【波路遥けき徒然の】

2020年5月1日

【波路遥けき徒然の】

家から一歩も出ずに逼塞して暮らすのは船旅に似ている。

退屈なので船窓から外を見たら、うちとそとを隔てる透明ガラスに体長 1 センチに満たない小昆虫をみつけてちょっと嬉しい。

これくらいの大きさの虫にとって、透明なガラスも手足の先が引っかかるくらいゴツゴツしている。すべすべの表面に指を滑らせるスマホのガラスにも小昆虫はとまれるのだろうか。徒然な船旅の慰めにぼんやり虫を眺めていたら、むかし教科書で‪読んだ詩を思い出した。

  波路遥けき徒然の慰草と船人は、八重の潮路の海鳥の沖の太夫を生捨りぬ

名調子のせいか、いまだに忘れない。上田敏が 1905(明治38)年に出版した訳詩集『海潮音』からで、シャルル・ボードレール「信天翁(あほうどり L’Albatros)」の一節だ。懐かしい。

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