馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

春の薫り

2023-02-06 | 繁殖学・産科学

当番の夜、分娩予定日を過ぎた繁殖雌馬の呼吸が速い、との相談。

症状、経過を聞くが、来院してもできることはなさそう。

分娩徴候がないと帝王切開しても子馬はまず助からない。

疝痛がないなら母馬の開腹手術の適応でもない。

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朝、1歳馬の外傷の依頼。

”ひばら”が20cm切れている。皮膚だけ。とのこと。

「自分で縫わないんだ」と訊いたら、バリカンが凍って動かないし・・・とのこと。

手はかじかむしね。

来院したら、膁部の腹側、膝ヒダの部分がF型に切れていた。

これは丁寧に縫うなら時間がかかる。

そして、癒合が悪い部分だ。

体幹と後膝を結んでいるヒダ状の皮膚で、動くたび、歩くたび、寝起きのたびに引っ張られるからだ。

立位で縫ったが1時間以上かかった。

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午前中、1歳馬の前肢の跛行診断。

直線常歩 Dysonグレード6/8。

ブロックするが、10%しか効かない。

しかし、どう観ても蹄の跛行だ。

そこへ、難産馬の来院。

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なんと、昨晩からの難産。破水から12時間経っている。

頭と後肢が産道へ入ってきている、とのこと。

枠場で診たら、たしかにそのとおり。

帝王切開するしかありません、と言ったら、「やってください」。

帝王切開は1時間あまりで終わった。

羊水が汚れていたので、閉腹の前に腹腔を洗浄した。

子馬の前肢は牧場での牽引で肩から剥がれてしまっていた。

腹膜炎を起こさないか、コントロールできるか、子宮頚管や膣の損傷が治まるか、わからない。

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午後の診療予定は遅らせてもらって、1歳馬の中手骨部の血腫。

もう1ヶ月ひかない。

全身麻酔下で、小切開してデブリドして、腔の遠位も切開しておく。

腫れるだろうが、袋状でなくなれば治っていくだろう。

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夕方、1歳馬の疝痛。

ガスが抜けて楽になったらしい。

まだ乳酸値はわずかに高かったが、超音波検査で異常なし。

帰っていった。

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まだまだ寒いし、日も短いのだが、春の薫りがしてきた。

         

 



4 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2023-02-06 07:05:52
 診療内容が春の様相を呈してきたように思います。
 助産で引っ張りすぎちゃったのでしょか?母馬も、牧場の方も、呼ばれる獣医さんも大変だと思うけど、タイミングがうまいことかみ合って出産できるようだといいですね。

 コンゴウインコに飛びつかれて怪我した人がヒトの整形外科医で、長時間の手術という立ち仕事に復帰するのに時間がかかった、という記事をみました。患者さんのつらさを自分に引き寄せているようなものかも。
 hig先生が日ごろの体力作りを言ってましたね。先生方もご自愛くださいますよう。
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>はとぽっけさん (hig)
2023-02-06 09:13:00
まさに4月のような診療内容でした。

コンゴウインコに飛びつかれると怪我しますか?爪でやられて、感染したのかしら。オウム病?
体力は必要です。どんな仕事もでしょうが、特にわれわれの仕事は。
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Unknown (はとぽっけ)
2023-02-06 21:18:43
 台湾の医師で転倒して骨盤骨折などのため。
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>はとぽっけさん (hig)
2023-02-07 05:33:03
それは悲劇でした。長時間の手術に復帰、ということは御高齢の整形外科医でもなかったのでしょうけど。整形外科医なら日頃の運動の大切さもご存じだったでしょうし。不運、というしかない事故だったのでしょう。
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