電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
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静岡県清水市出身、東京都文京区在住、本の装丁専門のデザイナー石原雅彦による日々の記録。東京教育大学教育学部芸術学科最後の卒業生。
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▼避雷針
母親が静岡県清水旭町で営んでいた飲み屋で閉店まで飲み、
店を閉めた母と一緒に自宅まで歩いて帰る際、
巴川に架かる橋の上で雷鳴が轟いているとひどく怖かった。
「だーいじょうぶ、宝くじに当たるより雷に当たる方が難しいよ」
と母は笑い、それでも怖くて橋の上を走って駆け抜けると
「まーったく、あんたは自意識過剰だよ」
と笑われたものだった。
確かに自意識過剰なのか、今でも雷鳴が轟くと
自分の上に落雷しそうな気がして怖い。
雷なんてちっとも怖くないし落ちても俺は平気だと
酔って雷鳴轟く夜空の下、腕時計をはめた手を振り回しながら歩いている友人がいたが
彼は自意識が過小だったわけではなく、
「だーいじょうぶ、男はみんな避雷針を持ってるんだから」
という酔っぱらいのたわけた根拠に基づいているのだった。
コメント ( 4 ) | Trackback ( )
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ははは、実は、雷が自分に落ちるのではないかと僕も六様と、その危険を感じる心配度は同じかもしれない。
でもさ、お母様の世代は、「当たっちまったら、そりゃそれで、しょうがないじゃないか!」って潔さがあるよね。「ぱって光った瞬間、ドカンって音を聞く前に、もう私は天国にいるってことだよね、苦しまずにあの世にいるってわけだ、それも人生だよね」って言って笑っているお母さんの顔を思い浮かべられるんじゃないの。
「長生きが必ずしも幸せだとは限らないじゃん」て話が聞こえて来そう。
話し変わるけど、避雷針と空の写真、あれいいね!
そういうことも言ってましたが、
不老不死を願う気持ちとポックリあの世行きを願う気持ちは表裏一体で
人はエントロピー最大に至るまで何度もその表裏を行ったり来たり
言を翻してバタバタするような気がします。我が母を見た限り。
今、5時20分発静岡行を待つ東京駅7番線ホームです。
避雷針の写真、気に入っていただけて嬉しいです。
生者の揺れる気持ちについての正確な描写ですね。
昭和の時代にある名僧が言ってたことを思い出しました。
「どんなに修行しても、悟りとは一瞬姿を現すもので、次の瞬間、それはすぐに消えてしまう。生きている間、悟りは常に自分と一緒にはいてくれない」
みたいなことを仰ってました。
桜橋町の珈琲屋に行く際にもさくら幼稚園脇の
歩道橋を渡る勇気がありませんでした。
自分なりに多少の悟りは開いたつもりなのですが
何も変わってない自分がいました。