【長男の出家その後】

2020年7月11日

【長男の出家その後】

 
新型コロナウイルスによる外出自粛でなぜか読書がはかどる。はかどる理由には世界の閉塞感と緊張感が集中を高めたこと、その反面、妙な力が抜けて他人が薦める本をすんなり読むこころの余裕が生まれたこともあるだろう。
 
このところ熱心に読んでいる仏教学者三枝充悳が 1988 年に書いた随想で、前年度後期芥川賞受賞作、三浦清宏『長男の出家』を読まれて、褒めて、勧めていたので古書で買ってみた。
「…とくに禅寺とは限らず、僧職にある方々、そして寺になんらかの縁のある方々に、一読されるようおすすめしたい」
と書かれている。日本人はたいがい寺に縁がある。
 
Amazon で検索したら「新版」とついたものが 2011 年に芸文社から再版されていることに興味を引かれ、北海道にある古書店から取り寄せた。裏見返しに再版新刊を報じる新聞記事切り抜きが貼られており、著者が「室蘭出身」であることを強調した見出しが付いているので北海道の地方紙か地方版に載った記事だろう。地元の人がこの本を買って新聞切り抜きを貼り、それが整理されたのを地元古書店が引き取り、それがここにありがたく流れ着いたのだろう。
 
 
昨日届いたので一気に読んだら、出家した長男を取り巻く人々と家族のその後が増補として書き加えられることにより「新版」となったのだった。受賞直後に読んだままでは知り得ないその後を知ることができた。完結した受賞作品として読み終えても、事実としての後日談を新版で読んでも、読書体験としてはどちらでも良いとは思うけれど、紹介者である三枝さんは 2010 年に他界されているのでその後の世界を知らない。教えていただいたことに感謝してありがたく読み終えた。
 
 
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