◉カマツカ

2019年8月25日
◉カマツカ

 
 

静かな日曜日の朝になった。朝食の準備をして妻を叩き起こし、飲み食いしながら NHK『さわやか自然百景』を見た。美しい山峡(やまかい)の渓流沿いに「ホクリク」の四文字を名に戴く植物が咲いているので、これは北陸の日本海にそそぐ川の上流だろうと思う。冷たく澄み渡った渓流の水中へナレーションとともにカメラが入ると、体側に横筋のある小魚たちが澄明(ちょうめい)な水の中で煌めいている。魚名を聞いたら知らないので
「これは『魚貝の図鑑』に載っていなかったなぁ」
とひとり言が出る。

『魚貝の図鑑』とは昭和の時代に小学館が出していた学習図鑑シリーズのひとつで、とくに好きだった『魚貝の図鑑』はおそらく百回以上繰り返し読んだ。今でもどのページにどんな図解がされていたかを空で思い描くことができる。ひとつ年下の妻も学習図鑑シリーズをそうして読んだ子どもで、いまでも『鳥類の図鑑』と『動物の図鑑』と『植物の図鑑』は中身を空で言い合って共有することができる。妻は『魚貝の図鑑』、僕は『昆虫の図鑑』をあまり得意としなかったので、その二冊に関しては記憶で共有できるページが少ない。

番組の映像にカマツカが登場して懐かしく、
「あ、カマツカだ、カマツカ!」
と声が出る。『魚貝の図鑑』にもちゃんと載っていた。砂地の川底に潜り込んで鳥などの天敵から身を隠すので各地に「スナホリ」「スナモグリ」に類する異名がある。コイ目コイ科カマツカ亜科の魚類で、体の形が鎌の柄に似ていることでその名がついたのだろう。

小学生時代、釣具店店頭で「がまかつ」という文字をよく目にし、見かけるたびに図鑑の「かまつか」のことが思い浮かんだ。今の子どもならスマホで検索して1955年に兵庫県西脇市で創業した「蒲克鈎本舗」のちの「株式会社がまかつ」という釣り具メーカーだとわかるのだけれど、昭和の子どもは「かまつか」と「がまかつ」は似ていて不思議だなぁと思い込んだまま大人になったので、いまでも「かまつか」で「がまかつ」が思い浮かんでしまう。もうどうにもならない。

番組最後に合原明子アナのナレーションが入り、なんと日本海側ではなく岡山県北部の山あいにある小さな渓谷「奥津渓」であることがわかった。妻が
「この子お腹が大きい」
と発見して程なく見かけなくなった合原アナが、「ごうはら」ではなく「ごうばる」だったこともついさっき知った。こちらは記憶の中で訂正した。(9:44)

   ***

午後から文京区立千石図書館で開かれた「第 95 回キネマ千石『ストラディバリ 〜クレモナの伝統〜』ドキュメンタリー映画上映とブックトークの会に行ってきた。映画も面白かったけれど、若い女性図書館司書が映画に関連して五冊の本をすすめるブックトークが良かった。妻はアンケートに、ブックトークがすごく良かったと書いておいたという。

映写会場隅でヴァイオリン演奏が BGM として貸し出し用 LP レコードを使って流されており、その簡便なレコードプレイヤーがなかなか良くて気に入ってしまった。ちゃんとしたオーディオ装置をもう一度あつらえる気はないので、その対極にあるレトロでチープなプレイヤーが欲しいと思っていた。演奏中の現物として興味深く観察したが、amazon で ¥7,980 で買える商品としてはとても良くできていると思った。なんと SP 盤も聴けるという。(17:12)

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