鳥のいた木

2017年11月18日
僕の寄り道――鳥のいた木

マンション正面玄関前にあるなんの変哲もないイチョウの街路樹が、夕暮れ時になるとまるで小鳥を集めて押し込んだような啼き声の塊となり、道行く人が驚いて見上げる姿を目にしていた。

玄関前ということで夜間も屋内から漏れる明かりがあり、となりは賑やかな酒屋の店頭であり、交差点角に近いので車両の往来と人通りが絶えない。そういう場所はかえって外敵の危険が少ないのでムクドリの集団塒(ねぐら)になりやすい。

家族に鳥アレルギーがいるので鳥さんには申し訳ないけれど、どこか他所へ行ってもらうわけにはいかないでしょうかという住人からの陳情があった。

郷里清水に帰省すると駅前広場街路樹がムクドリの塒になっており、下に停めた自動車が糞まみれになっている惨状をよく見かけた。糞害はないだろうかと木の下に行ってみると意外なことに糞が少ない。

それでもやはり啼き声の塊になっているので、理事会で管理会社に苦笑いしながら苦情の内容を伝えておいた。そのまましばらく忘れていたのだけれど、定例理事会に出たら管理人が
「ムクドリじゃなくてスズメでした。スズメはどこかへ行ってしまってもういません」
と淡々と報告するので妙におかしい。

ムクドリではなくスズメもまた集団塒をつくることを知らなかったので、ちょっと知見が広がって嬉しい。個人的には賑やかでおもしろいので、またやってこないかなと思っている。


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