雑誌「考える人」をぱらぱら読んでたら、漱石の小特集が組んであった。多くの人が漱石作品を読むならなんだ、と紹介している。
僕が初めて読んだのは、ご多分に漏れず「坊っちゃん」だった。短いのですぐ読めると言われたが、薄い本でも結構根気よく読んだ気がする。何しろ漢字が多かった。まあ、面白いというのは分かって、「吾輩は猫である」も手に取った。これはかなり格闘した記憶があるが、当時はあまり面白いとは思えなかった。休み休み読んでひと月ほど読んでいたのではなかったか。たぶんこれが小学生か中学生の頭くらいのことで、もう漱石はいいかな、と思ったようにも思う。大人になってから「猫」を拾い読みすると、まったく違った落語のようなバカバカしさと面白さがあることに気づかされたけれど、子供にはやはり分かりづらかったのだろうと思う。
高校生の時に教科書に載っている「こころ」を読んで(そして本も買い直して)、まだ若かったから感動した覚えがある。こんなに面白い作家だったのか。お話が面白いというのもあるし、文体もこんなに分かりやすいものだったのかと改めて思った。今読むと「こころ」はあんまり感心しないから、若い時代の心情と「こころ」のような作品は、よく合うのではなかろうか。調子に乗って「草枕」なども少し読んだが、拍子抜けして面白くは感じなかった。これはたぶん今なら逆に思うだろう。
しかし「それから」は、違った。何というのだろう。僕はまだ恋愛というのはよく分からない(今も分からないと言えばそのままだけれど)ながらも、この話は自分の話のように感じた。ちゃんと仕事をしないのは感心できなかったけれど、いい話ではないかと思った。その後の自分の人生といえば大げさだが、なんとなくこのような気分は後々まで残った。
他は何を読んだかはっきり覚えがないが、「行人」「虞美人草」などは途中で放り出したような気がする。「硝子戸の中」とか「坑夫」などは、読んだけれどよく分からなかった。面白くもなんともないので、不思議と印象に残ったという感じであった。
今は、ふと思い出して、キンドルで「三四郎」を読んでいる。なかなか面白くて、いいぞ。