ユリノキの五月

2014年5月16日(金)
ユリノキの五月

00
人生節目の年の目標に、本を二冊出すと決めた。そのうちの一冊に関する資料探しのため、今年は月二回程度のペースで静岡市駿河区谷田にある静岡県立中央図書館通いをしている。

01
自分が高校生だった 1970 年から三年間の新聞記事を少しずつマイクロフィルムリーダーで閲覧しているのだけれど、その高校入学をした 1970 年 4 月の記事に、県立中央図書館 18 日開館式、20 日より一般公開とある。

02
静岡鉄道県立美術館前駅で下車し、南東へ向かう道を歩いてゆるやかな有度山麓を登っていくとわんにゃん通りとの交差点があり、左折してすぐ左側に美術館前動物病院(★1)がある。2003 年夏に末期ガンとわかった母と二人、病気治療のため愛犬の長期預かりをお願いしに何度も通った懐かしい道である。丸二年間に及ぶ東海道往復看取り旅の記録がもう一冊の本になる予定で、そのために今年一年この道を通うというのも不思議な縁だ。

03
坂を上り詰めると静岡県立美術館(★2)へと向かう野外彫刻プロムナードがある。彫刻作品が野外展示された小道は緑豊かな散歩道になっており、それが終わり、斜め左へ折れるようにして石段を登ると県立中央図書館になる。

04
石段左側にある葉を落とした樹木のかたちがとても気になり、何の木だろうと調べたらユリノキだった。ユリノキと言えば近いところでは文京グリーンコート脇や、ときおり仕事で出かける信濃町から青山一丁目へ向かう街路沿いで見ることができるけれど、葉を落とした冬の樹形をじっくり見たのは初めてだった。

05
五月はユリノキの開花時期である。編集委員をしている郷土誌の編集会議出席を兼ねて訪れた 5 月 14 日には、葉が茂り花が咲いて記憶の中のユリノキになっていた。たいへん成長の早い木なので、街路樹として植えられても大きくなりすぎて伐採されることがあるそうで、そういう街路樹の切り株を調べた方によれば年に 5 センチ近く直径が太くなった年もあったという。

06
このユリノキは大きくしないための激しい剪定をうけていないので、あらためて冬の樹形の美しさにこころ打たれるのかもしれない。いつの日か県立中央図書館前のユリノキが、静岡らしいおおらかさで巨木に育ってくれたら嬉しい。そして図書館前のユリノキがいのちの情報伝達のため翼果(★3)を飛ばす秋までには、本完成の見通しが立っているといいなと思う。

★1 美術館前動物病院
獣医に相談すると、「もちろんお預かりします、長期になるので経済的負担にならないよう料金も見直しますから、元気になって必ず戻ってきてくださいね」などと言っていただいたという。(2003年9月5日の日記より)

★2 静岡県立美術館
1986(昭和61)年開館の県立美術館。

★3 翼果(よくか)
翼が生えたような形状をした果実の総称。風にのって親木から離れたところへいのちの種が運ばれる。

コメント ( 4 ) | Trackback ( )
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コメント
 
 
 
Unknown (浮雲)
2014-05-16 10:03:42
本の刊行、楽しみに待ちます。
ワクワクします。
買います。

家の近所に、もう15年くらい経ちましたか、ゆりのき台という名前をつけた大きな団地ができましたが、こういう花をつけるんですね。来年じっくり見てみようと思います。
 
 
 
Unknown ()
2014-05-16 11:40:26
ゆりのき台界隈、Googleマップで散策してみました。
ありがとうございます、励みになります。
できあがったら表2の日記を読んでいてくださったという方にぜひ献本したいです。
 
 
 
Unknown (susa)
2014-05-16 12:13:24
わたくしも楽しみにしております。
出来上がりましたら告知お願いします。
susaこと元清水人。
 
 
 
Unknown ()
2014-05-16 13:10:43
ありがとうございます。
また励みが増しました。
どうぞよろしくお願いいたします。
 
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