旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

昭和な町並みと銀の円盤と醤油焼きそばと 西武山口線・狭山線を完乗!

2024-07-20 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

ゴルフ場の南辺を舐めるように、最大勾配50‰をゴムタイヤを履いた「レオライナー」が下ってきた。
全幅2,380㎜の車両はまるで遊園地の乗り物の様だけど、案内軌条式鉄道といって法律上はれっきとした鉄道だ。

レンガ造りの壁面とドーム屋根、ネオルネッサンス様式の取水塔が多摩湖に映る。
山口線はこの堰堤直下にある多摩湖駅を起点に、西武園ゆうえんちと西武球場を結んで走っている。

多摩湖駅を出て1分、短いトンネルを潜ると西武園ゆうえんちが見えてくる。
電車は多摩湖に沿って走っているはずだけど、水源を守る保安林が繁っているので湖面をみることはない。

西武ゆうえんち駅前には昭和の町並みが広がっている。夕日が丘商店街というらしい。
「活気・元気・熱気がほとばしる、あの日あの頃の昭和」だって、昭和は遠くになりにけりだね。

若い女の子がオート三輪と写真を撮っている。SNSにあげる映える一枚になるのだろうか。
出掛ける前にはこの商店街の大衆食堂で一杯やろうと思ったけど、ここ、有料エリアなんだね。先を急ごう。

西武園ゆうえんち駅を出たレオライナーは、グリーンを右手に見ながら東中峯信号場で上り下りが交換する。
いつしか軌道は下り勾配に変わり、夏の太陽を照り返す巨大な円盤が見えてくると西武球場前駅だ。

躍動感溢れる巨大なライオン像が吠えるベルーナドームには、すでに多くのファンが詰めかけている。
千葉ロッテを迎えてのゲームは18:00試合開始のはずだけど、すでに熱気いっぱいのボールパークなのだ。

旅の後半は狭山線に乗って、西武球場前駅から狭山丘陵を北に向かって降りていく。
1番線に迎えにきてくれた20000系は、エレガントブルーで装った堂々の10両編成。

当然のことながら、この駅の装飾は若き獅子たちに埋め尽くされている。
そしてこの時間帯、到着する列車は10両編成いっぱいのファンを吐き出し、乗り込む乗客は数えるほどだ。

エレガントブルーの10両編成は、35‰という鉄道としては結構な急勾配を慎重に降りていく。
唯一の途中駅である下山口で申し訳程度の乗降があって、やがて大きな左カーブを切って西所沢に終着する。

池袋線にひと駅乗車して所沢、新しく拓けつつある東口を降りると、昼呑みの大衆居酒屋がある。
大衆居酒屋といってもモダンな作りで、この時間帯、草野球を終えたオヤジ達のグループが盛り上がっている。
およそ似つかわしくないお嬢さんが一人で生ビールを呷っていたり、なんだか混沌としている。

それでは負けじと呑み人も生ビール、冷凍庫から登場したキンキンのジョッキーに、赤いダルマがカワイイ。
暑いときはシンプルに “冷奴” がいい。冷えた豆腐を箸で崩しているうちに、汗がひいていく。

続くアテはサッパリと “豚肉の梅照り焼き”、二杯目はHAPPY HOURのメニューから “樽ハイ倶楽部” を。
このアテは案外美味しい。家呑みのメニューに加えよう。ひょっとしてボクでも出来そうだ。

三杯目の “薫香ハイボール” を呑みながら、〆は “ところざわ醤油焼きそば” をいただく。
これっ醤油メーカーと製麺会社の社長の仕掛けた新しいB級グルメらしい。なるほどね。
ニンニクやら生姜が効いた麺に白髪ネギを散らして、これもサッパリした一品、なかなか美味しい。

真夏日の呑み鉄散歩、少しだけ日焼けした顔が昼呑みの痕跡を消して、さあ夕立が来る前に帰ろう。

西武鉄道 山口線 多摩湖~西武球場前 2.8km 完乗
西武鉄道 狭山線 西武球場前~西所沢 4.2km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
メイン・テーマ /  薬師丸ひろ子 1984


水曜日は家呑み派「葵鶴 純米吟醸 純」

2024-07-17 | 日記・エッセイ・コラム

小さなセラーの隅っこから、深いブルーのボトルが出てきた。これ、兵庫県三木の “葵鶴”。
神戸電鉄粟生線で呑んだ時に仕込んだ酒だから、1年以上寝かせてしまった。ワインじゃあるまいし大丈夫?
羽柴軍が別所長治を包囲した三木合戦の舞台となったこの辺りは、山田錦の日本一の生産地だ。

豚バラの良いところが冷蔵庫にあったから、豆腐としめじと水菜で “豚バラ鍋” にしてもらった。
夏とは言え、鍋ものは手軽でヘルシーで尚且つ日本酒に相性がいい。
もう一回り小さい土鍋では “とうもろこしご飯” が出来上がっていた。
バターを入れずに塩胡椒だけで仕上げると、これもなかなか酒にあう一品になる。

柔らかな香りでさらりとした呑み口の純米吟醸は、特A地区の山田錦100%で醸した「GIはりま認定酒」。
淡麗な酒を差しつ差されつ、鍋をつつきながら、ふたりだけの家呑みもなかなか良いものだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
愛情物語 / 原田知世  1984


