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中国奥地紀行、イザベラ・バード(1)

2016-02-24 19:37:44 | 本と雑誌

イザベラバードの日本奥地紀行が面白かったので、中国版も読み始めました。

時期は1895年から1896年にかけて。揚子江をさかのぼり、四川省を一周して重慶から戻ってきた、河川の大紀行です。

1880年代というと、日本の明治維新が1867年で、それからしばらくして産業革命になった頃です。

日清戦争は1894年~1895年、日露戦争は1904年~1905年と頭に入れておきたい。

日清戦争は朝鮮と遼東半島の覇権を巡って中国と争い、また日露戦争は満州と朝鮮を巡って争った。

だから、イザベラバードが中国奥地紀行したときは、日本との戦いのすぐ後だということ。日清戦争は、産業革命で勢いのあった日本が、中国の朝鮮支配を巡って行われた。朝鮮はずっと中国の属国だった。

イザベラ・バードの著書には朝鮮紀行があり読むのが楽しみです。

上海から鎮江、南京、九江、漢口、漢陽、荊州、万県などをたどり、そこから陸路にかえて四川の奥深くまで入っていった。

揚子江をさかのぼるときは、船をチャーターした。

揚子江はところどころ極めて危険な瀬がいくつも連続して、年間に500隻が難破するような川だった。イザベラは目の前で大きなジャンク船が岩に乗り上げ、乗客もろとも爆発したように粉々になったのを目撃したという。

イザベラがチャーターした小船。

船長さんが他の乗客を勝手に載せて30人にもなることがあったという。普通だとチャーターした船の権利は借主のはずだが、発展途上国というか昔だし現在の西洋の感覚とはずいぶん違う。

揚子江はこの流域に住む1億8000万人の重要な交通手段で、というより唯一の交通手段だった。いわば当時の経済区の物流の大動脈だった。

実際、この流域が北京よりも中国の最重要経済地域であった。

私の会社に広東省の者がいて、現在はここの茶館は飲茶レストランになっているという。

上海は今も昔も中国の大商業都市だった。イザベラの記によると、日本と比べているわけじゃありませんが、揚子江の流域の繁栄は日本よりはるかに進んでいたようだ。日本は日清戦争で海戦で偶然勝っただけで経済力は中国の方が上だった。でも戦いというのは士気や戦術で結果は違います。これが体力勝負の持久戦になったら、対中国も対ロシアも違ったものになった。限られた戦術で勝っただけだったのだろう。しかも日本と清国の間に立って調停してくれたのが英国やロシアなど欲の深い国々だった。日本か中国かどちらかが勝ちすぎて意気揚々になっても、諸外国は困ったのだろう。

揚子江も中ほどの沙市まで登っていくと、そこは運河が張り巡らされた穀倉地帯。

1億8000万人が当時暮らせたバックボーンが肥沃なこの辺りの土地なのでしょう。

運河と運河の高低差は、このような滑り台のような仕組みで連絡している。

下流から上流へは100人単位の人力で引き上げます。コロもないから相当な人数を集めたらしい。

漢口、漢陽、武昌と合わせて武漢三鎮と呼ばれて、同時代の東京を3つ合わせたぐらいの人口や繁栄だった。

これほど繁栄した地域が河川の港だったのは、揚子江は海以上の恵みがあったのだろう。 

こんな旧市街は、今の中国には残っていないそうだ。

今年の年初に訪れた台湾には、このような旧市街(今で見ると)が残っていた。

中国人が揚子江と呼ぶのは潮水が見られる320kmだけだそうで、上流では単に江とか長江、大官江と呼ばれる。

この橋のあった万県は1000kmほどの遡ったところ。古くから石積みの技術があったのだろう。

日本の石工や織物、鉄器、紙、文化の全てが中国から持たらせられたと言って過言じゃない。

中国の橋には屋根がかかったものがよく見られる。

イタリアのフィレンツェにかかるヴェッキオ橋のような4層の石橋はなさそうだが、屋根付きは当たり前のようにあったのかも。

考えてみると、イタリアのヴェッキオ橋は現存するものが1345年のものだから、もっと以前からあったのは確かでしょう。イタリアは日本と比べると、、、1000年近い文化の差があった。人の交流が始まると、世界の文化度の差はあっという間に減少してきた。ローマや中国は5000年の歴史があるから、邪馬台国どころの話じゃない!

