【そうだ、草薙行こう…5】

【そうだ、草薙行こう…5】
 
 

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2007年 10 月 21 日の日記再掲

 

東京の小学校を卒業して静岡県清水市立第二中学校に入学したので、生まれ故郷に戻ったとはいえクラスに顔見知りのいない転校生同様の春だった。

その中学には主に浜田小学校と岡小学校(岡小学校は二中に隣接)を卒業した生徒が入学することになっており、当時の二中が田んぼに囲まれていたことからもわかるように、浜田の子は街の子、岡の子は田舎の子という印象があった。

当時は旭町歓楽街にあった飲み屋の二階に寝泊まりしていたので、浜田の子たちと一緒に下校することが多く、寄り道の場所も模型屋や釣り道具屋や銀座通りまで足を伸ばすこともあったけれど、ときおり岡の子たちが
「寄り道して山で遊んでいかないか」
と誘ってくれ、彼らは皆日本平山麓の船越方向へ帰る子どもたちだった。

■有度山トンネル手前にある農免農道沿いの茶畑。
撮影日: 07.10.15 0:21:55 PM
Canon IXY DIGITAL L2

家と逆方向なのでとんでもない寄り道になるのだけれど、
「山芋掘りをしようぜ」
などと言って誘われて船越あたりから山に入ると何とも楽しくて、最も感動したのはミカン山ではなく山の斜面に拓かれた一面の茶畑を見たときだった。

■茶畑から望む清水市街地越しの庵原方面。住所はおそらく馬走(まばせ)だと思う。
撮影日: 07.10.15 0:28:04 PM
Canon IXY DIGITAL L2

茶という植物の特性なのかはわからないけれど、茶畑の中にいると空気にひんやりとした清涼感を感じ、お百姓の手入れが行き届いているおかげか畑全体が清潔に保たれており、友だちと茶の畝の間に寝転がって話しをしたり、硬くて綺麗な茶の実を拾ったりして過ごすのが心地よく、
「今日も茶の実友だちをしてくか」
などとしょうもないしゃれを言って放課後誘い合って出掛けたものだった。

■茶畑を見下ろす樹幹に張り渡された蜘蛛の巣。
撮影日: 07.10.15 0:28:33 PM
Canon IXY DIGITAL L2

みどりもえたつ若草の 有度の山風 背に受けて
(長田恒雄作詞 平井康三郎作曲 清水市立第二中学校歌『桜ヶ丘に』より)

静岡鉄道御門台駅あたりから日本平方向になだらかに連なる丘陵が有度山であり、その東側に当たる地域が有東坂にあたるわけで、
「(そうかこれが校歌にある有度の山風か…)」
などとぼんやり考えながら過ごした、くりくり坊主頭の中学生時代を、清水の茶畑を見る度に懐かしく思い出す。

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