人生のそばから 分上野藪かねこ@浦和

2024-07-15 | 呑み鉄放浪記

浦和駅から歩いて10分と少々、閑静な住宅街に隠れるように、その店は柔らかく行燈を点している。
場所がらフラリと訪ねる店ではないので、今宵めずらしく、あらかじめ席を予約して出かけた。
その店は、ゆるりと蕎麦前を愉しめる、雰囲気のいい空間を用意してくれる。

シャンパンゴールドに煌めく “ハートランド” で始める。お通しの “そば味噌” がなかなかいい。
県産平飼いの “玉子焼き”、先ずはそのまま食べて甘さを感じて、あとはおろし醤油でいただく。
それから “フルーツトマトとタコのおろしポン酢”、さっぱりと夏の一品だ。日本酒が欲しくなってきたね。

爽やかな空色のラベルは、白隠政宗の “誉富士 純米酒 夏”、ちゃんと夏酒を揃えてくれるのが嬉しい。
さっぱりドライに仕上がった食中酒に、アテは “賀茂茄子と香り豚のみぞれ煮” が美味しい。

アスパラ、谷中生姜、新玉葱、新ごぼう、ヤングコーンを並べて “夏野菜の天ぷら” は抹茶塩で。
山形の “米鶴” は純米吟醸 直汲み無濾過生、出羽燦々で醸した華やかな酒、これは夏野菜に合うね。

頃合いで、〆の “辛味大根おろしそば” が登場する。
薄い紫をした(かなりの)辛味大根をそばの上に盛ったら、それを全体に流すように汁をぶっかける。
おっかなびっくり、それでも大胆に箸でつかんでズズッと啜る。かっ辛い、でも堪らない。
夏酒に夏のアテと辛味蕎麦、梅雨空を吹き飛ばす爽やかな宵の口なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
愛・おぼえていますか / 飯島真理 1984


アナベルと金婚と東村山音頭と 西武国分寺線・多摩湖線を完乗!

2024-07-13 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

羽根沢信号場から恋ヶ窪駅へ延びる直線区間をレモンイエローの6両編成が駆けてくる。
やはり国分寺駅が単式ホームだから、国分寺を出発する列車と到着する列車はここで行き交うことになる。
ニュースが熱中症への注意を叫んでる休日、国分寺線に乗って呑もうとやってきた。

ブリヂストンの工場を右手に見て小川駅、国分寺線はここで拝島線とX字に交差する。
平面交差になっているので、先発の小平ゆき(拝島線)が行手を遮るように横切って右奥に消えていった。

右から新宿線の複線が近づいてきて、レモンイエローは工事の防音壁に囲まれた2番線に到着。
国分寺を発ってからわずかに10分、国分寺線の旅はアッという間に終わりを迎える。

終点の東村山駅付近は連続立体交差事業が進行中、5つの踏切が解消されるらしい。府中街道の渋滞も酷いもの。
駅の反対側には、えっと言うような26階建てのタワーマンションが聳えている。

そして駅前広場では、大きな欅の木陰で「アイーン」ポーズの志村けんさんが暑さを凌いでいる。
昭和な少年たちの土曜日は、草野球から帰って夕飯を済ませると、『8時だョ!全員集合』にかじりついた。
もっともボクはだんだんと『オレたちひょうきん族』に心変わりしていったのだが。

煙突の高さも誇らしげに “金婚” の豊島屋酒造が江戸前の酒を醸している。
実はこの旅のスタートラインへ向かう車中、Googleマップでどうやら東村山に酒蔵があることを知った。
まぁ呑み人の旅はそれくらい行き当たりばったりなのだが、知ったからには訪ねない訳にはいかない。

滝のような汗を流して15分、ショップ「KAMOSHI no BA(かもしのば)」で試飲を愉しむ。
定番の “金婚” や “屋守(おくのかみ)” の他に、なかなか尖った酒をお造りの印象を受けた。
蔵元でしか買えない無濾過生原酒 “純米大吟醸 NEON(PINK)” と “純米吟醸 MELLOW(BLUE)” を仕込んで、
この先の旅、左手に提げた袋がカチャカチャとリズムよく音を立てるのだ。

駅前に戻ったら「ますも庵」の暖簾をくぐる。まだ陽は高いけど今日の一杯を。
この店は豊島屋酒造さんで「東村山で金婚が飲めるお店は?」と尋ねて、紹介してもらったのだ。

とは言えこの暑さ、先ずはキンキンに冷えた “大人の⭐︎生” を一杯。アテは何も捻らず “冷奴” がステキだ。

そして “金婚 純米酒” を升に溢してもらう。やや甘めの飲み口がスッキリした酒だ。
お供するのは “身欠きニシンの甘露煮”、蕎麦前のうちでは好みの一品だ。

〆の一枚は “肉汁うどん” に変更して、甘い肉汁、コシのある歯ごたえと喉ごしを愉しむ。
うどんは埼玉県さんの地粉と言うからまさに武蔵野うどん。西武線シリーズでははや3度目なのだ。

志村けんさんに別れを告げたらもう一路線乗っておく。
3番線でガラんとして発車を待つレモンイエローは2000系4両編成の西武園行き。冷房が心地よい。
列車がガタンと動き出すなり『次は終点西武園っ』の乾いた車内放送、そう西武園線はたった1駅の乗車なのだ。

黄色い西武電車を背景にして、抜けるように白く、満開の “アナベル” が美しい。
沿線の「北山公園」は、水辺を楽しめる静かな公園で、数千本の花菖蒲と紫陽花が盛りを迎えている。