中国の屋根付き橋は木造だから、それほど長くは持たないだろう。

 

イザベラの旅は続き、西国を一周して重慶に戻り、揚子江をまた船で戻ってきた。2巻目を読むのが楽しみです。イザベラは日本紀行、朝鮮紀行、中国紀行と東アジアの未開の地(西洋人にとって)を一人で飛び回っていた。!

 

最後に、イザベラは西洋の列強が中国を分割したが、もしかすると西洋より高度な文明を持った中国を蹂躙したのではと危惧している。

中国奥地紀行2
http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/96ac13d80f8fb7067ac229984ae53ce1

イザベラ・バード日本紀行(下巻)

http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/119fb8e45d2c7563144f348f6c65d6bb

イザベラ・バード日本紀行(上巻)

http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/9c4b8150096cccbbba33fbc2711c3c2e

イザベラバードの朝鮮紀行

http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/5f2f1b42636aa986b44cb7594e14d909

イザベラバードのハワイ紀行

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7ac626dd5a29152ba319ad10d16b2ec3

 

九曲橋は現在は豫園と呼ばれて観光地になっている。

見違えるようにライトアップされています!

ホテルローヤル 桜木紫乃

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7336ab8978fa67681d133f096c2f2390

すばらしい新世界 バックスリー 1932年に発行された破壊的懐疑主義空想物語

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/24ecbe9335f0cce6345980ca1d2c1ad7

わたしを離さないで カズオ・イシグロ 代表作のひとつ 2017年ノーベル文学賞を受賞

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/5f171addb3dc788c75939e82d34be018

夜と霧 ヴィクトールEフランクル 第二次世界大戦時のアウシュビッツでの生活

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/88d701444d03e880344237c875562569

憑神 浅田次郎 貧乏神、疫病神、死神が次々にやってくる、ファンタジー小説

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/9a8f3bea2f8fc5bcdd0be1bb111859ae

漂流教室 楳図かずお 極限状態に設定した世界での人の本性を描く

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/b9d8b6217b3a0cce2bc26ad9c2417a8d

風の影 カルロス・ルイス・サフォン 舞台は第二次世界大戦直前のスペイン、フランコ政権時だった

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/544e11da177f9b40b4d6598b3e0ab434

容疑者Xの献身 東野圭吾 大学時代の天才が時を経て再会、数学者の犯罪を物理学者が解いていく

https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/775ba2cbeb9bbf089274adef1ebef503 

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2 コメント

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歴史今昔 (KIM)
2016-02-26 09:02:57
shimoさん

今朝、津田町からウォーキングしながら国分寺駅へ向かう道中、珍しい梅を見つけました。白梅と紅梅が同じ樹木に咲いてたんです。紅梅というよりも、桃梅。隣に紅梅があるようで、交配でできたのか?驚きました。ソフトクリームなら、バニラとチョコの「ミックス」でしょうか?
上海の豫園の写真を見て、今の写真と見比べてました。以前、父が単身赴任中にお邪魔しましたが、縁日のようでした。
中国などでは屋根つき橋が多いのでしょうか?東南アジアにはありそうな気がします。
日曜日は東京マラソンですね。https://www.google.co.jp/imgres?imgurl=http://www.his-j.com/tyo/gallery/images/MIX44066.jpg&imgrefurl=http://www.his-j.com/tyo/gallery/yuyuan.html&h=3280&w=4100&tbnid=05zSQYiT2VxREM:&tbnh=160&tbnw=199&docid=qxAQ1Yc8w4H-eM&itg=1&usg=__AyJiZJ4gOC3FEEHY0-bXiiwKNeI=#h=3280&imgdii=05zSQYiT2VxREM%3A%3B05zSQYiT2VxREM%3A%3B4Gy-pYlSPMDqWM%3A&itg=1&tbnh=160&tbnw=199&w=4100
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Unknown (shimo)
2016-02-26 18:46:56
KIMさん
上海の茶館は今でも使われているところがすごい。写真では、いくぶん大きくなった気がします。まわりが建て込んだのかな?小籠包のお店になっているようですね。
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