何度かこのブログで書いてきたが、
馬は蹄鉄を履いていた方が良いというのは間違えている。
馬は本来、跣蹄(はだし)の動物だ。
人が使役に使うとどうしても蹄が磨耗しすぎるので、蹄鉄を打つようになった。
しかし、装蹄にはデメリットが付きまとう。
蹄が広がったり閉じたりする蹄機を妨げる。
釘で装蹄すれば蹄鉄の上で蹄は蹄機作用できるが、それでも蹄機は制限される。
そして、釘の穴は蹄にダメージを与える。
蹄鉄を接着すれば釘を使わずに済むが、蹄は蹄鉄に完全に固定されるので、蹄機は期待できなくなる。
装蹄すれば蹄は磨耗しなくなる。
(これが装蹄する目的であり、最も大きなメリットであり、そして最も大きなデメリットでもあるのだろう)
改装時に元の蹄形に戻せれば良いが、蹄尖部は伸び、蹄踵部は荷重によりつぶれがちだ。
装蹄した馬ばかり観ている人は、蹄鉄や蹄負面が負重する部位だと誤解しがちだが、
本来、馬の蹄の構造でもっとも荷重がかかるのは蹄踵部だ。
装蹄している馬では、往々にしてその蹄叉や蹄支や蹄球など蹄踵構造がおろそかにされ、壊れてしまっている。
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別に「装蹄」師さんに喧嘩を売るつもりはない。
装蹄などしない方が良いなどと言うつもりもない。
しかし、鉄打ってナンボ。というだけの仕事にとどまるのか、
馬の蹄の技術者、さらには科学者としての専門家となるのか、
そのあたりの理解が境目なんじゃないかと思う。
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馬が蹄に問題を抱えているとき、
除鉄(蹄鉄をはずして)問題の改善を図ったほうがうまく行くことが多い。
競走馬の多くも蹄に問題を抱えている。
休養期間中くらい蹄鉄をはずして、蹄形を改善する機会にした方が良い。
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ただし、跣(はだし)にして放っておけば良いわけではない。
装蹄しておく以上に、こまめな蹄の手入れが必要だ。
そうやっても、蹄形が改善されるにはかなりの時間が必要とされる。
それくらい競走馬(装蹄してある馬)の蹄は崩れてしまっている。
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敬愛するIshihara先生のブログの記事を紹介しておこう。
オーストラリア獣医師会雑誌か・・・講読していないので読めないがたいへん興味深い内容だ。
壊れた蹄形を跣蹄にすることでどうやって回復させるかのヒント(明快な答え?)も含まれている。
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青木先生に見せてもらったアメリカ野良馬(ムスタング)の蹄の模型。
蹄叉は貧弱だが、蹄踵部はとてもよく発達し、頑丈な蹄支をしている。
獣医師にして蹄病の第一人者Scott Morrisonを迎えての装蹄師さんたちの勉強会で問題提起のために右の写真を見せたことがある。
Scott Morrisonは「悪くない」と言ったが、
「何も手入れしていない蹄じゃないか」との意見もあった。
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さて・・・・・
先は長いな(笑)。
最後の写真の蹄も、釘の後が見えません(蹄壁が薄い?)が、はだしなのですか?
蹄支って、こんなにはっきりしてるんですね。
記事の紹介ありがとうございました。
確かに、人間が馬にほどこす装蹄によって、蹄の健康管理に寄与している部分が多い反面、自然な蹄の代謝やメカニックスを妨げている部分もある、という考え方を、常に頭の隅に置いておく必要があるのかもしれません。
自然の摂理に対抗するような蹄管理ではなく、自然の摂理に調和するような蹄管理が、最も重要であるという事なのかもしれない、と考えさせられました。
たぶんいつも泥が詰まっていることは蹄にとって望ましいことでなく、それが蹄叉を崩しているんでしょうね。
ただ、ポニーは体重が軽いし、蹄壁が厚くて頑丈な蹄をしているようです。
最後の写真はまだ1歳の蹄です。蹄踵構造がよく発達しています。
オーストラリアの論文の主旨もそういうことなのだろうと思います。そして具体的な方法も記憶しておく必要がありますね。
ただ、1年休養できる現役競走馬はほとんどいないので、すこしでも早く蹄形を回復させる方法が望まれますし、蹄形を崩してしまう怖さを知ったほうが良いですね。
彼はプロのworking cow horse のトレーナーでもあり、レイニングライダーです。
クラブのショーホースは
レイニングホースは後肢にスライディングプレートのみで前は蹄鉄無し、プレジャーホースは前肢は蹄鉄を付けるけれど、後ろは無しです。
そして、冬になり休養期間になったので、プレートは外しています。
それを見たり聞いたりするだけですが、興味深いです。
競技期間中、いろいろ装蹄を工夫して肢にむくみがみられた乗馬を、オフに裸足にしたら肢がすっきりして、蹄機作用というのはたいしたものだな~と感じたところです。
きつい運動をするときは、裸足だと蹄機が働きすぎて裂蹄するので、シーズン中はあるていど蹄機を抑える必要もあるのでしょうね、有名競走馬が裂蹄をエクイロックスをつかってレースに出たということなどから逆推理です。でもそれが普通だと思ってしまうのは問題で、たしかに装蹄した蹄しか見る機会が少ないですから。。
競走馬の装蹄を初めて見たときは「釘を打つなんて!!」と驚きました。ですが、装蹄師さんは解剖や整形だけでなく、病理学や生理学の知識も学んでいるそうなので、獣医と近しいものを感じました。
我が家の馬たちも、馬の環境と状況によって、必要に応じて鉄を着けています。長い休養が取れる馬は裸足にして、たくさん切って(角度等を直して)蹄機作用に期待して丈夫でいい蹄にリメイクしています。
装蹄で甘やかすとますます助けが必要になっちゃうし、だけど助けた方がいい場合もあるでしょうからそこらへんは装蹄師さんと常に状態や環境を共有できるといいのでしょうね。
そういえば、蹄叉は前より後ろの方が大きいことが多いですが、あれは後肢の方が負荷がかかるからなのでしょうか?
クオーターホースもサラブレッドより丈夫な蹄をしているのだと思いますが、基本的には跣蹄で、必要な蹄だけ装蹄するという方針なのでしょうね。
蹄機に耐えられないので、蹄機を抑えようとする装蹄もあるでしょうね。側鉄唇が使われたりもします。