海べりの道


海に沿った道を歩く。
かつてこの辺りのどこかに、曽祖父の鰊御殿があったはずだ。

不躾かとは思ったが、道沿いの家を一軒一軒訪ねてみた。
いきなり来た見知らぬ訪問者に、さぞや驚かれるだろうと覚悟していたのだが、どの家の方も親切に応対してくれた。
こちらがこの地の住人の末裔だと知ると、よけいに親切に色々なことを教えてくれる。

僕の曽祖父の家は、早くに没落してしまったため、今となっては知る人は皆無といってよかった。
しかしその後もしばらく続いた親戚の別の網元のことは覚えている人も多く、場所を特定することができた。
その隣にウチの漁師小屋があったという話は聞いている。

かつて繁栄を極めた時代の痕跡は消えつつあった。
何年か前までは、ボロボロになった建物の一部が残っていたというが、それも今は完全になくなってしまった。

その時代のことを伝え聞いていた世代の人たちも、歳をとりこの地で生活するのは厳しくなり、都市部に住む子供たちに引き取られて行った。
この町の歴史を調べていた人でさえ、老齢のため同じように他の場所に移っていったという。
みながこの地を離れていく。
それが実情のようだ。

D2X + AF-S DX Zoom Nikkor ED 17~55mm F2.8G(IF)
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