線路の向こう側は『となりのトトロ』でメイが迷い込んだ七国山のモデルと言われる八国山緑地。
東村山と所沢の市境(都県境)にある緑地は、ハイキング トレイルやバードウォッチングのできる池がある。

競輪の開催がない日は閑散とした西武園駅、レースがある日ならばメインスタンドで呑んでも良かったなぁ。
隣接する西武園ゆうえんちプール、聞こえてくる女の子や子どもたちの歓声が夏を感じさせる。
っと、西の空に夕立を予感させる灰色の雲が広がり始めていることに気付く。
慌ただしく折り返すレモンイエローの電車に乗って、国分寺線・西武園線の旅を終えよう。

西武鉄道 国分寺線 国分寺~東村山 7.8km 完乗
西武鉄道 西武園線 東村山~西武園 2.4km 完乗

東村山音頭 / 三橋美智也&下谷二三子


ノミビトは朝、空港で

2024-07-08 | 日記・エッセイ・コラム

土砂降りの午前8時、更新したての真新しい旅券を片手に、羽田空港第2ターミナル。
少々早めの夏休みか、久しぶりの海外渡航は一都市滞在の5日間。予定は全く立てていない。
行った先で酒場を放浪するか、呑み鉄の旅をするか、まぁ単車には乗らないと思うけど。
ちょい贅沢に5つ星ホテルだから、プールサイドでのんびり過ごしても良い。とにかく自由なのだ。

とはいえ、呑むことは外せないから、ナッツとチーズに、朝からラウンジでプレモル生ビール。
喉が潤ったら、“大七箕輪門” 注いで、“焼き鮭” を箸で崩しながら山田錦の純米大吟醸を愉しむ。
搭乗前からやるべき事、いや呑むべきものは呑んでおかないと。

さて、いったい呑み人はどこに降機するのだろう。
容赦なく照りつける市街地の国際空港にはこんなオブジェがあったのでパチリ。

首都を貫く大河の河口の町には、こんな南欧風の小径があったり。

ミーハーにもこんなスイーツに舌鼓を打ったりするのもまた楽しい。

比較的新しい街並みには、こんな今どきのオブジェがあって、観光客やカップルが写真を撮っている。

さて、呑み人が紛れ込んだのはどこの街か、旅慣れた貴兄にはお分かりでしょうか。
スイーツで分かっちゃうかもしれませんね。
いずれ、何らかのレポートをしますね。それでは行ってきます。

<40年前に街で流れたJ-POP>
モリスンは朝、空港で / 佐野元春 1983


空飛ぶ機関車と真夏日のホッピーと魔法の国と 西武有楽町線・豊島線を完乗!

2024-07-06 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

エメラルドのボディーに3人のキャストを大胆にあしらったフルラッピング電車が豊島園に到着する。
溢れ出した乗客の中には、すぐには改札を出ずに、カメラを片手にホームを行ったり来たり。
今日は昼呑みの練馬を基点に、豊島線と西武有楽町線で遊ぶ。

3番線に入ってきた紅いラインの8両編成は東急の車両、副都心線を経由して横浜中華街からやってきた。
西武の車両は勿論だけど、東京メトロ、東武、東急、横浜高速の車両が入り乱れるのは副都心線効果ですね。

地下がこんなに賑やかなのは想像できないほど、静かな住宅地の只中に小竹向原駅は口を開けている。
小竹向原〜練馬のわずか3駅を結ぶの新線(1998年全通)は、練馬区内で完結するけど有楽町線だ。

紅いラインの石神井公園行きは、6分の乗車で西武有楽町線の旅を終える。
もっとも大抵の場合、このまま池袋線に乗り入れて、石神井公園あるいは飯能まで足を延ばすのが常だ。

高架を西武の路線がX字に交差し、その地下を大江戸線が走って、練馬駅も案外立派なターミナルだ。
すでに真夏の陽に射られて、練馬駅前交差点で都道を越えると、ビルの谷間に酒場が連なる細道が延びる。

この界隈には昼から暖簾が掛かる店が何軒かあるらしい。
呑み人はぼんやりと赤提灯が点った「大衆酒場 練馬 春田屋」に吸い込まれる。すっ涼しい。

先ずは生ビール。よく冷やされたジョッキーには誇らしげに店名が入っているね。
アテは “肉味噌ピーマン” って、己で箸を操って作るんかい?まぁ安いから良い。

二杯目は “生レモンサワー”、この酸っぱいのがいい。
タマネギを敷いて “漬けマグロブツ”、紫蘇を散らしてこれがなかなか気の利いたアテ、さらに呑めそうだ。
日本酒は松竹梅かぁ、ご常連が裏メニュー的な地酒を注がせてるけど、面倒だからホッピーでいく。

ナカを追加するタイミングで “豚バラ” を焼いてもらう。味噌と梅と一本ずつね。
汗も引いたし、ちょい気分が良くなったところで、小さな旅の続きを。

高架のホームに上がってほどなく、Harry Potter を煌めかせて「スタジオツアー東京 エクスプレス」が登場。
豊島線は練馬から北へ、住宅街を掻き分けてわずかに1キロの旅なのだ。

赤を基調とした豊島駅構内は、ホグワーツ魔法魔術学校へとつづくホグズミード駅をイメージしているとか。
ベンチや電話ボックス、天井から提げられた時計も英国調で、なんだかワクワクしてくるね。

