだろうけどね、、、。

おおかた暴力を奮われるのが女性の側、それで殺したくなるぐらいで実際に手を下すのは、本当に少ないだろうが、小説の中の妻のように心の底に殺意を抱くのは良くあるんじゃないかしら。男はぼーとなんでお前が殺意を持っているんだ?と、、、富ヶ谷の亭主の最後の言葉がそうであったらしい。

 

「あまぞわい」は瀬戸内の島に残るいわれ。そわいと言うのは潮が引いた時にだけ出る岩礁のこと。あまぞわいから泣き声が聞こえてくるのだが、男を恨んでか、男を恋しがってか、、、わからんが、男いうもんは、どねぇ惚れぬいた女でも、いったん飽きたら本当に無慈悲にすててしまうんじゃで、、、。本当はこの短編がいちばんゾットしたが、うまくその怖さを私には表現できない。

私は広島の山奥が本籍だった、岡山弁はちょっと近いな、、、だけど方言は広島弁はもっと強いじゃけん、、、。

 

「依って件の如し」は中国山脈の山深い貧村のはなし。やはり、この話も落ちは近親相姦が判明しておわる。貧農は布団などに寝たことがなく、牛と一緒にワラに包まって寝ていたと言う。貧しさは、日本でもつい最近まであったということ。そんな生活から脱却でき、白いご飯を食べれるようになったのも戦後です。想像できないだろうなーー若い人には、、、。妄想と言い伝えと現実がごっちゃになった生活、昔の山間部の貧農。牛が人の言葉をぼそっと話したり、それが実際に聞こえたんじゃないかな、昔の子供は!

 

今現在だって腹いっぱい飽食できるのは、先進国の限られた人だけ。同じ時代、時に生きていたって、そんな差がある。食べるものがないだけじゃなく、人権がない国だってある。人が人じゃないところだってアルということ、、、。

ミャンマーや中国の災害、、、ハリケーンや地震は天災だけど、災害を大きくしたのは人と国家でしょう。同時代に生きているアジアの人達だもの、私もさっそくユニセフに場所指定の寄付をしました。

この本、、、怖く面白い本だったけど、現実のほうがもっと怖かったりしてね、、、。

古本屋さんで300円で購入、意外にいい値段です。

イザベラバードの日本紀行㊤ 1880年代にイギリス人女流冒険家&写真家&作家さんが1人で日本旅行した 

http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/9c4b8150096cccbbba33fbc2711c3c2e

イザベラバードの日本紀行㊦

http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/119fb8e45d2c7563144f348f6c65d6bb

イザベラバードの中国奥地紀行㊤ 1880年代、ちょうど日清戦争が終わった頃の一人旅です

http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7c1d52aa204ccb6975824f020bdcc504

イザベラバードの中国奥地紀行㊦

http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/96ac13d80f8fb7067ac229984ae53ce1

イザベラバードの朝鮮紀行 日本、中国、ロシアに挟まれた当時の朝鮮

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/5f2f1b42636aa986b44cb7594e14d909

ホテルローヤル 桜木紫乃

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7336ab8978fa67681d133f096c2f2390

すばらしい新世界 バックスリー 1932年に発行された破壊的懐疑主義空想物語

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/24ecbe9335f0cce6345980ca1d2c1ad7

わたしを離さないで カズオ・イシグロ 代表作のひとつ 2017年ノーベル文学賞を受賞

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/5f171addb3dc788c75939e82d34be018

夜と霧 ヴィクトールEフランクル 第二次世界大戦時のアウシュビッツでの生活

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/88d701444d03e880344237c875562569

憑神 浅田次郎 貧乏神、疫病神、死神が次々にやってくる、ファンタジー小説

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/9a8f3bea2f8fc5bcdd0be1bb111859ae

漂流教室 楳図かずお 極限状態に設定した世界での人の本性を描く

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/b9d8b6217b3a0cce2bc26ad9c2417a8d

風の影 カルロス・ルイス・サフォン 舞台は第二次世界大戦直前のスペイン、フランコ政権時だった

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/544e11da177f9b40b4d6598b3e0ab434

