千里中央のA&Hホールで開催される大和座狂言事務所の公演に毎回行くようにしていて、昨日も今年最後の公演にお邪魔してきました。
私が大和座の公演を観にいくのは狂言師安東伸元先生の生き様になるべく触れていたいからで、安東先生の生き方に近付きたいといつも思っているからです。
安東先生は能楽の家に生まれ、狂言方能楽師としてそのキャリアをスタートさせましたが、世襲制で権威的な家元制度の下では狂言は人々に浸透しないと、反発して団体を飛び出し、独自の狂言団体を設立しました。
師家にいればその身分も保証され、生活に困らないのに、それを捨ててご自分の道を歩んだこと、76歳になる今でも孤軍奮闘してその生き方を貫いていることを自ら「ドン・キホーテ」のような生き方とおっしゃっておられますが、そんな夢やロマンを追い求める生き方をお手本としたい男の生き様として見ています。
生活の安定や将来の安泰を考えると安東先生のような理想を追い求めた生き方はなかなかできないと思いますが、狂言を多くの人に観てもらうことで、日本人としての誇りを皆様に持ってもらいたい、そしてそれをするのはご自分の他はいないと決断されたのでしょう。
安東先生が舞台に立つ姿を見ながら、誰よりも響く低い声を聞きながら、安東先生が40年間近く背負ってきたものの大きさを垣間見た気がします。
当店で安東先生がおっしゃった「ただ好きで、信じたことを続けてきたら何とかご飯を食べることができるようになった。それでいいのではないでしょうか。」という言葉をいつも思い出します。