空飛ぶ魔法列車のモニュメントは、キングス・クロス駅の9と¾番線の Hogwarts Express と思いきや、
かつて「としまえん」で走っていた機関車をリメイクしたものだそうだ。なかなか粋ですよね。

イングリッシュガーデンをイメージした駅前広場、木材をふんだんに使ったナチュラルで暖かみのある駅舎。
豊島園駅はずいぶん雰囲気が変わりました。

黒いマントを羽織り魔法の杖を握って、コスプレをした若者が少なからず集う緑の小径を行くと、
木立の中に、守護霊(パトローナス)が跳ねる「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京」が現れるのだ。

さてこの夏、時間を見つけて魔法の国を訪れて見てはいかがか。ボクは練馬駅前で呑んで待っています。

西武鉄道 西武有楽町線 小竹向原~練馬 2.6km 完乗
西武鉄道 豊島線 練馬~豊島園 1.0km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
時間の国のアリス / 松田聖子 1984


風を感じて! 奥多摩周遊道路とZと気ままにREFLECTION

2024-06-29 | 単車でGO!

もう朝とは言えない時間に階下に降りるる。そっと黒いシルクのシーツを少し捲ってみる。
「あらっ、ずいぶん久しぶりね」っと少し険がある。こういう時は逆らわない方がいい。
確かに春以来、酒呑みの鉄道旅ばかりが先行して、この季節まで一緒に出かけることはなかったから。

シーツを足首のあたりまで剥いでしまう。
覆い被さるように跨ると、骨ばった右手で優しく左手を包む。恋人繋ぎってやつだ。
少しだけ手首を手前にひねると、小刻みな鼓動が大きくなる。いつも通りだ。

奥多摩大橋を渡ると、ふたりが走る道はいよいよ渓谷の景色になってくる。
内緒だけれど、まったく思いつきのツーリングは、青梅街道を走らせてここまでやってきた。

しなやかな脚にブラウンのタイトスカートを纏い、さりげなくシャンパンゴールドのアンクレット。
上品なオレンジのトップスに案外ボリューミーな上半身を包むコーディネートはいつもの通りだ。

鳩ノ巣渓谷あたりだろうか、何艇かのカヌーが白い飛沫を滑っていった。
「知らないうちに季節が過ぎたみたいね。すっかり夏なのね」って、まだご機嫌は斜めなのだろうか。

ランチは沢井の「豆らく」にウインカーを出した。
渓谷の吊り橋の下をキラキラと清流が流れ、広葉樹の緑から初夏の日が溢れる。
渓谷を渡る風に髪をとかれ、「ステキなところね」と呟く。
だんだんペースを引き寄せただろうか。鉄道旅では何度か訪れたけど。ふたりで来たのは初めてだ。

鳩ノ巣あたりから、バイクの隊列に前とを塞がれて走ってきたけれど、
小河内ダムまで駆け上がるころ、ようやく二人きりになる。鼓動が伝わってくる。
夏に向かって水を湛えた奥多摩湖は深いエメラルド、山肌から新緑が覆い被さって、東山魁夷の世界だ。

深山橋から三頭橋を渡って奥多摩周遊道路へと進む。ここは都心からも近い関東屈指のワインディングだ。
三頭橋(530m)から風張峠(1,146m)まで一気に駆け上がる爽快感から、多くの走り屋たちが集まってくる。

っと2眼ヘッドライトのフルカウルのスーパースポーツが、甲高いエンジン音で後ろから迫ってきた。
短い直線で左にウインカーを出して先を譲ると、
赤いランプはライダーの膝がアスファルトに触れるほど内倒させて、小さいRを抜けて緑の向こうに消えた。

「案外意気地がないのね」えっ、思いがけず衝撃的な呟き。
あっさり2眼ヘッドライトを先に行かせたことを云っているのか、
それとも出会ってから2年、なかなか進展しない二人の関係を揶揄しているのだろうか。

月夜見第一駐車場から奥多摩・奥秩父の雄大な眺望を楽しむ。
一瞬、雲間から陽が射して、キラリと湖面が輝いた気がした。

「ねっ、ダムがあんなに小さく見えるわ」ライダージャケットの袖を引きながら声が弾けた。
さっきまでのクールでちょっといけずな様子から打って変わった。やれやれ。

この先、白樺の清涼感に包まれて、開放感たっぷりの尾根沿いの道が待っている。
今年はふたりして、どんな景色の中を旅することができるだろうか。本格的な夏がやってくる。

<40年前に街で流れたJ-POP>
気ままにREFLECTION / 杏里 1984


多摩湖と武蔵野うどんと高尾の天狗と 西武多摩湖線を完乗!

