君の名は。/新海誠監督
都会に住む(おそらく新宿、もしくはその周辺)高校生の男と、田舎に住む(おそらく岐阜の飛騨あたり)同じく高校生の女が、どういう訳か入れ替わる。男女の入れ替わりなので大変な騒ぎになるが、週に二三度目覚めてから寝るまでの間、断続的に入れ替わるのだ。目が覚めると元に戻っているが、当たり前だが入れ替わった元の自分の生活の記憶は無い。周りの人間だって中身が別人になっているなんてとてもわからない。名作「転校生」のアニメ版のようだが、しかし突然この入れ替わりが終わる。それまではその設定のためにコメディのような展開だったのだが、そこから物語はとんでもない方向へ飛躍していく。そういえばオープニング画面と関係があったのかと、初めてその時気づくことになる。驚いていると、お話は人々の感情を激しく揺さぶることになっていく。内容を書くことは出来ないが、この斬新さはほとんど奇跡ではないだろうか。
個人的に新海監督の過去の作品で激しく失望した経験が有り、人に勧められなければ見ることは無かったと思う。さらにヒットしているらしいから、ますます見向きもしなかった可能性さえある。しかしなんとなく気になって観たわけだが、まさに大正解。これほどの傑作を映画館で観ることが出来て本当にしあわせだった。映画の最後の方では、本当に祈るような気持ちでドキドキしっぱなしだった。もちろん涙も止まらなくて、周りに座っている中学生くらいの女の子たちは、なんとなく僕の様子に軽く緊張している様子だった。すいませんでした。
見終わって考えてみると、練りに練った構成になっていて、そういうパズルの埋め合わせを考えてみるだけでも随分と楽しい映画だ。キャラクターはそれなりに漫画チックだけれど、背景は絵としても精密で、そういう中で配置や構図が斬新で、さまざまにダイナミックなものを見せてくれる。音楽とも相性が良く、いわゆるスタイリッシュな感覚もある。てんこ盛りと言えばそう言えるけれど、これが興行映画としても大変に優れた仕上がりになっていると思う。ヒットしているのでロードショーも延期されるかもしれないが、これは是非映画館に足を運ぶべき作品である。配給が上手くいくと全世界で大ヒットする可能性もある作品だと思う。アニメには興味が無いという人であっても、騙されたと思って観てみて下さいませ。
なお、関係ないけど、愛する言葉より先に、名前って大切だよな、って身に染みて分かります。人は出会わなければ、恋愛より前に話にならないのであります。