となりのオヤジ

2014年3月22日
となりのオヤジ

00
対面して着座する四人掛けボックス席の東海道線では、ドア脇の二人掛け席に座ることにしており、この席が気疲れしないので好きだ。真鶴から釣り帰りのオヤジが乗って来て座りたそうにキョロキョロしていたが、空席にありつけなかったので、ふてくされた様子で通路にドンとクーラーボックスを置き、それに腰掛け缶ビールをプシュッとあけて飲み始めた。

01
小田原で隣席が空いたのでオヤジが横に座ることになったのだが、つまみの珍味がひどく臭い。臭い珍味を食べてはビールを飲むということを交互に繰り返しながら時折「ぐぇ!」とゲップをし、隣り合わせなので耳元でつぶやくように聞こえてしまう。左耳が難聴でよかった。

02
せっかちそうで落ち着きのないオヤジが、ビールを飲み終えたら身体中のポケットを探ってもぞもぞしている。もぞもぞするたびに肘や尻がぶつかるので、こちらまで落ち着きがない感じで不快である。しばらくもぞもぞして見つけたものをつかみ出したら飴玉で、このオヤジは臭い珍味でビールを飲んだ後で甘い飴を舐めるのだ。

03
隣席で飴を舐められるのは構わまいけれど、舐めながら舌打ちしたり小声でつぶやくのが気味が悪い。そのうちガリガリガリっとすごい音がするので横目で見たら、不機嫌な顔をして飴玉を噛み砕いている。粉砕して飲み込むと、また次のを口に放り込み、ちょっと舐めるとまたガリガリガリっと噛み砕くということを繰り返している。そのガリガリを聞きながら、今こうして iPhone でとなりのオヤジの悪口を書いているわけだ。

04
ガリガリオヤジが突然プツッ!と切れたように立ち上がり、戸塚駅でせかせかと降りて行ったので、ガリオームのひどいラジオを消したように静かになった。あれはきっと家族が大変な思いをさせられるタイプのオヤジだなと思う。たしかレイモンド・チャンドラーがフィリップ・マーロウに、ビールをちびちび飲む男は信じないと言わせていたが、自分の場合は考え事しながら飴玉をガリガリ噛み砕く男が嫌いで、それは妻や娘を泣かせていた晩年の義父がそうだったからだ。

 

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