【縄巻鮓(なわまきずし)】

【縄巻鮓(なわまきずし)】

10 歳年上の友人が郷里熊野の隠れた郷土料「縄巻鮓」(なわまきずし)を紹介してくれた。インターネット通販で取り寄せ可能とのことなにで早速教えてもらった URL にアクセスしてみた。

ごはんではなく自然薯をふかしてつぶした上に、鰆や鯖などをのせ、竹の皮で包んだものをいぐさの縄でキリキリと巻いて発酵させるという世にも珍しいお鮓です。なれずしの一種ですが、有名な鮒ずしのようなクセはありません。
元は和歌山の田辺附近のもので、昔は紀州の殿様しか食べることができず、“一子相伝”で伝えられていたとか。
現在は一時途絶えていたのを、私の祖父(田辺出身)が復活させ、今は祖母と母が細々と作っております。
あの博物学者・南方熊楠も絶賛したという、“まぼろしの鮓”。
量産はできませんが、ぜひまぐまぐの読者さまにご賞味いただきたいと存じます。
(サイト上の【商品説明】より)

カーボンコピーメールで食いしん坊仲間に届いた便りなので、本物を食する前に想像力を逞しくし、メールでの鮨談義を楽しむべきだったのだけれど、看護・介護に明け暮れる毎日の忙しさの中で、無粋を覚悟で即決注文してしまった。
10 月 2 日に注文して、一週間ほどで届く。
10 月 8 日に製造し、製造後 3 ~ 10 日が食べ頃だという。
8 日間ほど寝かして、親子 3 人の食卓にのせてみた。

感心するのは、いぐさの縄と笹の葉の香りが良いこと。
まず、その香りで食欲がそそられる。
縄を解き、くるまれている笹の葉を取り去って鑑賞し、良く切れる包丁で、年寄りも食べられる厚さに切り分ける。
ここで「しまった!」と思ったのは、笹の葉ごと切るようにという指示が、どこかにあったのを忘れていたこと。そうしないと、せっかく一体化していた鯖と自然薯が型くずれしてしまうのだ。

大皿に盛って、早速いただく。
絶句…。
美味しい!
やはり、ぎりぎりまで寝かせるのが正解のような気がする。
鯖のうま味と塩分が自然薯に染み込み、山羊乳のチーズのような舌触り。
とはいえ、発酵臭などもなく淡泊な味わいで、鯖のバッテラが食べられれば、何の抵抗もないと思う。

かつて、和歌山県新宮市に友人を訪ねた際、どの家庭でも朝は茶がゆが出るのに驚いた。
「紀州の茶がゆ」と言って、米作に適した土地が少ないこの地方では、ご飯を非常に尊んだと聞く。
ご飯の代用に自然薯を思いついたのかなと単純に思っていたけれど、魚と芋の相性が絶妙に良いことを知ったのも、今回の取り寄せによる収穫のひとつだった。
 
食いしん坊で好奇心旺盛な友人たちに感謝。

(閉鎖した電脳六義園通信所 2002 年 10 月 17 日、19 年前の今日の日記より。)

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