電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
【岸壁のテジ】
【岸壁のテジ】
(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2006 年 10 月 3 日の日記再掲)
地元塗料メーカーから皆勤賞を貰えるほど勤勉に勤め上げた伯父の数少ない趣味は、早朝の清水港岸壁で釣りをすることだった。
釣り道具一式が詰まった木箱を自転車の荷台にくくりつけ、未明に家を出て岸壁に行き、釣りを終え自宅に戻って朝食を食べてから出勤して行く、ということを会社勤めと甲乙つけがたい勤勉さで日課にしていた。ただそれだけのことでも尊敬に値する大好きな伯父だった。岸壁の釣りでは小アジがよく釣れていた。
■早朝の釣りから帰る人。良い趣味だ。
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■なんとなく亡き伯父を思い出し、自転車片手運転で写真を撮りながら追跡。
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岸壁の釣りをする伯父は釣り竿を用いず、木製の四角い枠に仕掛のついた釣り糸を巻き付けたものを用い、するすると海底近くまで下ろしては手でしゃくり上げ、釣り糸を通して指先に伝わる引きに合わせることにより、上手に小魚を釣り上げていた。
伯父はこの釣り方を「てじ」と呼んでいたので「てじ」と覚えており、同じく清水生まれで海上保安庁勤務の友人にも「てじ」で通じたのでありきたりな釣り用語なのだと思っていた。
はて「てじ」というのはそもそもどういう語源でどういう字を当てるのだろうと疑問に思い、「岸壁 釣り てじ」と入力して検索したらトップでヒットしたのは自分のサイトだった。ほとんど情報がないのだ。
■土曜日だから仕事は休みなのかもしれない。
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■清水銀座から大正橋方面に左折していくということは伯父と同じ入江の人なのだろうか。
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「テジ 釣り」と入力して再検索したら東京都世田谷区にある『サンゴ堂』という釣具店のサイトがかろうじてヒットした。『チビムロ用 ムロテジ糸 丸枠付き サンゴ堂特注』という商品を扱っておられ、
チビムロ釣りのときにつかう手釣り用 テジ道糸です。 チビムロはどうしてもバレやすいので水面近くですと、手釣りのほうが確実に取り込めます。
と書かれている。竿を用いない「手釣り」に用いる糸らしい。
記憶の中の岸壁の釣りで、伯父の釣り方だけが風変わりだったのではなく、当時まわりにいた岸壁の人達はみな「てじ」で釣っていたように思う。最近はあまり見かけないのでインターネット上にもほとんど情報がないのだろう。
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