2024-06-22 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

新緑の切り通しを抜け、小さなアップダウンを繰り返して、9000系が多摩湖まで登ってきた。
この日はベルーナドームでセ・パ交流戦があるから、午前中から大忙しのレモンイエローの4両編成だ。

国分寺駅の北口を塞ぐようにショッピングセンターがある。以前降りた時はなかったかな。
正面にバス乗り場を配して、あたかもこのミーツ国分寺が駅ビルの様なのだ。

多摩湖線の国分寺駅は単式ホーム、しかも10分間隔のダイヤだから、電車は忙しなく折り返していく。
だからひとつ目の一橋学園で必ず上り下りが交換する。ほら国分寺ゆきのレモンイエローがやって来た。

萩山駅では拝島線と連絡するのだけれど、2つの路線は駅の構内でX字に平面交差する。
多摩湖ゆきのレモンイエローは、萩山駅を出ると3回の転線を繰り返す。吊り革に掴まりましょう。

萩山から先は、保谷狭山自然公園自転車道線(水道道路)に沿って一直線に、そして緩やかに登っていく。
都道5号線(青梅街道)を跨いで武蔵大和駅前、小さな男の子が嬉しそうにレモンイエローを見上げて指を差す。

中天の陽に射られながら、自転車道路をきた方向にとぼとぼと戻る。汗が噴き出す15分だ。
めざす「手打ちうどん きくや」は昔ながらの町のうどん屋さん、ほら母子でお昼ご飯にやって来た。

おひとり様は肩を寄せ合って狭いカウンターで。
ほどなく「肉汁・天付L」が登場、これが基本ね。あとは玉の分だけLL,3L,4Lと増えていく。
生姜、刻みネギ、山葵と薬味で味変しながら、甘めの肉汁にコシのあるうどんが美味しい。

満腹を抱えて乗る後続の9000系はレジェンドブルー、これ埼玉西武ライオンズの球団色なのだそうだ。
武蔵大和からはまるで山岳鉄道のよう、右に左にきついカーブと勾配が続く。
車輪とレールが上げるキーン、キーンという音を聞きながら、左手に堰堤が見えてくると終点の多摩湖だ。

多くの乗客はそのまま山口線に乗り換えてベルーナドームをめざすから、
多摩湖駅の駅舎はあくまでも静かな別荘地の駅の雰囲気を醸す。いかにも西武の駅と街並みなのだ。

東村山 庭先ゃ多摩湖 狭山茶どころ 情が厚い♪ って子どもの頃歌いましたよね。
堰堤に登って西を望むと、鬱蒼とした森を湖面が鋭利に切り裂いて、遠くに富士が霞んでいる。
唯一銀の円盤を除いては人工物は視界になく、なんだか遠くに旅したような錯覚に陥りますね。
振り返ると新宿の副都心まで見渡せるのに不思議な気分です。

堰堤を南に歩いていくと見えてくるのが、日本で一番美しいと言われる第一取水塔、第二取水塔。
レンガ造りの壁面とドーム屋根、ネオルネッサンス様式の取水塔が湖面に映って、欧州の景色の様でもある。

お嬢さん、山口線はホーム前寄りですよ。案外の乗換案内は聞いていないものですね。
ライオンズファンを吐き出したレジェンドブルーで戻りましょう。昼呑みは国分寺で。

ここは国分寺だけど「名古屋」って、赤い提灯と暖簾がちょっと怪しげな地下空間に誘っている。
狭い階段を降りて引き戸を開けると、煙草の匂いと喧騒が流れ出す。
えっこんなに呑んでいるの、昼間っから、ご同輩ばかりか若い女性連れやカップルもいる。

先ずは生ビールと小手調べの “ポテトサラダ” を。可もなく不可もなく、かなぁ。
それでもお通しの “大豆と昆布の煮物” は泣かせるね。
それにしてもホールの娘たちは愛想がない。まったく。笑顔は別料金ってことか。合理的ですね。

人気メニューらしい “まぐろこぼれ盛り”、これは美味い。いい部位の端っこを上手に盛り付けているんだね。
となると日本酒なんだけど、“高尾の天狗” は柔らかい旨口でスッキリした喉ごしの純米吟醸。

この酒、酒蔵が絶えてしまった八王子の米を諏訪の「舞姫」に送って醸しているプロジェクトもの。
いずれ産学行政連携で八王子に酒蔵を復活させるのだとか。夢がありますね。

この店は鯨がラインナップにあって、呑み人は “竜田揚げ” を択ぶ。
すっきりとレモンスライスを落とした “チューハイ” を合わせる。タイムサービスで150円なのだ。
昭和な給食にはときおり鯨の竜田揚げが出て、ボクたちの人気メニューだった。懐かしいね。

さてとほろ酔いで地上に戻っても、夏至へと向かうこの頃はまだ陽が高い。
多摩湖線といえば、夕方になっても10分毎、生真面目に国分寺駅を折り返してゆくのだ。

西武鉄道 多摩湖線 国分寺~多摩湖 9.2km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
雨音はショパンの調べ / 小林麻美 1984


Osaka メトロに乗って 萌葱色の電車と大阪城とトンペイ焼きと 長堀鶴見緑地線を完乗!

2024-06-15 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

折り返し大正ゆきとなる萌葱色の70系4両編成が門真南駅にやってきた。
一見すると遊園地の電車?と思うような断面積の小さな車両は、日本初の鉄輪式リニアモーターミニ地下鉄。
首都圏では大江戸線やグリーンラインにもこれと同じ方式が採用されている。

始発駅の長い通路を歩いて2番出口を這い出ると、正面に銀色にかがやくモスラの卵が現れる。
なみはやドームは、1997年の国民体育大会に合わせて造られた競泳、飛込、スケートなどの競技場だ。

振り向くと駅前ロータリーには、チキンラーメンのひよこちゃんと大阪・関西万博のミャクミャクが、
いかにも大阪らしいコテコテのラッピングバスをすり抜け、階段を降りたら長堀鶴見緑地線の旅を始めよう。

