電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
【ニルスのように】
【ニルスのように】
子どもの頃読んだ本に『ニルスのふしぎな旅』という童話があった。ニルスという少年が妖精によって小さくさせられ、ガチョウの背に乗ってスウェーデン中を旅するお話だった。
「さぁ、あの鳥さんに乗ったところを想像してみましょうね~」
と幼児向け番組のお姉さんに言われたら、オヤジになった今でも
「は~~~~~い」
と笑顔で鳥さんに乗った自分を想像できる。幼い頃そういう童話の世界に浸ったことがあるからだ。そういう想像力を学ぶ機会を幼時に持つことができたことをありがたく思う。そのおかげで老い先短いオジサンになっても人生が楽しいのだ。永遠の童心は精神を救済する。
「さぁ、あの鳥さんに乗ったところを想像してみましょうね~」
とお姉さんに言われて、確かにガチョウは乗りやすそうに思うけれど、その辺にいるカラスやハトであっても軽飛行機だと思えばそう乗り心地が悪そうな気はしない。
根津の出版社で打ち合わせをした帰り、不忍池にまわってみたら東京都の鳥であるユリカモメが水辺で群れていた。
「乗せてください」
と言ったら乗せてくれそうにざっくばらんな鳥なので、ニルスになったつもりで乗せて貰ったところを想像してみた。
この鳥は大きな旅客機や小さなセスナなどと違って、非常に小回りのきく戦闘機のように敏捷な飛び方をし、性格的に落ち着きがなく食い意地が張っていることもあって、激しく旋回やホバリングや急降下を繰り返すので乗りこなすのが大変そうだ。
「(こりゃ大変だ…)」
とオヤジのニルスは思うけれど、ユリカモメを上手に乗りこなせるようになり、暖かい春になったら都会の上空を旋回して日本に別れを告げ、海を渡ってユーラシア大陸に向かう旅を想像してみるとうっとりとする。
公園でぼんやり鳥を見ているオヤジは、苦虫をかみつぶしたような顔をしながら、実は頭の中で『ニルスのふしぎな旅』のページをめくっているのかもしれない。
(閉鎖した電脳六義園通信所 2008 年 1 月 18 日、14 年前の今日の日記に加筆のうえ再掲載。)
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