病室の絵

2017年11月18日
僕の寄り道――病室の絵

特養ホームに入所中の義母に熱が出てなかなか下がらず、総合病院に連れて行って診察を受けたら尿路感染だという。一週間の入院で熱も下がり退院ということになったが、腹部動脈瘤がかなり大きくなっており、いつ破裂してお迎えが来てもおかしくないという。

義母が入所ケアとなって足掛け 8 年目になる。入所当時にいたお年寄りも次第に姿を見なくなり、当時からの顔見知りは短歌を詠む女性の S さん、リコーダーが好きな男性の S さん、そしてやはり娘さんが足繁く面会に通って昼食介助をしている小さな女性の S さんという三人だけになった。

このところ小さな女性の S さんの姿を見ないと思ったら病院の廊下でばったり娘さんに会い、持病の心臓が思わしくなく同じ病院に療養入院中だという。親の歳が近ければ子どもの歳も近く、S さんの娘さんはわが妻と同い年ということで意気投合しメールのやり取りなどをしている。

老人ホームの数少ない生存者仲間にはまだまだ長生きして欲しい。病院の退院は、自分が残されるのも、他人を残していくのも辛いものだ。妻はひと足先に先に老人ホームに戻り、S さんが元気に戻られるのをお待ちしますと娘さんにメールすると言う。

この病院の四人部屋は廊下から見える突き当りに色面主体の抽象絵画が架けられており、まず目に飛び込む色の違いで病室を区別できるようになっている。義母の病室は青みがかったグレーであり、S さんの病室はブルーだと言うので、蒼い抽象画の架けられた病室を覗いてみたら S さんは苦しげな顔をして寝ておられた。



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