ちょっと可愛らしい萌葱色の電車は、独特なモーター音を微かに響かせて門真南駅を出発する。
っが、席も温まらないうちに、最初の停車駅 鶴見緑地で最初の途中下車。

噴水の飛沫に飛び込んで歓声を上げる子どもたちを横目に風車の丘に登る。
花の万博はご存知? 1990年、バブル期に開催されたこの博覧会は、内外から2,300万人の来場者を集めた。

風車の丘の花畑は、春の花から夏の花への切り替え期で寂しい風景だったけど、
お隣のバラ園では大阪の街を見下ろして、約400品種のバラたちが咲き誇り、甘い香りに包まれるのだ。

丘を登って降りて、ひと汗かいてから再び萌葱色の4両編成に乗る。
長堀鶴見緑地線は鶴見通りを西進すると、京橋で向きを変えて外堀の外周を舐めるように玉造まで南下する。
っと大阪のシンボルは観とかないといけないね。大阪ビジネスパークで2度目の途中下車。

青屋門を潜って内濠沿いを極楽橋をやり過ごし、御座船乗船所の先まで回り込む。
呑み人は威圧するかのように圧倒的に巨大な石垣を臨める、この角度からの大阪城が好みなのだ。

休日の大阪ビジネスパーク駅は、近未来的で無機質なホームは閑散としている。
タイミングでたった一人きりになると、この世に一人ぼっちでサバイバルしているような妄想に駆られる。

玉造駅で再び進路を西にとった萌葱色の4両編成は、漸くっと路線名の長堀通りの下を行く。
乗客がすっかり入れ替わるかのような降車客の波に押されて心斎橋駅に3度目の途中下車。
心斎橋筋は人が溢れて、真っ直ぐ歩くことも、追い越して行くこともままならない。

ランチは老舗の洋食屋「明治軒」を訪ねる。
名物オムライスを食べに来たのだけれど、“サービスランチ” に変更。
ケチャップソースの “ポークカツ” とタルタルソースをたっぷりの “エビフライ” が美味しい。

長堀通りを西の果てまで走ったら、今度は南へ転じてドーム前千代崎駅、ここでも若者がどっと下車。
んっとバッファローズのファンには見えないから、興味津々、人の流れに紛れ込んでみる。

ビルの影から京セラドーム大阪、案の定人波はこのドームに吸い込まれていく。
SUPER DRY SPECIAL LIVE Organized by ONE OK ROCK だって、オヤジには分からないロックフェス。
冠スポンサーのスーパードライは知っているけどね。

気を取り直して最後のひと区間を乗車して起点の大正駅に到着。
乗り通せば30分の長堀鶴見緑地線、大阪の風景を切り取りつつ半日がかりの旅になった。

陽が落ちたら再び萌葱色の4両編成に乗って長堀橋駅までやってきた。
心斎橋筋から延びてくる鰻谷北通り鰻谷南通りに賑やかに飲食店が連なっている。
呑み人はふらりと丼彩酒楽 由庵(ゆうあん)という店に飛び込んでみた。

空腹を抱えていたので、今宵はいきなりの “トンペイ焼き”、やはり本場ものは食しておきたい。
豚ロースと野菜をたっぷり玉子に包んで、ソースとマヨネーズで描く紋様は芸術的、粉もんの大阪ですね。

順番が逆だけど、刺身は “活ヒラメ昆布〆” をいただく、これが美味い。
大阪の酒はラインナップになかったので、広島は呉の “雨後の月” を択ぶ。
八反錦で醸した超辛口の純米は、軽快な旨味と鋭く切れる後味がいい。

最後にハイボール片手に “串カツ” をおまかせで盛ってもらって、“豚ヘレ” ってのが美味い。

さてとほろ酔いで心斎橋筋方面に戻るのだけれど、ちょっと気になる酒場やら小料理屋が数知れず。
大阪で呑む旅は飽くことがない。次の出張が待ち遠しいのである。

大阪市高速電気軌道 長堀鶴見緑地線 門真南〜大正 15.0km 完乗

やっぱ好きやねん / やしきたかじん


Osaka メトロに乗って 縹色の電車と青い夏酒と大阪恋物語 四つ橋線を完乗!

2024-06-08 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

プァ〜ンと低い警笛を鳴らして、縹色(はなだいろ)を引いた23系6連の電車が西梅田を発車する。
形式は違えど、御堂筋線や谷町線の電車と顔がよく似ている。

四つ橋線の起点となる西梅田は、東隣りを走る御堂筋線の梅田と比べて落ち着いた雰囲気がある。
それは四つ橋筋を挟んで向かい合うヒルトンプラザが醸し出しているのかも知れない。

ヒルトン大阪脇のC-30を降りると、ハイソな地下街にコテコテな西梅田駅がぽっかり口を開けている。

改札を抜けて階段でさらに降りると、無機質なプラットホームに、ちょうど住之江公園ゆきが入ってきた。
ということで、今回は10キロ少々、ちょっと短い四つ橋線を旅する。

本町で途中下車して心斎橋筋商店街の「味万本店」を訪ねる。
いつの間にか出張の旅に伺うようになったこの店、ふんわりお揚げの “きつねうどん” が美味しい。

中央線、御堂筋線と連絡する本町は乗降客が多い。お腹を満たして旅を再開、でも乗るのはたった一区間。

四つ橋筋や四つ橋線の語源となったのは、もちろん「四ツ橋」ということになる。
長堀川と西横堀川が十字に交差したこの地に、ロの字型に4つの橋が架けられていたという。
江戸期、4つの橋とその下の堀川を、物資を積んだ舟が行き交う光景は、名所に相応しいものだったろう。

