緊急外来の人々

僕の寄り道――緊急外来の人々
(2016年7月17日)

 

65歳以上の高齢者だけで暮らす世帯の占める割合が、とうとう総世帯数の四分の一に達したと今朝のニュースでやっていた。たいへんな時代になる。わが家も夫婦二人で子どもがいないので、そういうたいへんな人たちの仲間入りする日が来る。

同じマンションで暮らすご夫婦もたいへんな人たちで、奥さんが講演で地方出張中、ショートステイ利用中のご主人が体調を崩して病院へ緊急搬送されるという。電話をもらって付き添いを頼まれたので、急いでタクシーで駆けつけ、入院手続きまで付き添った。(2016/07/16)

スマホで「救急外来」と打ってグーグル検索すると、GPS 位置情報をもとに近所の病院が表示されるので感心した。

診察のあいだ外(そと)待ちのソファに腰掛けていると、緊急外来なのでストレッチャーに乗せられた患者が次々に運び込まれてくる。隣に腰掛けた年配の男女が内臓の話を熱心にしており、聞いていたら面白いので手帳に会話をメモした。

「大腸より直腸だよ」
「へぇー」
「なにしろ高いからね」
「直腸はどうして高いの」
「そりゃあ直腸はこれくらいしかないもの」
と言いながら両手人差し指で長さを示し、
「直腸は短いから高くて、大腸は長いから安いんだよ」
と答える。
「高いのはわかったけど、食べておいしいの?」
「そりゃあ直腸の方がうまくて、別名テッポウっていうんだ」
「小腸はどうなの?」
「小腸はこれくらいにまとまってるけど、あれも伸ばすと長い」
「夏場はどうなの?」
「冷房が効いた小屋で飯食ってるわけじゃないから、暑いと食欲が落ちちゃって、そういう季節の腸は短いよ」
「産地でも違うんでしょ」
「そう、○○のは喜んで食べる犬も、○○のは食べないからね」
「へーっ、そうなの」
「そうよ。で、その煮込みどこで買ったの?」
「三河屋で売ってたやつ」
「ああ、そりゃあ大腸だな」

緊急外来待ち合わせソファで内臓談義をする男女は、名前を呼ばれて診察室に入っていった。

付き添いを終えた帰り道にて

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