◉中村泰著『上総一宮加納藩の歴史』橘樟文庫

2018年5月26日
僕の寄り道――◉中村泰著『上総一宮加納藩の歴史』橘樟文庫


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 恩師であり仲人でもある中学社会科の先生にはずいぶんご無沙汰している。お訪ねするたびに危なっかしい運転で駅まで送ってやるというのを断るのに四苦八苦し、免許証を返納されたと聞いて安心したら、最近は
「編集会議前にちょっと寄るんじゃなくて、編集会議後に寄って泊まっていけ」
などとおっしゃり、言い出したら人の言うことをお聞きにならないので、ついつい足が遠のいている。

そういう年老いた恩師を訪ねて郷土史の話をし、
「えーーっと承久の乱だから……」
と恩師が言葉に詰まられ、
「えーーい、くそっ、うん、そうだ、鎌倉時代の 1221 年!、そのあたりだ」
などと正解を絞り出されるのを見ていると、教師というのは大したものだなあ、こういう膨大な知識をもとに生徒を指導しておられたのだなぁと感心してしまう。

感心しながらいたたまれないのが、なかなか記憶の引き出せない恩師を補うように、先回りして合いの手を入れると、
「おーー、お前はよく勉強してる、よくそんなことを知っているなぁ!」
と驚かれることだ。ワープロが精一杯、パソコンはさわれなくて、インターネットもメールも使えない恩師に比べ、こちらは知りたいことがあればインターネットで答えを見つけられてしまうのだ。調べやすかっただけで勉強の質が違う。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

そんなわけで、最近はインターネットで調べられないことを見つけて国会図書館に行くのが楽しいし、昔の地味な本こそ読んで面白いし、インターネットに載っていないような事柄をコツコツ調べられたお年寄りの書かれたものが楽しい。

郷里静岡の小島藩は二万石以下の小藩で築城が許されず陣屋を構えていた。移封され上総国金ヶ崎藩、のちに櫻井藩に改称、櫻井県となったのち合併して木更津県となった。

中村泰著『上総一宮加納藩の歴史』橘樟文庫、発行福祉新聞社という本作りの手伝いをして完成本が送られて来た。同様に、小藩ゆえ陣屋しか構えられなかった一宮藩は廃藩となって一宮県となり、木更津県を経て立派に千葉県となった。最後の藩主加納久宜の子、加納久朗は千葉県知事まで務めている。木更津県を経ることにより小島藩とともに千葉県の母体となったわけだ。

雑誌『季刊清水』編集長に献本したが、そうだ、ご機嫌伺いを兼ねて恩師にも送ろう。(2018/05/26)

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