【特装版】

【特装版】

親の世代とそのちょっとその上の世代が書いた本が好きだ。戦争でひどい目に遭わされながら、命からがら生き延びた世代である。そういう体験をした人たちが書いた言葉には実味がある。難しいことを書いていてもちゃんと頭が体にくっついている。

そういう人が 1955 年に出した新書本を買ったらたいへん古びていて、本文は黄色く焼けている。そっと手に持って読んでいても背が割れてばらけそうになるし、ページをめくると乾いた音を立てて簡単に破れる。土に還ろうとしているのだ。良い本なのに電子書籍化はおろか再版される可能性もなさそうなのを残念に思う。

何度も読み返したい良書なのでスマホの OCR アプリでテキスト化しながら読み、個人的なデータとしてマイ・クラウドに取り込んでいる。そうすれば電子書籍のようにいつでもどこでも読み返せて本文検索もできる。耄碌に備えた索引づくりである。

同じ著者による 1953 年発行の岩波新書が ¥265 だったのでネット注文した。 値段も安いし、1955 年の新書本よりさらに古びていることを覚悟していたのだけれど、届いた本が綺麗な「上製本の岩波新書!」だったのでびっくりした。

奥付を見ると 1984 年に復刻された岩波新書で「特装版」と書かれている。こういう岩波新書があるのを初めて知った。妻に見せたら知らなかったという。「特装版」という名前であることもあって、ひどく得した気がする。

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