【夜明けの読書メモ─「フリンジ」】

【夜明けの読書メモ─「フリンジ」】

フリンジ(fringe)という言葉があって、高校時代に読んだ写真雑誌でその言葉を知った。レンズの倍率色収差によって輝度の境界に色が現れて見える現象で、サービス版のカラー写真でも青空を背景にした針葉樹の梢などに観察できた。偽色ともいう。

写真好きの男性に限らず女性もまたフリンジという言葉をよく使い、洋裁でショール、マフラー、カーテン、テーブル掛けなどの縁に飾りつけることをいう。


DATA : Nikon COOLPIX P7800

写真好きや裁縫好きな一般男女だけでなく、明治生まれの哲学者も fringe という言葉を用い、西田幾多郎『善の研究』に「意識の縁暈 fringe なるもの」と書かれてあった。

縁暈(えんうん)とはうまい日本語をあてるもので、暈は「灯(とう)暈(うん)を生ず」の暈で、明るい光が闇に対してつくる境界で明暗のぼかされた領域をいう。

レンズは像を結ぶ位置が色によって異なるため倍率色収差が生じ、それは画像の周縁部で顕著になる。「意識の縁暈 fringe なるもの」は意識することによって生じる感情的な気分(偽色)にすぎない。論理的であるつもりが暴力的であることと容易につながってしまうのは、それが「感情的な」意識から生じた縁暈(フリンジ)だからだ。

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