◉石(こく)

2018年9月11日
僕の寄り道――◉石(こく)

日本では昔から、大人ひとりは 1 食に米 1 合食べるので 1 日 3 合が必要とされていた。1 年で約 1,000 合(333×3)が年間の米消費量になり、それを 1 石という。

本を読んでいたら「糒(ほしい)三万石」と書かれていて、それが 3 万人が 1 年間食いつなげる食料だということは字義どおりわかるけれど、物理的にどれくらいの量になるだろうと目の前に思い浮かべてみる。

母親が営んでいた飲食店では、商売用の米を注文すると米屋が紙の米袋を担いで来て、四角い一斗缶にザザッと音を立てて移して納品した。ぴったり一斗の米が入った缶に蓋をして、保管場所に移動する役をするのがひと苦労だった。弱音をはくまいと思っても「よいしょ!」と声が出てしまい、米屋はよくこんな重いものをこともなげに扱えるものだと感心した。それが貴重な米一斗の体積と重さの体験的基準値になっている。

1「よいしょ!」が 1 斗として 10「よいしょ!」を 1 石と呼ぶ。ということは 1 斗缶 300,000 本で三万石になり、300,000「よいしょ!」分の糒を北陸の港へ集めて西国の権力は北日本へと侵攻したわけだ。八世紀末の記録である。

電気炊飯器で米を炊く時は 1 合の樹脂製計量カップで米をはかる。米を炊くのは自分の仕事になっているので、カップ 1 杯の米もまた体積と重さの体験的基準値になっている。カップ 10 杯が 1 升になり、母親は 1 升炊きのガス釜で米を炊いていた。その 1 升の米を研ぐ手伝いをよくさせられたので、1 升の米の量もまた自分の体験的基準値になっている。1 升炊きのガス釜で炊いた米は 10 人分なので 1「よいしょ!」は 100 人の 1 食分、逆に大人 100 人の腹を膨らませるためには毎食ごとに 1『よいしょ!」の米を研いで炊かなくてはいけないということになる。

新 米 に よ い し ょ よ い し ょ の 秋 祭 り

(2018年9月11日)


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