電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
◉ベーコンエッグから始まる話
2018年3月28日
僕の寄り道――◉ベーコンエッグから始まる話
小学生時代、駒込駅前にあったレストランというか、食堂というか、それより、小さな洋食屋と言ったほうがふさわしい店で、生まれて初めてベーコンエッグというものを食べた。
当時のベーコンが滋味あふれるものだったのか、子どもの味覚・嗅覚が過剰に敏感だったのか、理由はわからないけれど燻煙の香りを強烈に感じ、それが初めての体験だったので、
「お母さん、この目玉焼き、輪ゴムが焦げた臭いがするから食べられない」
と大きな声で言い、母は苦笑いしながら
「すみません、この子にはクジラのベーコンしか食べさせたことがないものですから」
と周りの人に謝るように言っていた。
昔から駒込に住んでいた年上の人にその話をすると、確かに洋食屋があったと言う。
先日、同じマンション内に住む年下の女性と話していたら、その店の名は「ぎんれい(銀嶺だろうか)」といい、記憶にある場所と違って、駅前ロータリーを 90 度時計回りに回転した本郷通り沿いにあったという。
古い記憶、とくに子ども時代のそれには、そういう方角をとり違えている場合が多い。さっそく見当違いの記憶を訂正した。
そんな会話が弾んで夜遅くまで話し込んでいたら、帰りの遅い母親を心配して自閉症の娘さんが迎えに来た。彼女の邪気を感じさせない澄んだ眼差しを見ていたら、気になっていたドナ・ウィリアムズをじっくり読もうという気になったのだった。(2018/03/28)
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