ランシモ

ランニングからツチノコカメラや時事まで興味あるすべて

死の泉、読書

2008-05-10 13:52:42 | 本と雑誌

著者は皆川博子さん

第二次大戦下のドイツの狂気を描いたもの。

080510s1 ドイツは当時から医学や化学、工業が日本の比ではなかった。

どれもが進んだ研究がなされ、ナチの下では狂気と言っていいくらいの研究がなされていた。

主人公マルガレーテは私生児をナチの私設の産院で産む。そこの医師クラウスは、双子を使って長寿を研究していた。

双子の胴体を接合して、双頭の体と4本の足。ことごとく失敗していたが、戦時下なんでナチの権力は絶対で、検体にはこと困らなかった。失敗作は標本として液体に入れられて、グロテスクな瓶詰めになり施設に置かれていた。

その研究と別に、クラウスはボーイソプラノにぞっこんで、普通は変声する声帯をそのままとどめるため、ある手術を少年にする。つまり大人の男にさせないためにアル物を摘出してしまうのだ。

その当時の日本にも、むろん今の日本にもないような甘美でグロテスクな趣味が当時のドイツにはあった。それは貴族社会があったからで、果てしなく特殊な性癖でも突き詰めていく世界があった。する者とされる者が、完璧に立場がわかれている。

ロマ、ツィゴイネル、ツィンガリ、ヒターノと言って何を意味するかわからないでしょう?すべて流浪の民ジプシーを意味します。

ナチの民族浄化主義とフランスの民主化、それと社会や国境に組み込まれないジプシーたちのせめぎあい。ヨーロッパは日本のような島国と違い、人種と生活様式、考え方がちがう者の集まり。それにくわえて同じ人種の中でも貴族なんてものがあるので、よけいに複雑怪奇。

第二次大戦の末期には、アルプスの山の中をくりぬいた要塞、岩塩の採石場を利用したらしいが、フェラー(ヒットラー提督)の居城を作っていた。そこを舞台にした物語です。

当時のドイツは我々日本人は知らないことが多く、日本では単に三国同盟などと浮かれていたが、アメリカ、イギリス側の連合軍は最大の敵をドイツとみなしていました。その理由は、日本になかった化学工業力、特にロケット&ジェットエンジンをすでに兵器としてドイツは生産していたから。終戦後(どう戦うではなく、勝利した後どう統治するか)にドイツの頭脳をロシアに取られるのではないかと戦々恐々。結局、ナチ本流のドイツの頭脳はアメリカとロシアに分割されて、戦犯を免除されて両大国でエリート達は活躍していった。

私は生まれがそのあたりなので、幼少の頃に戦記物はずいぶん読んだが、当時のドイツの話は全くと言っていいほど読んだ記憶がない。

知られざる、壮大な話でした。

ブックオフで105円で購入。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 平日の陣馬山 | トップ | Nikon FE2 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

本と雑誌」カテゴリの最新記事