四ツ橋を出た縹色のラインは、なんばを掠め、唐突に臙脂色の電車と並走すると大国町。
どうやら御堂筋線が四つ橋線を内側に挟み込む配置になっていて、同一方向同士の列車の乗換えが便利だ。
東京で言うと赤坂見附の丸の内線と銀座線の同じようだね。

四つ橋線の6両編成は、なんばから先は乗客を減らしつつ、片手分の指を折ったころ住之江公園に終着する。
おやおやリュックを背負った子どもたちが降りてきたけれど、この辺りに遊べるところがあるのだろうか。
住之江公園でBBQか、それとも南港からフェリーで家族旅行か。笑顔と歓声に癒される。

地上に這い出ると電車が潜ってきた新なにわ筋の東側はこんもりした森のように見える。
広大な住之江公園の一角は大阪護国神社になっていて、日章旗と旭日旗が翻っていた。

西側の巨大なスタンドは BOAT RACE 住之江、橙色や黄色が咲き誇る花壇に沿って進んでみる。
この日はレースは無いようだけど、多くのファンが腕組みをして大きなスクリーンに集中しているのだ。

開店時間に合わせて「喜世」を訪ねる。マンション1階の落ち着いた感じのお店だ。
お通しの “つぶ貝煮” を穿り出していると、“本マグロ” の皿が登場。この赤がキレイだ。

今宵は獣たちの夏酒シリーズを勝手に開催する。先ずは出荷されたばかりの “春鹿の夏しか”。
吟醸香が華やかで、喉越し爽やかな純米吟醸は、花冷えくらいで呑みたい。
っで、ふた皿めは “茄子と合鴨揚げ出し”、青磁の器になす田楽、合鴨をのせたら、とろり出汁あんかけ、
青ネギを散らして美しい。これって料亭の一品って感じでしょう。

二杯目の “千歳鶴 夏ひぐま” を升に溢してもらう。この瞬間この感じが嬉しい。
北海道産のきたしずくで醸したやはり純米吟醸は爽快辛口の酒、これも美味い。
アテは酒のイメージに合わせて “子持ちししゃも焼き”、北のクマたちも齧っているだろうか。

涼しげなペンギンのラベルは京丹後の酒 “Ice Breaker”、清涼感のある爽やかな香りの無濾過生原酒。
ロックで飲んでも美味しいと言うから、今度試してみたい。
〆の煮麺は醤油味のだし汁に、鶏肉、うずら、シイタケをのせて、これも料亭クオリティ。旨い。

縹色の電車に乗って、青色ラベルの夏酒を愉しんで、美味しい初夏の四つ橋線の旅は暮れるのです。

大阪市高速電気軌道 四つ橋線 西梅田〜住之江公園 11.4km 完乗

大阪恋物語 / やしきたかじん


ときに週末は特急電車で 八州亭@川越

2024-06-05 | 日記・エッセイ・コラム

観光後進県と言われる埼玉県だけど、単車や鉄道で訪ねる秩父や長瀞それに川越はいつも賑やかだ。
B級グルメやアニメの聖地、乏しい観光資源を補うように、地域や行政が尖って頑張っているからだろうか。
ところが東京との交通利便性が良いばかりに、宿泊は東京で取ったり、そもそも日帰り客が多かったり、
落ちるお金で観光の優劣を測ったら、やはり埼玉は厳しいだろうか。

たまには特急もいいかなっと、高田馬場から乗ったレッドアローでわずかに45分。
小江戸川越はやはり近すぎる。呑み人にとっても昼呑みのディスティネーションなのだ。
レトロな町並みの漫ろ歩きもそこそこに、明治8年(1875年)に創業した旧鏡山酒造の蔵でちょっと一杯。

“海鮮サラダ” を肴に “鏡山” の純米吟醸は玉栄を醸した華やかな香を楽しめる酒だ。
ところで蔵元の小江戸鏡山酒造は、閉じてしまった鏡山酒造を復刻させた若い蔵。
やはり城下町にして酒蔵の一つも無いのは寂しいからね。

濃厚な川越三元豚の “豚角煮” には、やはり濃厚な味わいの純米酒で対抗する。
箸を入れるとほろほろ崩れるほどふんわり煮込んだ角煮を肴に、コクのあるそして酸味を感じる純米酒が旨い。
続いて登場したのが “天麩羅” だから、この純米をもう一合。ちょい呑みのつもりが腰が落ち着いていく。

粋な蕎麦前とは言えないくらい酒は頂いたけど、やはりせいろの一枚も手繰りたい。
択んだのは “とろろ蕎麦”、オクラを浮かべて夏っぽい。二八にたっぷり絡めてズズッと啜る。美味しい。

浴衣姿の男女もちらほら、歩道から溢れる観光客は思い思いにレトロな町並みやスイーツを楽しんで歩く。
呑みにきただけのボクは駅へと戻るだけ。まだ陽は高いけど、今日はこれでお終いだね。ご馳走様でした。

<40年前に街で流れたJ-POP>
If you / 角松敏生


Biz-Lunch 満留賀@池袋「蒸し鶏の梅おろしそば」

2024-05-29 | Biz-Lunch60分1本勝負

歯ごたえのあるそばに、蒸し鶏、刻み海苔、そして夏らしくミョウガを散らしている。
大葉にのせた梅肉をからめた大根おろしに、小さな円を描くように蕎麦つゆをかけると、
梅肉が香りを放ちながら、そばに絡んでいく。
割り箸で軽くかき混ぜたら、頃合いを見計らって、大掴みしたそばをズズっと啜る。爽やかだなぁ。

