電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
◉燕の巣の黒い土
2019年5月24日(金)
◉燕の巣の黒い土
なぜかこのところ六義園をねぐらにするカラスたちがマンションのベランダにやってくる。なにか事情があって居場所を変えたのだろう。今朝も大きな声に驚いて目が覚めた。六義園のカラスは「ア〜サ〜〜」と谷岡ヤスジのマンガ風に鳴く。
整理して並べ直した本棚から岸田秀の古い対談集を取り出してはぱらぱら読み返している。対談相手の吉本隆明が、丸太ん棒なんかで小さな蟻をぶん殴っているようだと笑っていたが、そういう話し方聴き方をする対談者としての岸田秀が好きだ。昔読んで面白かった対談だけを繰り返し読んでいる。丸山圭三郎、三枝充悳(さいぐさみつよし)とのも良かった。「ああそうか」とあらためてわかる箇所が何度読んでも出てくる。読むほどに理解が進むというより、書かれていることのうち今の自分の関心事について言い当てていると思える部分が、その都度「ああそうか」とヒットするのだろう。そういうことに同じ本を繰り返し読み続けることの恩恵があるかもしれない。孔子先生が「子曰。學而時習之。不亦説乎。」と言っているけれど、折りに触れて復習するのがよろこばしいというより、復習するうちに学んだことが時宜にかなって「ああそうか」になるのではないか。
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朝一番でマンション内住人の粗大ゴミ搬出を手伝った。大きなキャスター付きサイドボードを捨てるのだという。いちおう台車を用意して手伝いに行ったら女性の手に負えないほど重い。押して転がせればいいのだけれど、エラストマー製の車輪が劣化してボロボロと崩れてしまう。老人ホームの介護用ベッドも脚がそういう状態になっていた。素材に問題があるのだろう。なんとかエレベーターに載せて搬出を終え、明日の留守中、スイスからやってくる妹さんに渡してくれと部屋の鍵を預かった。そういう付き合いのできる友人がマンション内に何人かいる。みな年をとったり、病気になったり、ひとり暮らしになったりしている。
昨日の日誌をアップし、自分のパソコンデスクトップのスクリーンキャプチャを見たら、マウントされているドライブの名前がひどい。こりゃひどいと思い、気にしだすと気になってたまらないので名前をつけ直した。4 台のドライブに 4 台のバックアップ用ディスクをつなぎ、起動ディスクのバックアップには TimeMachine も設定している。そういう安心が一目瞭然になったので、これでよしと「自己満足」した。
清水から「いま NHK BS でファーブルをやっています」という電話が入り、仕事場にテレビがないので自宅に帰って観てきた。『プレミアムカフェ選 ファーブル昆虫記~南仏・愛(いと)しき小宇宙~』で、明日も午前 9:00 ~午前 10:34 に放送があるようなので録画しておくことにした。ナレーションの声は誰だったのだろうと調べたら蟹江敬三だった。懐かしい。
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西ヶ原商店街で困難な会話をしている人たちがいた。路上で道を聞かれた女性が、
「えっ!ここから巣鴨まで歩くんですか?遠いですよ。駒込の方が近いけど、駒込も遠いですよ!わたし自信ないから誰かほかの人に聞いてみてください」
と手を左右に振っていた。質問していた中年夫婦は、どうみても駒込駅から商店街伝いにここまで来てしまったとしか思えない。女性の受け答えがちゃんと返事になっていると思ったので黙って通り過ぎた。
東京の土は埼玉の土より黒くて粘り気があると大雑把に思う。東京の土を見慣れていると埼玉や静岡の土は赤いと思うことが多い。西ヶ原商店街を歩いていたらむき出しになった土壌が黒いなと思うし、そういう水溜りから運んだ土でこさえたツバメの巣もやはり黒いなと思う。こういうのが腐植(ふしょく)を含んだ黒ボク土(くろぼくど)というものだろう。そういう粘る土を使ってツバメの巣がすごい場所に作られている。これでは緑色した園芸用の支柱も取り除くわけにはいかない。
午後三時、有料老人ホームで暮らす、妻の年長の友人がババさんカートを引っ張ってやってきて、たくさんの手土産をくれた。
(2019/05/24 記)
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