容疑者Xの献身 東野圭吾 大学時代の天才が時を経て再会、数学者の犯罪を物理学者が解いていく

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/775ba2cbeb9bbf089274adef1ebef503 

天使と悪魔 ダンブラウン この後書かれた、ダ・ヴィンチ・コードが世界的ベストセラーになった

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/096cf2b75dac6343a24b8817b6eca9c4

イリュージョン リチャード・バック かもめのジョナサンで知られている作家

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/cb318b4e1618aff6c5ad58fa4252ae7a

注文の多い料理店 宮沢賢治 9つの短編小説 メルヘンと思いきや、結構残酷です

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/13a6cb97ac223df13f691ab46c8510b6

椅子が怖い 夏樹静子 作家さん自身の腰痛闘病記

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7d3621b6f0b47287f79d96c5e0712442

シドニーへ彼女たちの42195m   増島みどり 高橋なおこ、山口、市橋、弘山、小幡たちのドキュメント

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/d087d449a9d42610cbc98acc203230a1

陰獣、孤島の鬼 江戸川乱歩 登場人物が奇形や変人ばかり

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/410303ba722ed3d9e0893b5b44f769b1

赤い月 なかにし礼 満州で日本が何をやったか、、、自叙伝でしょう

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/229d752a2eae9ba818b79223e1ed0303

カッパが歩いたインド 妹尾河童 イラストで描いたインドです 素晴らしく緻密で面白い

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https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/d49f76c0fc8bf08a643676f2ef03733a

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6 コメント

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以前、読んだ覚えはあるのですが、思い出しました... (くーたろう)
2008-05-16 02:05:24
以前、読んだ覚えはあるのですが、思い出しました。ありがとうございます。

飽食といえば、今自分が生きているということは、誰かが犠牲になっている。何人かの命と引き換えに食物を勝ち取り生きているんだと考えてます。

仕方ないのかもしれないです。でも、少しでも恵まれている分は、還元しなきゃと。私も(偽善かもしれないけど)寄付します。
返信する
貧農の子だった実母は養子に出されたひとりでした... (びとっち)
2008-05-16 07:59:01
貧農の子だった実母は養子に出されたひとりでした。つい先代のお話です。
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くーたろうさん (shimo)
2008-05-16 10:00:28
くーたろうさん
もう読まれたんですか。
人が食物連鎖の頂点にいるんだもの、、その中でも地域の差が大きいでしょ、ニュースを見るたびに日本に生まれてホットします。
返信する
びとっちさん (shimo)
2008-05-16 10:14:49
びとっちさん
私の親世代は違うけど、広島生まれの父の両親はどちらも養子だった。中国山地のどん詰まりに家がありました、村から山へ登り、隣のへ抜ける出口村だったんです。しかも家は最奥だった。そこへに養子に来た2人はどんな思いだったろう。特に爺と私の父は山から逃げることしか考えていなかった、、、。
爺は何度も試みたがダメで、父の代になって漸く東京に手がかりを得たんです。
婆は運命に任せていた所があって、ある意味で清かった。
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この本、私も以前読みました。 (まりも)
2008-05-16 22:17:20
この本、私も以前読みました。

中国地方は独特の雰囲気があります。
岡山県といえば八ツ墓村の舞台でもありましたね。
私は元々関東人なのですが、ダンナが鳥取出身で、ダンナの故郷に行くと、関東や関西とは全然違う雰囲気を感じます。
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まりもさん (shimo)
2008-05-17 10:14:11
まりもさん
中国地方はふるーーーい歴史があるから。それも瀬戸内海は古代から交通の要所だったし、内海なのに表日本だったんですよね。
鳥取の因幡の白兎や、、、出雲にしても、けっこう悲しい民話が残っています。
最近はそれほど感じないけど、むかし中国自動車道ができた時、京都から先へ行くと民家が変わるのに気がつきました。古ーーい感じになったんです。歴史があるというか、、、何と言うか、、。
私の広島の出口村にあった家は朽ちて、マムシの原っぱになっていました。近寄っちゃダメだと、、、。
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