池袋オフィスでの Biz-Lunchは、満を持して池袋駅東口に展開したことは前回書いた。
蕎麦の「満留賀」は先日訪ねた天丼の店の向かえに、今日もたくさんのビジネスマンで溢れている。
それこそ星の数ほどある飲食店、この街から美味いランチを探すのはなかなか楽しい作業なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
稲妻パラダイス / 堀ちえみ 1984


Biz-Lunch 天成@池袋「鶏天丼」

2024-05-22 | Biz-Lunch60分1本勝負

池袋オフィスでの Biz-Lunchは、そろそろ池袋駅東口を開拓する局面に入ってきた。
東口北に出たら堀之内橋方面へ2ブロック、四叉路の角に「天成」の暖簾が掛かっている。

変形コの字カウンターに14席、連れ立ってくるお客さんを考えて、座る場所は奥さんから指示が出る。
目の前で揚げてくれる本格的な天ぷらが、小1枚でお釣りがくるのだから、良いパフォーマンスだ。

白だしの味噌汁を従えて “鶏天丼” が登場、添える壺漬けは、カウンターのツボからご自由に。
ナス、カボチャ、ししとう、かき揚げに加えて、主演の “とり天” が二つ、ジューシーで美味い。
そして助演の “舞茸天” も肉厚十分でなかなか良い感じだ。

タレは甘味が強いやつで、なかなかの美味。
こうした旨甘のタレは後半持て余し気味になるが案の定、いや単に年をとったからか。

オフィス街にデパートやショップ、歓楽的な繁華街、っでかつ学生街、
様々な表情を見せる池袋だから、美味しい店はまだまだ見つかりそうだ。
夏にかけてさらに(極めて個人的に)盛り上がりそうな池袋の Biz-Lunch なのだ。 

<40年前に街で流れたJ-POP>
Southern Wind / 中森明菜 1984


酒と肴と男と女 那須家宗庵@中浦和

2024-05-15 | 日記・エッセイ・コラム

初鰹の季節ですね。今日のおすすめ “初カツオのたたき” を見つけて、声を上げたのは同時だったね。
あいにく土佐の酒はラインナップになかったから、先ずは奈良の “春鹿” を択ぶ。
今宵、ふたりして西へ旅してみようという趣向でね。ラベルに遊ぶ鹿を見て「修学旅行見たいね」と微笑む。

調子に乗って二杯目も奈良の酒、“百楽門” は備前雄町で醸した甘口の生酒、白身魚に合いそうだね。
これは絶品、“長ネギの天ぷら” を抓みながらに杯を重ねる。
ところで “新ホタルのごま和え” に “生カスベの唐揚げ” と、アテは勝手に日本海側を北上していく。

修学旅行はバスを連ねて大阪に入る。この “秋鹿” は山田錦の山廃純米生原酒、濃醇辛口な男酒が旨い。

この店の蕎麦は、のど越し良い “二八そば” と、甘みが強い “あらびきそば” の2種類を手打ちする。
前者はくるみ汁で、後者は本枯れ節のつゆで味わう。

〆の蕎麦前には、穏やかな香りと軽快な口当たりの純米酒 “琵琶のさざ浪” が美味しい。
「あらっ京都には寄らないのね」と彼女がつぶやく。
いやいや、京都に寄らずに帰路の新幹線に乗ってしまったようだ。すでに車窓を琵琶湖が流れていくのだ。

悲しみがとまらない / 稲垣潤一 & 小柳ゆき


ボクも町中華で飲ろう 華山@浦和

2024-05-08 | 日記・エッセイ・コラム

狭い路地裏の、さらに奥まったマンションの1階にその町中華はあった。
自転車置き場の入り口に、移動式の黄色い看板がなければ、Googleマップ を覗いても到達は難しい。

多くのお客さんが4種類設定される「今日の定食」を注文する中、ボクらはギョービーから始める。
ジューシーでモチモチ、でもいい感じにきつね色に焼き上がった “ぎょうざ” が評判に違わず美味しい。
ビールグラスが冷えていれば申し分ないのだけれど、そこはある意味町中華クオリティ。

秀逸なのは小皿メニュー、280〜400円の設定なのだけれど、小皿いっぱいに美味しいが溢れる。
“くらげサラダ” に “焼き豚” それに “麻婆豆腐” が並んで、これは絶品アテの3兄弟。
2本目の一番搾りが空いて、小上がりの卓には “レモンサワー” が登場。調子が出てきたぞぅ。

パラッパラの “チャーハン” を取り分けた頃、熱々の餡かけラーメンがやってきた。
品書きに “華山麺” と、店の名前を冠している位だからここの看板メニュー、確かに美味い。
アッサリした味付け、たっぷり野菜の餡に細麺を絡めて音を立てて啜る。絶品ですよ。

小上がりに上がってから小一時間、満腹を抱えて路地に出る。ちょうど昼の暖簾を下ろす頃だ。
もう午後は何もできないなぁ。でもこんな休日も良いかも知れない。
次は純粋にランチに、そう “華山麺” を食べに来よう。ごちそう様でした。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Toremoro / 柏原芳恵 1984